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「金属バット」というジレンマ芸人

「金属バット」は小林圭輔と友保隼平ともやすしゅんぺいの2人で結成された漫才コンビだ。

私はお笑いが好きだが「テレビやYou Tubeでネタは見るけど劇場に足を運ぶまでには至らない」というレベルである。
つまりそこまでコアではない。

そんな私の心を捉えて離さないのが金属バットだ。

「売れてほしい」「世間よ早く気付け」と願っているのにも関わらず、「直接応援したくない」と思ってしまう自分がいる。

何故こんなジレンマに陥ってしまうのか



コテコテの大阪芸人

一見ツッコミに見えるスキンヘッドの小林がボケで、ボケに見える長髪の友保がツッコミ。

尖っていながらも「正統派漫才」のスタイルの2人は、芸人仲間や先輩といった内輪から高い評価を受け、すぐに芽が出ると思われていた。

しかし賞レースで結果を出すこともできず、彼らは大阪の劇場に出ながらアルバイトで生活費を稼ぐ日々が続く。
そんなある時、東京の劇場へやってきた。

特に東京におもねるつもりもなく、大阪でいつもやっているのと変わらない、自分達のやり方を貫き通したつもりだった。

ところが。
何故か局所的に跳ねた。

しかも東京の女子達に。

一体何が刺さっているのか首を傾げる2人をよそに、チケットが飛ぶように売れ、金属バットは東京の劇場になくてはならない看板芸人となった。



謎の女子人気

女子に人気が出る芸人というのは、そのままスター街道を突っ走ることが多い。
一昔前ならとんねるず・ウッチャンナンチャン・ナインティナイン。

現在でも引っ張りだこのダウンタウンはレジェンド枠なので別扱いとする。

基本的には「見た目のいい芸人」が女子受けするので、令和では「ニューヨーク」などがその代表格だろう。
スター街道に行けるかどうかは微妙だが…。

しかし金属バットの女子人気は、少々特殊である。

こう言ってはなんだが、2人共特に女子受けするような容姿ではない。

ネタ中も下ネタやドギツイ言葉が矢継ぎ早に挟まれるので、普通に考えれば女子からの支持は得られそうにないコンビなのだ。

ところが彼らの劇場終わりには、多くの女子ファンが出待ちする。
その割合は女子:男子が9:1だ。

圧倒的な女子人気

金属バットの2人は、何故自分達がこんなにも女子に支持されているのか分かっていない。
むしろ男から支持されたいと思って作っているようなネタだ。

だが、私にはその理由がなんとなく分かる



悪人の皮を被った善人

金属バットは自分達のことを悪人だと思ってもらいたい、というような一面をよく見せる。
わざと暴言や放送禁止用語を吐いたり、炎上スレスレのネタ(実際に炎上したこともあるが)をやったりして「自分達は行儀の悪い荒くれ者です」と喧伝している節があるのだ。

しかし彼らのネタやロケの様子をしっかり見れば、2人が本当はマナーと節度を守り、読書や日々のニュースから正しい情報を仕入れている「きちんとした人」であることがバレバレなのである。

悪ぶってるけど本当はいい人。
女子はこういう男が大好物なのだ。

さらに付け足すならば、金属バットはBL好きの女子も引き寄せてしまっている。

2人の仲が非常に良いので、番組の企画でひとつの布団で寝させられたり、膝枕をしていることもある。
一緒に狭いバスタブでお風呂に入らされていた時は、さすがに狙いすぎだろ、とは思ったが。

ただ、芸人にとって「女子にキャーキャーされる」というのは非常に危険なことでもあるのだ。

おそらく2人もそれを案じているのではないか。



男を笑わせろ

ここで島田紳助の名言を紹介したい。

売れだすと、劇場に女の子キャーキャー来よんねん。 で、これが邪魔やねんな。こいつらが俺たちをダメにしていくから。

この、こいつらはキャーキャー言うてくれて俺たちを追いかけてくれて、人気のあるような感じを作ってくれてる。

で、こいつらは俺らにとって、すっごい必要や、すっごい必要やねんけど、めちゃめちゃ邪魔やと。
で、こいつらが俺らをダメにしよると。
なんでか言うたら、こいつらを笑わすことが、簡単やから、こいつらを笑わしにかかってまう。

で、こいつらを笑わしにかかった瞬間に俺たちはすべて終わってしまうと。
だから、テレビでも、カメラの奥で、コタツで見てる兄ちゃんがおもろいと思ってくれる感覚でやる。いっつもそこに客はいない。向うにいんねやと。

だから、今でも劇場あるやんか。吉本のちっちゃい劇場、女の子来るやん。
あの子らを笑わしてたら、絶対アカンよ、ほんま。うん。

一部省略の上抜粋

実は私が劇場へ行かない理由のひとつが、この島田紳助の言葉なのだ。

断っておくが「女は劇場に行くな」という話ではない。
だが、良かれと思ってする女の行為によってダメになる男が存在するのは事実である。

金属バットは、もっと世間に、男に認められるべきだ。

女の人気にあぐらをかいて「まあまあ、この位置でもええか」となってほしくはない。
だから私は金属バットを直接応援しないし、姿を見に行こうとも思わない。

明日の敗者復活戦、テレビの前で応援しているから、絶対に勝ってね。

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