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クラプトン、武道館で。

 日本武道館にて、Eric Claptonの公演初日を観た。
 当日は雨降りだった。もの悲しい気持ちを引きずったままライブ会場に赴くのは、多分はじめて。靴先を濡らす雨。

ホームの、暴力的なまでの鮮やかさよ

 緑が美しかった。そうだよな、植物にとっては恵みそのものだろう。

歩きながらのショットでブレている
待機列、ふと見上げたジャスミンが香しかった

 席は南スタンド、正面エリアで全体を見渡せるなかなかの好位置。隣の、留学生だろうかアジア系の若い男性二人組がとても楽しそうで、わたしには眩しかった。

 開演。今年デビュー60周年、流石のギターレジェンド。震えた。
 「演奏している」というより魂と一体化しているような、それは口から言葉が出るようなものなのかもしれない。
 ボーカルもパワフルで滋味深くて、歌い崩すさまも全てが円熟。スローナンバーはアイスワインのようにまろやかでもあり。エレクトリック→アコースティック→エレクトリックの構成もいい。
 歓声。客席で揺れるまばらなライトは、まるで季節はずれの蛍。すべての感情がゆっくり溶けていく。ネイザン・イーストのベースをはじめ、バンドの演奏も素晴らしかった。
 「Tears In Heaven」は、ちょっとあまりにしみるな。「Layla」はエレクトリック。しんみりとアコースティックではなくて、良かった。詳しくは触れないが、終盤ポール・キャラックがまたすこぶるいい。
 たしかな熱を受け取って、会場をあとにした。

 きっとぼうっとしていたのだろう、新宿のどこかに長年使ったSuicaを落としてしまったようだ。
 問い合わせたが、もう戻らないだろう。戻るなら運命、戻らないならばそれも運命だ。この夜の代償というわけではない。ただ、記憶にはこれも強く残るはずだ。
 
 
【musicians】
Eric Clapton(g, vo)
Nathan East(b, vo)
Sonny Emory(dr)
Doyle Bramhall Ⅱ(g, vo)
Chris Stainton(key)
Paul Carrack(org, vo)
Katie Kissoon(vo)
Sharon White(vo)
 

【set list】
[Electric]
1.  Blue Rainbow
2.  Pretending
3.  Key to the Highway
4.  I’m Your Hoochie Coochie Man
5.  I Shot the Sheriff
[Acoustic]
6.  Kindhearted Woman Blues
7.  Nobody Knows You When You’re Down and Out
8.  Call Me the Breeze
9.  Sam Hall
10.Tears in Heaven
11.Kerry
[Electric]
12.Badge
13.Wonderful Tonight
14.Cross Road Blues
15.Little Queen of Spades
16.Layla
[Encore]
17.High Time We Went
 
2023年4月15日

なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」