不誠実日記
夫の気まぐれ
昨日は仕事終わりの夫から「外で一緒にビール飲もう」と言われたので慌てて支度をし、イングリッシュパブに行った。
フィッシュ&チップスとローストビーフをツマミにしてビールをしこたま飲んだのだ。
そんなわけで「今日は和食にしよう」と頭の中で献立を組み立てながら、夕方キッチンに立つ。
むきエビを出汁で煮て卵を加えたかきたま汁を作り、副菜は加熱したサニーレタスでお浸しにした。
そろそろメイン料理のブロッコリーの豚肉巻きを作ろうかなと思っていた時、夫が帰宅。
「ワイン買ってきたよー」
うん、ありがとう。
でも今日は私、和食にしようと思ってたから明日飲もうか?
「えー!折角買ってきたんだから今飲もうよ」
オーケー。
じゃあ今からワインに合うおつまみ作るね…。
というわけで、またしても和食から洋食にハンドルを切ったレシピのご紹介。
1品目・トマトとカッテージチーズのサラダ
炊いてしまったななつぼしのご飯は小分けにしてラップして冷凍庫へ。
すでに作ってしまったかきたま汁は冷まして冷蔵庫へ。
代わりにミニトマトとカッテージチーズを取り出す。
トマトは半分にカットし、塩と粗挽き胡椒を振ってカッテージチーズを乗せる。
オリーブオイルとハーブソルトをかけてパセリを散らせばワインのお供の完成。
とりあえずこれで時間を引き伸ばし、メインをどうするか考えよう。
2品目・サニーレタスとクロダイのマリネ
梅雨に入った今、ナマモノを翌日に持ち越すのは良くない。
買ってきてくれたワインを一口飲んだところ、花の香りと桃のような甘さを微かに感じる味わい。
これなら白身魚にもギリ合うか…?
というわけですでに作ってしまったお浸しの水気を切り、解凍したクロダイ(フィシュル)とゴマ油をマリネして皿に盛り付けた。
うん、全然合うし美味しい。
でもサニーレタスが多すぎたので、食べきれないレタスはパスタの材料にすることに決定。
3品目・ペペロンチーノ
赤ワインに合うパスタソース代表は、トマトソースやミートソース。
しかし1品目にトマトを使っているし、今からミートソースを作る時間は無い。
ここは「どんなワインにも合うパスタ」代表のペペロンチーノ先生にお願いしよう。
余ったサニーレタスも入れたことで食感にアクセントが加わり、中々美味しく仕上がった。
食後。
残ったワインを飲んでいたら、夫が私の目の前にチンコをボロンと出してきた。
なるほど。
デザートは「丸ごとバナナ」というわけか。
どうせならもうちょい甘いのが良かったけど。
夫と初めてセックスをした時、彼はまだ40代だった。
60代になった今でもこうして嫁とセックス出来るなんて、本当に元気だなぁと思うし、よく飽きないなぁと感心する。
もちろん私は飽きているのでローション必須だが、それでもセックスの間は余計なことを考えずにいられるのが良い。
日常の些細な悩みとか。
やらなければいけないのに後回しにしていることとか。
そうした面倒事を全て忘れて快楽に集中出来る。
だから相手が誰かは関係無くセックスが好きだ。
事後、シャワーを浴びながらテオ君のことを考えた。
あれからまだ連絡は無い。
ほんのりと、もしかしたらもう連絡は来ないかもしれない、という嫌な未来が過ぎる。
実は私は彼にひとつ嘘をついた。
「旦那さんと今でもエッチしてるの?」と訊かれた時、咄嗟に「してないよ」と言ってしまったのだ。
暗に、彼の質問の仕方から「していてほしくない」という空気を感じてしまったから。
常に誠実でありたいと思っているくせに、変なところで嘘をつく。
だから、もしも彼と途切れたとしても、それはきっと私の不誠実な人生が招いたことなのだ。
バスルームを出てすぐ、夫と鉢合わせた。
「俺は先に寝るね。凛ちゃん、愛してるよ」
そう言って彼は私の唇にキスを落とす。
家族にこれだけ愛をもらっているのに、何故私は恋を求めるのだろう。
どうせ苦しくて悲しくて辛くてやり切れない気持ちになるのが分かっているのに、どうして恋という儚いものを求めるのか。
いや、儚いからこそ求めるのだ。
シャボン玉が永遠に割れなかったら、人々はシャボン玉に興味を無くす。
いつか消えてしまう、時間限定の物だからこそシャボン玉には価値があるのではないか。
きっと恋も同じだ。