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カラヴァッジョの「パウロの回心」にキリストが描かれていないのはなぜ?

キリスト教にとって、とても重要な聖人パウロ。イエスと同時代に生きた人物ですが、イエスが処刑される前に、面識はありませんでした。

そんなパウロ(ユダヤ名でサウロ)は、ユダヤ教の中でも伝統を固く守るファリサイ派に属しており、イエスが救世主であるということは認められず、イエスが磔にあった後も、キリスト教の弾圧を続けていました。そして、まさにキリスト教信者を迫害するために、パウロがダマスカスへ馬で向かう道中のことでした。「サウロ、サウロ、なぜ、わたしを迫害するのか」と、天から目のくらむ光とともにイエス・キリストの声を聞きます。そして、目が見えなくなりましたが、アナニアというキリスト教徒が神のお告げによってパウロのために祈ると、パウロの目が見えるようになりました。

このように、イエスの顕現を体験したパウロは、キリスト教に回心しました。

パウロがキリスト教迫害者からキリスト教布教者に180度転換するきっかけとなったこの出来事は、「パウロの回心」と呼ばれ、たくさんの画家に描かれてきました。

バロック期の人気の高いイタリア人画家カラヴァッジョもその一人です。

「パウロの回心」カラヴァッジョ作

絵画にはパウロ以外、老人と馬のみが描かれており、馬は神の介入によりパウロを踏みつけないよう、ひづめをあげています。
ミケランジェロの「パウロの回心」など、イエスを描いた他の画家と違い
イエスを光のみであらわしたのは、依頼者の意向とも言われていますが
この時、すでに、磔にあい実在していなかったキリストを描くのは、カラヴァッジョが目指していたリアリズムに反するためともいわれています。

「馬の回心」と皮肉られるほど馬が絵画の中央大部分を占めている
カラヴァッジョの革新的な画法が際立っている作品です。

1601年にカラヴァッジョによって描かれた、この「聖パウロの回心」は、
ローマのポポロ広場、サンタ・マリア・デル・ポポロ教会のチェラージ礼拝堂内にあります。

「聖ペテロの磔刑」カラヴァッジョ作

同じ礼拝堂内、「聖パウロの回心」の正面には、同じくカラヴァッジョが描いた「聖ペテロの磔刑」があります。キリストと同じ処刑方法は恐れ多いと逆さ十字架を望んだ聖ペテロ。強烈な明暗法により、光の当たっている人物が、今にも鑑賞者の方へ飛び出してくるのではないかと思われるほどの劇的な緊迫感があります。

サンタ・マリア・デル・ポポロ教会は、ミサ中でない限り自由に入ることができますので、美術館でカラヴァッジョを鑑賞する時間はないのだけれども。。。という方にもおすすめです。

聖パウロについてもっと詳しく知りたい方は以下の記事もどうぞ。



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Natsuko Tomi
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