夜には特別な感情がある。
わたしの生活軸において、ゆとりを許されている唯一の時間。何をしてもいいし、何もしなくていい。「使命感」という名の束縛に絆されない、空白の時間。
あるいは、虚無の時間。何を言っても届かなくて、ひとりの時間。真っ暗な、行先の見えない間隙。
そんな夜は、誰にも邪魔されたくないし、誰のことも邪魔したくない。思いのままに、部屋の中でしたいようにする。他人の干渉なんて野暮そのものだ。
布団の中で目を閉じる。せめて夢の中では、辛いことなんて全て忘れて夜を明かしたい。わたしは思いを馳せる。たとえば10年後、何をしているんだろうか。あなたは今、どこにいるの。わたしの大切な人が、大切な思い出にならずに、ずっと笑顔でいられますように。いたずらに消えようとしないで。浮かんでは消える理想論より、目の前の些細な愛を大事にしたい。ただそんなことを、考えていただけ。