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クアラルンプール駆け足1週間の旅 2

チョウキットB級グルメめぐり (2015年7月8日)

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市場の向こう側にモスクのミナレットが見えて、アザーンの声が聞こえてきました。アザーンというのは、1日5回のイスラム教の礼拝時間を告げる朗誦です。何を言っているのかはもちろんわかりませんが、とてもよく通る美しい声で、街の喧騒をぬって遠くまで響き渡ります。いにしえ、拡声器などなかった時代には、このアザーンの名手を、お抱えの領主たちが奪い合ったとも聞いたことがあります。

若い頃からイスラム圏へは何度か旅したことがありますが、朝な夕な、どこからともなく聞こえてくる、このアザーンの響きは、私がいま異国にあることをしみじみと感じさせてくれるものでした。

ところが、どうやら現代中国ではこのアザーンが禁止されているのではないかと思います。ウルムチに行った時も、蘭州に行った時も、一度も耳にした覚えがありません。

マレーシアではイスラム教が国教に定められていて、街で行き交う人々の80%くらいが、モスリムといった感じでした。女性がベールを被っているのですぐにわかるのです。いまはちょうどラマダン(イスラム教徒の宗教的義務で、1か月の間、日の出から日没まで飲食をしない)の時期だったので、日中はレストランなどもガラガラで、最初は不思議に思いました。ほとんどインド系の人しか見なかったからです。

上の写真の黒い車はニッサン。どうやらここではトヨタより人気があるようでした。

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パンケーキ屋さん。西欧系の食べ物もけっこう多いのです。この店はすべて英語表記。若い人はほとんど英語OKでした。

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これも海の魚なんでしょうね。どこの海から来たものか?何だか気になります。おそらくはラマダンの時期だけではないと思うのですが、屋台街は、夕方から賑わってきます。日中は暑いので、まだ開けてない店も多いのです。

やきそばや串焼きなどは、見ただけでもすぐにわかるのですが、他のものはいったい原料が何で、どんな味付けかさっぱりわからず、とにかく少しずつ買って食べてみるしかありません。しかし私は胃袋が大きい方ではないので、これはなかなかに大変なミッションでした。

基本は牛肉。イスラム教国なので、屋台で豚は見ませんでした。もちろん中華系、インド系の人も多いので、レストランでは食べられます。香辛料は辛くて甘くてカレー味も多いです。

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マレーシアの伝統食ナシレマ。ココナッツミルクで炊いたご飯に、干した小魚、ピーナッツ、唐辛子みそなどを加えます。昼の弁当にピッタシだと思いますが、朝食としてもよく食べられるそうです。

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主食はもちろん米。暑い国だから唐辛子はたっぷり使います。包んで売っているものも多いのですが、これらはみなバナナの皮です。バナナの皮で包んだ草餅もありました。ヨモギではないと思うのですが、日本の草餅と同じ味がしておいしかったです。

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魚もこうやって、鉄板にバナナの皮を敷いて焼いていました。日本だと笹の葉か朴葉みたいな感じですね。

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とまあ、こんな感じで“B級グルメめぐり”をしていたら、4日目の朝、突然おなかを壊してしまったのです。当然の報いですね。若い頃からあちこち場末専門でフラフラして、腸の丈夫さには絶大なる自信があったのですが、寄る歳波でしょうか、1日中ホテルから一歩も出られませんでした。

ペトロナスタワーとISETAN(2015年7月9日)

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1日ホテルで寝ていた翌日、私は今回こちらに来た用件を済ますために、マレーシアの象徴ともいわれるペトロナスツインタワーに出かけました。このビルは国営の石油会社ペトロナスが建設したもので、高さ452m、88階建てです。1階には世界の有名ブランドショップが軒を並べ、41階の連絡通路と86階の展望デッキには入ることができます。真下から見上げると大きすぎて、全体がよく見えなかったのですが、モノレールで20分ほど離れた私が泊まったホテルからはよく見えました。

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ビルに隣接して、ISETANがあったので、私はおなかにやさしい食べ物でもないかしらと思って、中に入ってみました。

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1階が食品売り場になっていて、そこはもう日本のデパートとほとんど変わらなかったのです。空路はるばるやって来た、だいこんや飛騨のほうれん草もありました。ましてや、カップラーメンと寿司は、今やアジア共通の食品になりつつありますね。とにかくどこへ行ってもあります。食の世界のグローバル化は果てがないようです。ここには寿司職人がいるカウンターもあって、日本人駐在員の家族なんでしょう、おばあちゃんがひとりでのんびり‶あがり″など飲んでいました。

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すぐお隣が市民公園になっていて、狭いながらも熱帯樹林の生い茂る中、極彩色の鳥たちがさえずり、大きな昆虫たちが地面をよこぎり、湿った濃密な空気の中で、私はしばし“アジア”に浸ることができました。いえ、正確にいうと“東南アジア”ですね。ここですでに私の“アジア観”がいかにいい加減であったかということがわかります。

日中だったので人はほとんどいなかったのですが、ビルがライトアップされる時間になると、きっと市民や観光客で大賑わいになるのでしょう。まわりに並んだおしゃれなコロニアル風レストランも開店準備に忙しそうでした。

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私用があって急遽マレーシアに来たので、なんの予備知識もなく、ネットで最新情報を検索する余裕もありませんでした。華人が多い街なので、きっと中国語も通じるだろう、もしかしたら人民元も使えるのではないかと、とんでもない誤解にまみれてやってきた私の“アジア観”は、ここに来てことごとく粉砕されました。人気のない公園のベンチでようやくほっと一息つき、ひとまず日本に帰ったらマレーシアの歴史を少し勉強しなければと、樹間のペトロナスツインタワーを眺めながら、しみじみ思った私であります。

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