夏川紫衣

階段と本が好きなシカ🔹エッセイや短編小説を書きます🔹見ていただけたら嬉しいです

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  • To live is to think

    生きるためにことばを。個人的に読み進めた本の中から、あなたのこころへお届けします。

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面白かった本 2023

早いもので1年が終わってしまい、気がつけば2024年も残り10ヶ月となろうとしていますがいかがお過ごしでしょうか。 毎年面白かった本を掲載しておりましたが、今年はすっかりバタバタして掲載できておりませんでした。ごめんなさい。 今更にはなりますが、以下面白かった本をご紹介します。 昨年の記事はこちらになります それでは、2023年版を紹介していきたいと思います! 1冊目はこちら 今まで生きてきた中で幾度となく誰かに「面白いから読みな」と言われ、人に言われると読まされている

    • 【エッセイ】 配る

      寒くなった途端に、冷たいものが飲めなくなった。 あれだけ氷を入れてグラスに冷蔵庫の飲み物を注いでいたというのに、今やケトルでお湯を沸かす日々。木々から木の葉が舞い降りて飜ると同時に、冷水から白湯へと、グラスからマグカップへと、半袖から長袖へ変わっていく。あっという間に、寒さが配られたようだった。 何千年前もきっと、変わらない。 その境目が、何年経ったとしても見えなくて、煩わしく感じることもあるけれど、それでも道ゆく人を眺めているお地蔵様は、にっこりと微笑みながら見届けている。

      • 【小説】 自分

        絶望した世界の淵から下を見ると、落ちていくだけの穴がある。 上を見ても、何もなくて、ただ下に大きな黒々とした穴が空いているようにそこは見えた。 自分の視野が狭くなればなるほど、下しか見えなくなっていき、次第にそれが答えかのように私を飲み込もうとする。 「足元」を見ていたはずなのに、足元より奥の深淵が深く、闇の如く押し寄せる感覚が、消えない。 きっと、誰しもが向き合うことになる絶望のような心の暗闇。 そういったものが今、蔓延り過ぎている。 「誰かが言ったから良いと思った」 と

        • 【小説】 書く

          「この前読んだ新刊、どうだった?」 席につくなり覗き込んで聞いてきたマホは息を弾ませて聞く。 「よかったよーとても柔らかい感じがして、マホが好きそうな感じがした」 「でしょでしょ!」 「後半の展開には正直驚いたかなー」 「おお、お目が高い。そこがあの新刊の面白さよねーほんと、こういう話ができる友達がいてよかったってつくづく思うわー」 「私も」 そう言って笑った。 少し涼しくなってきたばかりの、秋の初めのことである。 私とマホは中学からの幼馴染と言ってもいい関係で、一度同じク

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        面白かった本 2023

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        • To live is to think
          1本
          ¥150

        記事

          【小説】 いずれまた

          「マツさー演劇嫌いだと思うよ?」 そう先輩に言われたのは、ちょうどどこかの仕込みをしている時だったかと思う。外部で公演をすることになって大きな体育館を借りた時の仕込み時だった。周りは表の舞台を作りに出ていって、楽屋には私と先輩しかいない。 「え?」 きょとんとする私を他所に、先輩は続ける。 「だってマツ、楽しそうじゃないもんなー」 「そう見えますか..?」 「うん、少なくとも俺にはそう見える」 はっきりと断言されてしまい、戸惑う私は咄嗟にまた、言葉を続ける。 「..ちょっと疲

          【小説】 いずれまた

          【エッセイ】 答え

          14年前に書いた日記が引き出しの奥から出てきた。 それはさながらタイムカプセルのようなもので、当時の忌々しい記憶が事細かく記された呪物のようなものだった。状況も説明されていて、その上で自分自身が感じた悲しい気持ちと苦しい気持ちが全て、詰め込まれている。 14年前だけでなく、18年前のものもあって中々に興味深い。その時も相変わらず、悲しくて苦しんでいた私がいて、辛かったらしい。ページを捲るごとに書いた文字が少し大人びたりして年齢を重ねたことを知る。 正直、読んだ瞬間思わず笑って

          【エッセイ】 答え

          【小説】 紅茶

          ホットティーを飲みたくなったら秋だと、勝手に思い込んでいる節がある。 引き出しの中に仕舞われていたティーパックを取り出し、コップにセットするだけで気分は浮かれる。まだ序の口なのに、勝手に頭の中でレコードをセットして音楽を流してしまったりして。 ケトルのお湯が沸いた合図がしたら、そっとコップへお湯を注ぐ。 部屋いっぱいに広がったアールグレイの香りが豊かで、秋めいている。 やはり初めの紅茶はアールグレイでないと。 これから徐々にアップルやはちみつ系の甘いものを試して、最後は睡眠効

          【小説】 紅茶

          【小説】 ブランコ

          「ブランコで一回転したことあるよ!」 そう彼女は大見栄を切って私に言い放った。 「すごいねー!」 「でも今日はうまくできないから、ただ漕ぐだけにしとく」 そう言って、彼女はブランコを1回転しそうなほど漕いだ。振り幅が120度くらい行っていた気がする。ちょうど、この前数学の授業でもらった分度器を透かせて空と公園の木々が映った。 「とうッ!」 掛け声と共に彼女は手を振り解き、ブランコの周りを囲う柵よりも遠くへとジャンプした。まるで、少年ジャンプの表紙絵のようなジャンピング。カンマ

