本の紹介32 戦争論より〜なぜ戦争は、いつまでも終わらないのか?
5月8日は、世界的には
「第二次世界大戦」が終わった日でした。
「ヨーロッパ戦勝記念日」、
「VEデー」と呼ばれる日ですね。
1945年の5月8日、
すでにドイツではヒトラーが自害していましたが、
権限を移譲された最高司令官同士が
「降伏文書」に調印することで、
正式にヨーロッパでの戦争が終わりました。
ただし太平洋方面では、日本はまだ8月まで
戦争を継続していました。
だから日本人から見れば、
この日はあまりピンと来ませんよね。
いずれにしろ「戦争の終わらせ方」というのは、
簡単ではないことです。
ガザ地区では、何度も交渉をしながら、
決裂を繰り返しています。
さらにいえば、はるか昔からこの地域では、
何度も復讐し、復讐されてという
恨みつらみの戦いが繰り返されている。
つまり、戦争の「終わらせ方」が、
いつまでもうまくいかないわけです。
クラウゼヴィッツの『戦争論』には、
「戦争の『情動的な部分』を無視してはいけない」
という記述があります。
敗戦する側は、当然ながら勝った側に
「憎しみの感情」を抱く。
これをクリアしないと、
戦争が再び繰り返されることになるよ……と、
大戦のはるか前から
クラウゼヴィッツは警告していました。
実際、第一世界大戦でヨーロッパは、
この「情動的な部分」を無視して失敗したわけです。
敗戦国となったドイツから様々なものを奪い、
経済的に最悪な状況にしたから、
ヒトラーのナチスが台頭する土台をつくった。
彼はまさしく、ドイツ人が持っていた「憎しみ」を
利用してリーダーになったわけですね。
そうならないように配慮したのが第二次大戦の終結
……だったのですが、
そう問題は簡単ではありません。
勝った連合国側が意識したのは
「みんな、ヒトラーに騙されて、
戦争をしちゃったんだね」という
一種の「物語」を受け入れてもらうことだったのですが、
そうなるまでドイツは、東西に分断された
長い歴史を歩むことになります。
一方で日本の場合は、
昭和天皇が継続して国の頂点に立ち、
「いろいろ不満はあれど、
負けたんだから、勝戦国のルールに従おう」
という空気をつくりました。
まあ、長いこと国内で戦争を繰り返し、
「勝った者に負けた者が支配される」
という文化が
すでにあったことも大きかったかもしれませんね。
そういう形で
イスラエルが戦争を終わらせられるのか……といえば、
民間人の犠牲を出し続けている現状で、
かなり難しいでしょう。
ただ、各国でのデモが象徴するように、
世界は決して勝者の味方ばかりではない。
「いい戦争の終わらせ方」は、
これから世界中の賢者が皆で考えていくべき
大きな課題なのだと思います。