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#29 初心忘れるべからず

"慣れ"とは本当に恐ろしい。
研修終了まで既に2週間を切っている中、研修がただの作業になっていることに気がついた。
寝ても回復しない精神的な疲労、連続するあくび。

このような症状を世間一般では「ダレる」と言う。

自分の意欲低下を自覚し、悲観に暮れる。
なぜ東京を離れ、宮崎にやって来たのか。
答えは一つ、花に関わってみたい。
その為に、産業の川上にある生産農家から携わりたいと思ったから来たのである。

故に、これは作業ではなく"研修"。私は学びに来ているのである。初心を忘れてはならない。

昨日、終業後にマクドナルドに駆けつけた。最近になってようやく飲めるようになったブラックのアイスコーヒーを購入。最安値100円でいつまでも居座れるのがこの店の魅力だ。タブレットを開き、YouTubeにて「花屋」と検索。様々なフローリストと呼ばれる人たちが自身の仕事内容や考えを発信していた。

数ある動画で目に止まったフローリストは、illony(アイロニー)という花屋を経営されている谷口さんという方だった。芦屋、南青山、そしてパリで花屋を開いているらしい。
店名の由来は英語の「irony(皮肉)」から取っているらしい。真の賞賛は皮肉で語られる。
素敵な考えの持ち主だと感じた。

動画を数本見た後、花屋の仕事の魅力や大変なこと、そして大切なことを知った。
共通しているのは「花」というものは生モノであること。
そして、お客さんの心を豊かにするものであること。
これは大好きだった演劇と同じだ。

食べられないし、枯れるから永久保存はできない。何かの役に立つかと問われれば、実用性を証明することは難しい。
だが、産業として古来から成立し、生産・流通・販売のシステムが整備されている。そして、固有の言語を介す必要がなく、世界中で愛されている。人類共通のエンターテイメントなのかもしれない。

胸が躍った。
魅力的だし、面白い。

アイスコーヒーを飲み込み、店を後にする。
100円で3時間も粘ってしまった。申し訳ない。
明日も来るから許してくれ。

次の日、風の丘ガーデンでの29日目。

朝5時起床。
眠気は全くない。昨日Kindleで購入した花の本を読み、いつもより30分早く出社。疲れは全くなく、過去一体調が良かったかもしれない。

結局、自分の精神状態次第だなと思った。

以上



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