季語というコミュニケーションツール
入門書には「日常の中の些細な感動を句にしてみましょう」といったスタンスのものも少なくなく、この場合、感動した自己は日常の自己から一歩も「虚」へと離れることがないまま、その感動を物語ってしまうことになるので、じつは上達にはほとんど結びつかない。その自己を最低限、他者性へと開くのが「季語・季題を入れること」という約束事なのである。俳句の前身は俳諧体の連歌における最初の句「発句」であり、発句の詠み手が自分の話しかしなかったら文字通り二の句が継げなくなって、脇句以下が続かなくなってし