見出し画像

さよならアンナミラーズ

みなさんは「アンナミラーズ」というレストランをご存知でしょうか。
首都圏に展開しているチェーン店で、最盛期は最大20店舗ありました。
可愛らしくも刺激的な制服で多くのファンを獲得し、メイド喫茶の「はしり」ともなったお店です。

が、現在は品川駅前にある高輪店の1店舗のみ。
その高輪店が来月(2022年8月31日)で閉店するのです。
つまり、アンミラが日本から消えます

何を隠そう私は元アンミラ店員です。
そこで今日はアンナミラーズとの思い出を語ります。



アンミラネットワークは恐ろしい

まず最初に言っておきたい。
アンナミラーズには独自の「アンミラネットワーク」というものがあり、たとえ店を辞めても店員同士の繋がりは半永久的に続くのだ。

「〇〇店の△△さんが来月辞める」とか「□□店の店長と××さんは不倫している」など、あらゆる情報が回ってくる。
そのため私がネット上に、働いていた時期や年数を書くと高確率でアンミラネットワークに特定されてしまう。

というわけで詳細は伏せるが、某店舗で働いていました。
ちなみに私も「○○店の凛さんは二股している」と噂を流されたことがある。
が、本当は三股だったので情報精度は甘い様子。

個人情報流出に最大限気を付けつつ、アンナミラーズについてご紹介したい



発祥はアメリカ

アンナミラーズはハワイに本店を持つ、ペンシルバニア・ダッチスタイルの家庭料理とデザートパイを提供するレストラン

店名の「アンナミラーズ」は創立者Stanley Millerスタンレー・ミラーの祖母Hanna Millerアンナ・ミラーが由来。
彼女の作っていた素朴な家庭料理をコンセプトとしているため、店内で供される料理は基本的に味付けがシンプルだ。

この歴史についてはアンミラに採用された全ての店員(アルバイト含む)が座学で必ず覚えさせられる。

私も教える立場となってからは、何十人もの女の子たちに同じことを教えてきた。
さらに筆記試験があり、合格点を取れないと店に出させてもらえない。

何故そんなに厳しいかというと、アンミラは制服目当ての女子が多いため。

「かわいい制服着たい~♡」という理由で応募してくる女子がほとんどなので、言い方は悪いが「仕事をする」という意識が低い子ばかりが集まってきてしまうのだ。

アンミラはイメージとは裏腹に、かなり高度なオペレーション(飲食店においてのスムーズな回転)技術を求められる。
お客様によるセルフサービスが一切無い中、エリア(平均10卓)のオーダー取り・ドリンク作り・料理の提供・コーヒーと水のおかわり・バッシング・セッティングを1人で行わなければならない。

何よりもホスピタリティを重視しているため、お客様に対して「少々お待ち下さい」とは絶対に言ってはいけないのだ。
即座に対応し、自分の体力・気力を全て費やしてエリアを回す。

それを笑顔でこなしてこそ一人前と認められるのだ。
先輩からの叱責も多く、理想と現実のギャップがキツすぎて大抵すぐに辞めていく。
10人雇っても1ヶ月以上継続する子は1人か2人だったため、ほぼ毎日のように面接が行われていた。

生き残っていくのは「絶対にアンミラの制服を着続けたい!」「アンミラが大好き!」というガッツのある猛者ばかり。
私もそんなひとりだった。



健康的なセクシーを目指して

アンナミラーズのコンセプトは「健康的なセクシー」。
おっぱいを強調したミニスカート制服ではあるものの、そこにエロスを持ち込んではならない。

フェミニストがうるさい今では改定されているかもしれないが、当時のウェイトレスにはあらゆる規定が設けられていた。

・ノーメイクはNG
・派手メイクもNG
・ブラジャーはベージュ(ブラウスからブラの色が透けて見えると店に出させてもらえない)
・床に落ちている物を拾う時は、膝を付いてしゃがんで取る(立ったまま取ると後ろからパンツが見えるため)
・急いでいても走らず笑顔で
・常に胸を張り優雅に店内を歩く

とある先輩がこんな名言を残している。

「お店に一歩出たら、私たちは女優なの。どんなに忙しくても、常に美しく振る舞わないとダメ」

アンミラを辞めて以降、様々な業態の飲食店を経験してきたが、ここまで骨のある店を私は他に知らない。
お客様と店員、双方から愛される聖域のようなレストラン、それがアンナミラーズなのだ。



ありがとうアンナミラーズ

お気付きではないと思うが、実はこの記事を泣きながら書いている。
私にとってアンミラは青春の一部であり、本当に多くのことを教えてくれた素晴らしい場所だった。

先輩の厳しい教育に毎日誰かが泣いていたり、誕生日に特別メニューをこっそり作ってもらったり、閉店作業が終わらなくてみんなで始発を待ったり…。

ひとつひとつが本当にかけがえのない思い出で、そのお店がいま消えようとしている現実を、正直受け止めきれていない。
文字数の関係で今回はここまでとするが、またアンミラの思い出記事を書くかもしれない。

一先ひとまずはこれで。
ありがとうアンナミラーズ。
大好きだよアンナミラーズ。


いいなと思ったら応援しよう!