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最愛の君へ

セリちゃんこんばんは。
今日はね、noteの企画に乗っかろうと思ってね。
「たったひとりの人に向けて」記事を書くらしいんだよ。

こういうのって多分旦那さんとか奥さんとか恋人とか、もしくは親御さんとか子供に宛てて書くんだろうけど。
私が一番に浮かんだのはセリちゃんだったよ。
だから今日は大切な貴女に向けて書きます。


まず、私の妹として生まれてくれて本当にありがとう。
小さい頃から比べられて、もしかしたら私のことを嫌いだった時期もあったかもしれない。
でも私は貴女のことを嫌いになったことは一度もありません。


安室ちゃんブームでロングブーツが流行っていた時、セリちゃんは恥ずかしそうに「一緒にブーツを買いに行って欲しい」と言ったことを覚えてますか?
私は鮮明に覚えています。

当時のセリちゃんはちょっと、いや、かなりポッチャリしていたから、自分が履けるブーツを探すのが大変だったんだよね。
私はそれを分かっていたから、一緒に渋谷のあらゆるお店を見て回った。

109・丸井・西武・パルコ。
なかなかセリちゃんの脚に合うブーツが見付からなくて、それでも私は探し続けた。

何ならバイト代を注ぎ込んでオーダーメイドで作ってもらおうかとも思ったぐらいだ。
私の妹が履けるブーツを作らない靴屋が悪い、と憤る程に。

ようやく希望を叶えてくれるブーツが見付かった時のセリちゃんの輝くような笑顔。
今でも忘れない。
私は貴女のことが何よりも大切なのだ。


だから「妊娠した」と聞いた時は息が止まった。

私の大事な妹に何してくれてんだよ。
ふざけるな。
ボコボコにしてやっから今すぐソイツここに連れて来い!!

心の中でそう叫んだけれど、セリちゃんは「結婚して生みたい」と言った。

分かった。
貴女がそうしたいなら協力する。

けれど連れて来た男を見て、私はすぐに「コイツはダメだ」と悟った。

夜の仕事で何百人もの男性を見てきたから分かる。
コイツは自分の欲望を何よりも優先するタイプだ。

ていうか背中一面にタトゥー入れてる時点でダメだろ。
偏見だと思われるだろうがタトゥー入れてる男と寝て幸せになった女を私は知らないぞ。

でもセリちゃんのお腹には新しい命が宿っている。
私は貴女とその子供を守ろうと心に決め、タトゥー野郎に目を光らせつつ見守った。


それから半年後。
「産気付いた」という連絡を受け、私は病院に走った。

神様お願いです。
どうかセリちゃんに無事に出産させてください。
彼女の為なら私のお客様を全部失っても良いし、お金も要りません。
私の持っている物を全て差し出しても構わないから、お願いです。

ようやく辿り着いた病室には「安産でしたよ」という看護師さんと、小さな命を抱いているセリちゃんの笑顔があった。

「セリちゃん、頑張ったね。よく、頑張ったね…」

私は泣くことしか出来なかった。


長男・レンを出産してから数年後、長女・アミも誕生してお祝いムードに包まれている中、突然セリちゃんがやつれ始めた。

原因は分かっている。
タトゥークソ野郎のせいだ。

まだアミが1歳になるかならないかという頃、決定的な事件を起こして野郎は警察に事情聴取された。
不起訴になったものの、私は心を鬼にしてセリちゃんを自宅に呼び出した。

「もう別れな。セリちゃんの為に言ってるんじゃない。子供達の親を犯罪者にしない為に言ってるの。もしどうしても今でも好きで一緒にいたいなら、子供は置いて行って。私が責任を持って育てるから」

セリちゃんは小さな声で「分かった」と言った。
帰り際、貴女を見送る玄関で私は思わず声が出た。

「セリちゃんは頑張ったよ。すごく、頑張った」

それを聞いた瞬間、玄関に蹲って泣き始めたこと、今でも忘れない。

それからすぐ「一緒に行ってほしい」と言われて役所に離婚届を提出しに行った。
帰りにフレッシュネスバーガーに寄ってビールを飲んだよね。


あれから随分時が流れて、レンは高校生だしアミも中学生になる。

セリちゃんはまた性懲りもなく変な男と付き合ってるけど、子供達に害があるようなら私が嫌われ役になってでも止めるからね。

貴女のことが一番大切だけれど、レンとアミの幸せがセリちゃんの幸せでしょ?
分かってるよ。

もしも突然セリちゃんが命の危機に瀕して、私が身代わりになれば助かるのなら。
私は喜んで命を差し出すよ。

今まで愛してきた男達より、夫より、セリちゃんが誰よりも大切なんだよ。
貴女が幸せでいてくれることが私の幸せなんだ。

だからセリちゃん。
これからどんな道を歩んでも私は応援する。
時には苦言を呈したりもするかもだけど、貴女の幸せだけを望んでいるから。

セリちゃん、本当にいつも頑張ってるもんね。
私はずっと見守ってるよ。

この世で一番大切な妹へ。


C賞でお願いします。

普段、企画やコンテストにはあまり応募しないのですが「たったひとりの人へ」というワードに心を掴まれたので参加しました。
おだんごさん、素敵な企画をありがとうございます。


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