街の本屋さんが消える日
昨日、久し振りに妹のセリちゃんとランチをしてきました。
約2年ぶりです。
彼女は実家で高齢の祖母と一緒に住んでいるため、感染症の影響を考慮して「一緒にご飯を食べるのはやめとこうね」と先延ばしになってまして。
ようやくふたりで笑い合いながらご飯が食べられたこと、本当に涙が出そうなほど幸せだなと感じました。
さてセリちゃんは街の小さな本屋で働く書店員です。
最初はアルバイトとして始めたのですが、現在は正社員になり事務作業もしています。
そんな彼女から街の本屋の現状について話を聞けました。
減りゆく書店
みなさん御存知の通り、実店舗としての本屋は右肩下がりに減少を続けている。
急激にではなくじわじわと減少しており、その数は20年間で約半分となった。
大きな要因はやはりAmazonなどでのネット通販が身近になったことだろう。
2020年度、他のルートが一様にマイナスだった中で唯一ネット通販は前年比+20.5%を記録しているのだ。
家を出ずとも、深夜早朝であろうと、思いついた時に本を注文できる。
大手であれば大抵送料も無料で、ポイントも付いてきてしまう。
この手軽さとメリットに実店舗の書店が対抗するのは難しい。
さらに追い打ちをかけるようだが、本屋のライバルはネット通販だけではない。
電子化の波
紙の本にはメリットがある。
デザインなどの装丁、ページを繰る時の手触り、インクの匂い。
しかし「場所を取る」「ページ数が多いと持ち歩きにくい」などのデメリットがあるのも事実だ。
そこで登場したのがデータとして端末で読める電子書籍。
右肩上がりで成長を続けており、当初は電子書籍に懐疑的だった層も、その便利さと手軽さに心を開き始めている。
そして近年、電子図書館なるものまで登場した。
お住まいの自治体にある図書館が電子対応していれば、わざわざ図書館に出向かなくても365日24時間いつでも無料で本が読める。
もちろん対応している書籍は限られているが、返却期限が来たら自動で読めなくなるだけなので返しに行く手間もない。
そして忘れてはいけない青空文庫。
著作権が切れた作品・著者からの許諾を取った作品を無料でweb公開している、電子書籍の先駆けとも言える存在。
収録作品数は15,000点以上だ。
明治から昭和初期の作品が中心で、太宰治の「人間失格」「斜陽」「ヴィヨンの妻」や、芥川龍之介の「地獄変」「藪の中」「鼻」など、往年の文豪の作品が読み放題。
こうした便利で手軽な媒体と渡り合って行かなければならないのだから、やはり書店の未来は明るくない。
本+αに可能性を見出す
書籍やコミック、雑誌だけを売る場として存続させるには限界がある。
そう考え、カフェやコワーキングスペースを併設させるというアイデアを打ち出す書店も増え始めた。
以前、下記の記事でも紹介したようにオリジナルのブックカバーを作る本屋もある。
セリちゃんの書店でも、店内の空いているスペースをイベントに貸し出したり、出版社と連携して限定アイテムの予約販売などを行ったりもしている。
手に入れようと思えばどこでも手に入れられる本。
それを販売するだけでは、もはや街の小さな本屋はやっていけないのだ。
書店は本当に必要か
何も「みんなもっと本屋に行こう」などと言いたいわけではない。
CDが登場して廃れたレコード屋。
音楽配信が当たり前になって潰れたCDショップ。
時代の流れに伴って自然淘汰されるのは必定だ。
思い出を懐かしむ感傷はあっても良いが、採算の合わない経営を無理に続ける必要も義理もない。
大手書店以外の、小さな街の本屋はいつか消えてしまうだろう。
ただ、私は知っている。
セリちゃんがちゃんと自分で読んだ本の感想を、可愛い字でポップに書いてオススメしていること。
常連さんの好きな作家を覚えていて、新刊のお知らせをしていること。
私は彼女のそうした真面目さと思いやりが大好きなので、未だに本を買う時はセリちゃんの本屋へ行くのだ。