遺書No.533 悪魔組曲。~札束~
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2005.12.19
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人が傲慢と強欲と怠惰と憤怒に身を任せ
エゴの生き物として黒く輝く姿を歌う悪魔組曲。
どこにでもあるような、
駅から少し離れた閑静な住宅街の路地裏。
ブロック塀の側に、
札束が落ちていた。
仕事帰りのスーツ姿の男が、
それを見つけた。
男は札束を視界に捉えると、
手を伸ばした。
そのとき
札束は悪魔のように肢体を広げると
男に襲いかかった。
「ぐわああああああああああああああああああああああああ」
札束は男を一呑みにすると、
その厚みを増した。
しばらくすると、
今度は女が通りかかった。
欲望を表情に出し、
女は札束に手を伸ばす
札束はまた、女に襲いかかり、呑み込んだ。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああ」
札束は、さらにその厚みを増した。
次に札束を見つけたのは、警官だった。
警官はしばらく迷っていたが、
ふと、周りを見渡し人がいない事を確認すると
やはり欲望を顔に出し、
その札束に手を伸ばした。
札束はやはり警官を飲み込み、厚みを増した。
そして、札束は地面に落ちた。
次の瞬間。
そこに大型トラックが通りかかった。
札束はトラックに轢かれ、
大きな音と共に闇さえも包み込むような黒い煙を撒き散らして四散した。
ようやくその煙が晴れると、
まるで血の色を染み込ませたような赤黒い死体の山が辺り一面に広がっていた。
おしまい。
うん、真っ当に生きましょうかね。
謝謝。
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過去のボクは昭和の固定観念や慣習に縛られ、自分や家族を苦しめていた事に気付きました。今は、同じ想いや苦しみを感じる人が少しでも減るように、拙い言葉ではありますが微力ながら、経験を通じた想いを社会に伝えていけたらと思っていますので、応援して頂けましたら嬉しいです。