恋愛脳日記
バレンタインデー。
昼から張り切って夫のためのフォンダンショコラに取り掛かったが、彼氏ができたという事実にフワフワしてしまう。
集中するために無音状態で作成。
私は音が聞こえるとそちらに気を取られがちなので、しっかり作業をしたい時は何も聞かないことが多い。
あとは焼くだけ、という状態になったところで休日だったロイくんから電話。
普通の世間話かと思ったら、何だかテイストが違う。
前回のデートの際に彼から「彼氏発言」があったのだけれど、実は終電が迫っていたこともあって私は深く訊かなかったのだ。
それについてきちんと話したいと言う。
「順番がおかしくなってゴメンだけど、俺は凛ちゃんを彼女だと思ってるよ。ていうかそれ以外の関係なんて無いし」
彼には私の事情(契約結婚のことなど)をかなり早い段階で話していた。
だから私は「セフレ程度でも良い」と思っていたのだ。
が、それを飲み込んだ上で「彼女」と言ってくれるロイくんに「なんてストレートな人なんだろう」と感動してしまった。
同時に、保身に走っていた自分を恥じたのだ。
「10歳以上も歳下の相手なんて詐欺に決まっている」
「正体を現したら警察に通報してnoteに書けばいいや」
そんな風に思っていたのだ。
けれども彼は真っ直ぐに向き合い、肩書き度外視で私という人間を欲してくれている。
最終的に詐欺だったとしても、ここまでしっかりと言葉を交わしてくれるのであれば、我が人生に一片の悔い無しだ。
とはいえ彼の将来が心配ではある。
どのように考えているのか。
「もちろん人生の中長期的なビジョンはちゃんとあるよ。投資もしてるしね。でも将来に囚われすぎてると、今したいことが出来ないじゃん。俺はいま凛ちゃんと一緒にいたいよ」
ロイくんと付き合うことになった時、一番最初に頭に浮かんだのは江國香織の「東京タワー」だ。
申し訳ないが、私は江國香織の文章が苦手なので原作本を読んだことは無い。
だが、2005年に映画化された黒木瞳と岡田准一の作品は見た。
黒木瞳演じる40代の人妻である主人公が、岡田准一演じる男子大学生と恋に落ちる話である。
このストーリーの面白いところは、恋仲になった大学生が主人公の女友達の息子だった、ということ。
劇中こんなシーンがある。
主人公の友達であり、恋の相手の母親でもある人が、ふたりの関係に気付いて主人公を責めるのだ。
「私の息子のいちばん綺麗な3年間をあんたは独り占めにした」
そうだよなぁ、と思う。
ロイくんは大学生ではないし、20代とはいえ立派な大人であるから、ここにそのまま当て嵌めることは出来ないけれど。
彼の貴重な時間を私は奪っているのだ。
私は彼と結婚することが出来ないのに、それを含んで一緒にいてくれる。
本来なら、今すぐにでも若くて可愛くて健康な女子と結婚して子供を設けるべきだ。
後世に継ぐに値する遺伝子を彼は持っている。
もちろん私がロイくんを脅迫しているわけでは無いし、彼の意志によりこの関係が成り立っているのだが。
やはり罪悪感を覚えてしまう。
ご家族に対してなのか世間に対してなのか、人類に対してなのかは分からないけれども。
電話中、彼が「もう一つ報告がある」と言い出した。
「前にもちょっと言ったけど、やっぱり転職することにしたんだ。凛ちゃんは俺が弁護士じゃなくなったらガッカリする?」
「しないよ。他の仕事のほうが良いと思ったんでしょ?ロイくんの決めたことを私は応援するよ」
極端な話、彼が大道芸人だろうとフリーターだろうと別に構わないのだ。
だって結婚するわけじゃないし。
私はロイくんという人間を好いている。
そこには肩書きも年収も要らない。
「今日は何してるの?」
「部屋の片付けと掃除。いつ凛ちゃんが来ても良いようにって思って」
私は彼に一体何をしてあげられるだろうか。
すでに多くの知見がある人だ。
彼が望むなら知らない世界を見せてあげたい。
夕食はハヤシライスとサーモンサラダ。
全然映えないフォンダンショコラも一応見る?
味は美味しかったです。
これ気の所為かもしれませんが、恋してると目の開き具合が大きくなったり肌がツヤツヤしますよね?
おかげで夫が最近私をめちゃくちゃ可愛がってくれます。
やっぱり私は恋をしている時のほうが色々上手くいくのだろうな。
そんな今日この頃。