料理以外で、こんなに簡単にアドレナリンが出る作業があるだろうか。
私は料理が好きだ。
と、専業主婦の私がいうと、「素晴らしいね」とか、「主婦の鏡だね」とか言われる。「きっと子どもの成長のために、旦那さんの健康のために、面倒な工程も苦にならずできる人なんだ」と思われることが多い。
しかし、家族には申し訳ないけど、私が料理がスキな理由はちょっと違う。
私が料理がスキなのは、料理をしている時間はタスク遂行の波に乗り続けて、アドレナリンが大放出できるからだ。
なぜ料理だとアドレナリンが出まくるのか。理由いくつかあると思う。が、一言で表すならば、料理をするという行為の難易度の高さがそうさせるのだ。料理はどの家事よりも難易度が高いと思う。だからこそ、工夫する時に没入感が出るし、うまくいった時の達成感がある。
料理を日頃から行っている人には、「料理の難易度の高さ」はすぐに実感してもらえると思う。(が、もし実感が難しい人がいたら、以下の文から難易度を想像してほしい。)
ーーー料理の難易度が高い理由ーーーー
①とにかく工程が多すぎる
「料理」と一言で表現しきるのが嫌になるくらい、工程が多い。最低限の栄養学の知識を習得した上で、家にある在庫を管理しながら、献立の検討決定・食材の買い出しを行い、実際に調理をする。(そしてその後には後片付けが待っている)
②タスク遂行の時間が限られている
シビアなタイムリミットがあることが普通だ。お腹を空かせた子どもは、なかなか待ってくれない。限られた時間の中で、何品も作るのだ。そしてできれば、温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たいうちに食卓に出したい。つまり、どれだけ効率よく作業を組み立てるのかが重要になってくるのだ。
③調理の工夫で美味しさが変わってくる
料理というのは奥深い。ほんのちょっとの違いで、味が変わってくるのだ。野菜の切り方を縦から横にした。どのくらいまでフライパンを余熱したか。どのタイミングで材料を鍋に入れたか。少しだけ塩が多かった、とか。そんな些細なことで味が全く違う。「その人のことを思いながら愛情こめて料理をすると美味しくなる」なんていうけど、あながち嘘ではないと思う。それは、愛情がおいしくするとかじゃなくて、一つ一つの意味ある面倒くさい工程(野菜の水分をしっかり取るとか、しっかり待つとか)を丁寧にこなすことを、愛情が可能にするからだと思う。
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こう書くと、料理は一大プロジェクトさながらだ。だからこそ、これをやり遂げた時の充実感はすごい。『仕事で案件をひとつキレイに落着させたくらいの充実感を一日に一回も味わえるなんて夕食作りって偉大だよ』。これは、大人気漫画「きのう何食べた?(1)」の主人公・筧史郎のセリフ(P16)だ。私はこのセリフを読んだ時に首がもげるほど頷いた。そうなのまさしくその通りなの!!!狙い通りの時間に完成して味が美味しくて冷蔵庫の食材がすっからかんになった時なんて心の中でガッツポーズをしている。
料理作りは、私にとって山登りの様なもの。やる前はそのハードルの高さに少し億劫になったりしながらも、一度初めてしまえば没入し、完了すれば爽やかな達成感に包まれる。だから料理が好きだ。この一連の感じが他の家事にも適応できたらいいのにな・・・(悲しいかな、料理以外の家事はキライ)と思いながらも、今日も包丁を握り鍋を振る。