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【エッセイ】 ハーブ

「…臭い」
朝起きてキッチン兼リビングへ移動したら臭かった。
匂いの元に心当たりはあった。恐らく、というより絶対、昨日行った部屋での焼肉パーティーなのである。もくもくと立ち上る白煙を外に出すために換気をして行っていたものの、ものの見事に部屋に匂いがついている。
朝嗅ぐ匂いとしては最悪の匂い。
その匂いが部屋にこびりついていた。
キッチンの換気扇を回して、窓を開けて、重曹と水を合わせたふきんで机を拭いて、コンロも拭いて。。。
でも、やっぱり匂いは消えなかった。ファブリーズもしたのに!
「匂いが消えないんだよねぇ」
そう独り言をぼやいたら、ふと目に飛び込んできたのはクッションだった。
これか!
天啓のように何かが貫かれた私は慌ててクッションカバーもクッションも洗濯機へ放り込んでセットした。念入りにファブリーズ2回目も忘れずに。
「ピーピーピーピー」
回し終わった合図を送る洗濯機の音に導かれて洗面所へやってくる。
洗剤で洗いおわった洗濯物たちは石鹸のいい香りをまとって私の手元へやってきた。一つ一つ丁寧にしわを伸ばしながら、ぱぱぱっと干していく。
さっき目があったカバーやらクッションやらが次々と日のあたるベランダに並べられていった。ふうっと一息入れたら、今度はふっと近くのバジルが香った。
心地よく揺れる洗濯物とハーブたち。
いつか自家栽培したハーブで消臭剤も作ろうと心に決めた秋晴れの日だった。

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