          【小説】 ブランコ

          【小説】 趣味:読書

          「趣味はなんですか」 そう問われたら、私は真っ先に読書ですと答える。 すると、8割ほどは嘲笑気味にそうですか、と答えて終わり。 このやり取りの、なんと意味のないものかと、毎度のことながら思う。 相手の趣味が自分の趣味と合致しているかどうかの答え合わせがしたいだけの問い。ただ、相手が喋りたいだけの壁を見つけるためだけの言葉。 そして最後には合致していないとわかるや否や、侮蔑。 読書ってそんなに軽蔑されてましたっけ? あれだけ小学生の頃に「読書感想文」と題された宿題を出されたり、

          【小説】 趣味:読書

          【小説】 ならずもの

          どうしても、譲れない線がある。 その線を越えてこちら側へやってくる者が、ならず者がこの世には存在する。 大きく踏み込んで切り込んでくるし、マシンガンのように捲し立てる時もある。息継ぎする暇も与えないほどの自分勝手な傲慢さ。お前は自分より下だと分からせてあげているのと言わんばかりの罵声。全て、自分自身に自信がないからそういった行動に出るのだよとどこかのコラムは書いている。 だから、相手にするだけ無駄なのだとも。 それでも、その場に居合わせてしまった自分はどのように切り返すのがい

          【小説】 ならずもの

          【小説】 後日談

          「何も問題はないですね」 そう言われて私はホッと胸を撫で下ろす。 時計の針は15時を過ぎて、あちらこちらでバタバタと移動する足音が聞こえる。病院内は静かだと言いつつも、やはり裏側は大変そうだった。 「そうですか、わかりました」 「また問題がありましたら、何なりとおっしゃってください」 「はい、ありがとうございました」 そう伝えると、診察室を後にした。 何も問題はない、か。 あれだけの出来事がありながら何もないだなんて、不思議だ。 私はまた、忘れてしまっているような気がして怖い

          【小説】 後日談

          【小説】 忘却

          ふと、過去から声が聞こえてくる。 「もっと頑張りなさいよ」 「あんたならできる、信じてる」 「どうしてこんなこともできないの!?」 「どうせ知らないだろうけれど」 「こんなことも知らないで」 「ちゃんとしろって言ってるの」 振り返れば、罵声ばかりの日々だったなぁと改めて思う。 それもこれもみんな「あなたのため」という大義名分の下で。 「お母さん、心配だったの」 心配なら何を言ってもいいのだろうか。 「あなたが困らないようにしたかったの」 自分が鬱憤を晴らしたかっただけなのでは

          【小説】 忘却

          【小説】 look

          「あら…」 と会った瞬間言葉に詰まる母を見るのは久しぶりだった。 思えば目が合ったのはこの時だけだった。 「髪切ったの…?」 「うん」 「いいじゃない…芸能人みたいw」 「もうまとめるの面倒でさー伸ばせばよかったーなんて思ったりもするけどね」 「あーそうそう、逃げ恥の人みたい」 少し間をおいて、置き換えた芸能人の名前が出てきた。きっと、喉元まで出ていたのは違う芸人の名前だと察知してしまったとしても、知らないフリ。わからないフリ。 「そう?」 「それでね、この前お母さん同士で会

          【小説】 look

          【エッセイ】 掃除

          随分と久しぶりの投稿になってしまいました。 夏の暑さが続くこの頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。 私はベランダで育てていた野菜がみるみるうちに水分不足を訴えかけているのを見て、慌てて水やりを強化しているところになります。 私は最近、漸く重い腰を上げて取り組んでいることがあります。 それは、こびりついた自分の「固定観念」の掃除です。 残念ながら、齢25にしても早くもこびりついて離れない概念というものが存在します。思考の癖、と言いましょうか。A=Bのような方程式を思い込みによっ

          【エッセイ】 掃除

          【小説】 苦しみよ、さようなら

          悲しみがこんにちはと言ってやってくるなら、苦しみを見送りたい。 声を出してしっかりと「さようなら」したい。 後ろ髪引かれるさようならではなくて、「決別」という単語で締め括れるくらいの潔いさようならがいい。 私ならそうする。 そうしたい。 「そうさせて」 はっと目線を上げると、祖母と眼が合う。 「え?」 「そうさせてちょうだい。私がそうしたいのだから」 祖母はよくそう言った。 私が選ぶのが遅くても急かすことなく、私が選びたい時間をゆっくりと相談して決めた。そして、決まって私が申

          【小説】 苦しみよ、さようなら

          【エッセイ】 気分転換

          話が全くと言っていいほど、まとまらない。 どうしたものか、と不思議に思って、逆立ちしてみたが何も変わらなかった。 普通の6畳ワンルームで逆立ちをする私が鏡に映った時に気づいたことは腹が出てること。変化といえば、それくらい。他には.. 二の腕が前より大きくなっただとか、髪が伸びてきただとか。 あら、意外とあるじゃない変化が。 悪い方ばかりに目が入ってしまうけれども。それでも.. 「中身」は相変わらず、中学生の時と変わらない。だからこそ、話がまとまらないのだが。 逆立ちしても変わ

          【エッセイ】 気分転換