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【美術館レポ】大塚国際美術館に行ってみた

徳島県鳴門市にある大塚国際美術館。

延床面積は29,412㎡、日本最大級の常設展示スペースを誇り、世界の名画を一度に鑑賞することが出来る陶板美術館です。

この美術館のために東京から徳島へ行き、開館から閉館まで1日かけて鑑賞しましたので、今回は大塚国際美術館の魅力についてたっぷりお伝えします。

※写真も含めた美術館レポなので、本文は2,700文字です。



異色な美術館

通常の美術館は、当たり前ですが「本物」の絵画や作品が展示されています。

例えばダ・ヴィンチの「モナリザ」を見るならフランスのルーブル美術館、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」を見るならオランダのマウリッツハイス美術館に行かなければなりません。

大塚国際美術館は、そうした世界の名画を陶板に転写して一同に集めた美術館なのです。
「でもレプリカじゃん」と鼻で笑う人もいるでしょう。

大塚オーミ陶業株式会社が開発した特殊技術で作られる陶板複製画は、温度・湿度による色彩の退行に強く、約2,000年以上保持出来るとされています。
思いもよらない災害によって失われがちな貴重な文化財を後世に残す素晴らしい技術なのです。

また、全ての絵画を原寸大で展示していますので、ピカソの「ゲルニカ」(横7.8m、縦3.5m)もそのままのサイズで鑑賞出来ます。
さらにはバチカン市国にある「システィーナ礼拝堂」をそのまま再現。

レプリカとは思えない大迫力

名画好きには堪らない美術館なのです。


個人的名画紹介

大塚国際美術館には1,000点以上の世界の名画が展示されていますので、その全てをご紹介することは出来ません。
そこで、展示されている中から個人的に好きな作家と作品を少しだけご紹介します。


カラヴァッジョ「聖ペテロの磔刑」

イタリア:サンタ・マリア・デル・ポポロ教会チェラージ礼拝堂所蔵

静止画でこの躍動感。
今にも動き出しそうな迫力と、筋肉の描き方が凄すぎる。
好きな作家三本指に入りますねカラヴァッジョは。


レンブラント「テュルプ博士の解剖学講義」

オランダ:マウリッツハイス美術館所蔵

光と影の魔術師と称されるレンブラント。
「夜警」が有名ですが、この絵は集団肖像画という変わった作品。
実際の講義の様子を描写したわけではないので、カメラ目線の人がいるのです。


ベラスケス「ラス・メニーナス」

スペイン:プラド美術館所蔵

私が一番好きな絵画作品です。
この絵は色々とおかしくて、画家(ベラスケス本人)が描く姿が作中に居たり、遠近法が変だったり。
如何様にも読み取れる画を描くベラスケスのユーモアさが好きです。


フェルメール「手紙を読む青衣の女」

オランダ:アムステルダム国立美術館所蔵

「真珠の耳飾りの少女」もそうですが、フェルメールの描く表情には感情の複雑さがあります。
この絵の女性も、手紙が朗報なのか悲報なのかを鑑賞者に委ねる余白があるのが素晴らしいなと。


ドガ「アブサン」

フランス:オルセー美術館所蔵

諸説ありますが、この絵の女性はアルコール中毒者とされています。
光の差し込み具合から昼間のカフェで、目の前に置かれたお酒。
そしてタイトルも「アブサン」。
表情から色々なものが伝わってきますね。


ミレー「晩鐘」

フランス:オルセー美術館所蔵

とにかく悲壮感しか伝わって来ない作品なのだけれど、注目は空の色
暮れゆく時間を余すことなく描き切っています。


マネ「オランピア」

フランス:オルセー美術館所蔵

ティツアーノが描いた「ウルビーノのヴィーナス」に酷似しているとして、当時炎上した問題作。

ウルビーノのヴィーナス

「神であれば裸体画も許される」という時代への反逆精神として「人間の娼婦の裸体」を描くガッツに拍手したい。


アンソール「ストーブで暖を取る骸骨たち」

アメリカ:キンベル美術館所蔵

アンソールは「仮面と骸骨の画家」と言われる人。
骸骨が普通に生活している絵を描くシュールさが魅力。
そこが面白いんですが、本人も実際に精神を病んでいたらしいので闇が深い。


ジェローム「アレオパゴス会議のフリュネ」

ドイツ:ハンブルク美術館所蔵

私が一番美しいと思う裸体画
等身・スタイル・メリハリにおいて完璧。


ムンク「思春期」

ノルウェー:オスロ国立美術館所蔵

「叫び」で有名なムンクですが、この画はよく見ると手と脚に血が付いています。
この事に気付くと、表情や後ろの影の不気味さが、女という性の恐ろしさに一層意味を持って感じられるのでは無いかと。


大塚国際美術館を楽しむためのポイント&注意点

ここからは大塚国際美術館に初めて行く方へ、事前に知っておくと便利な情報を書いておきます。


1.時間には余裕を持って

大塚国際美術館は地下3階から2階までの全5フロアで構成される巨大建造物です。
そのため有名絵画だけを観て回るルートでも1時間30分以上かかります。

全ての絵画を鑑賞したい、解説をじっくり読みたい(聴きたい)という方は前後のスケジュールにゆとりを持たせて来館しましょう。
ちなみに私は食事や休憩時間を除くと、全て観るのに5時間かかりました。


2.歩きやすい靴&荷物は最小限で

鑑賞ルートの全長は4kmです。
歩数にして約8,000歩、革靴やハイヒールでは足を痛める恐れがあります。
フロアは硬い床のためスニーカーやクッション性のある靴を履いて行きましょう。

入口付近にはロッカーが併設されているので、貴重品以外の荷物は預けて身軽にしておくことをオススメします。


3.水分補給と休憩はこまめに

館内は空調が効いているので非常に乾燥しています。
食事をしながらの鑑賞は禁止ですが、水分補給は可能(むしろ推奨)です。
各階に自動販売機が設置されているので随時水分を摂ってください。

また、展示エリア各所にソファーやチェアがありますので、疲れたら無理せず休憩しましょう。
観ながら歩くと本当に長いので。


4.昼食は計画的に

館内にはレストランが1つとカフェが2つありますが、ガッツリ食事をするなら「レストラン・ガーデン」一択です。
お昼時には行列が出来ますので、オープンの11:30には向かいましょう。

チケットにスタンプを押してもらえば再入場も可能なため、車でお越しの際は事前にお弁当などを用意して車内で食べるのも良いですね。
なお近隣には飲食店がありませんので、外のお店で食べるならバス移動が必須となります。
ご注意を。


一生に一度は行きたい美術館

大塚国際美術館のコンセプトのひとつが「いつか本物を見に行こうと思ってもらいたい」です。
展示してある作品は全てレプリカですが、ここをキッカケとして世界に羽ばたいてもらいたいという思いが込められています。

子供には世界へ踏み出す一歩として、大人には世界をもう一度見渡す余韻として。

この美術館が後世にまで長く受け継がれることを願います。

館内のレストランメニューや近隣喫煙所を紹介した徳島旅レポはこちら。


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