【エッセイ】 配る
寒くなった途端に、冷たいものが飲めなくなった。
あれだけ氷を入れてグラスに冷蔵庫の飲み物を注いでいたというのに、今やケトルでお湯を沸かす日々。木々から木の葉が舞い降りて飜ると同時に、冷水から白湯へと、グラスからマグカップへと、半袖から長袖へ変わっていく。あっという間に、寒さが配られたようだった。
何千年前もきっと、変わらない。
その境目が、何年経ったとしても見えなくて、煩わしく感じることもあるけれど、それでも道ゆく人を眺めているお地蔵様は、にっこりと微笑みながら見届けている。