【辺野古新基地建設ゴリ押しと安倍晋三首相辞任表明。二つの出来事に共通する「悔しさ」について】
※2020年9月1日、沖縄在住ノンフィクションライター渡瀬夏彦のnoteデビュー記事です。ほんのお気持ちで構いませんので、サポートくだされば幸いです。
いつもの習慣で、今朝(9月1日朝)も6時半ぐらいに、間違いだらけの辺野古新基地建設ゴリ押し工事に携わる罪深き土砂運搬船団(ガット船)21隻の位置を、東京都下某所にいながら、船舶位置情報アプリで確かめた。もちろん台風9号が沖縄に最接近しており、県内各所に大雨・暴風・波浪などの警報が出ている。罪深き船団も、8号、9号と連続襲来の台風対策で、名護西海岸の羽地内海と鹿児島県瀬戸内町古仁屋港付近の内海(奄美大島と加計呂麻島の間)の二手に分かれ、避難を続けているに決まっている。しかし確かめないと、なんだか気分が落ち着かない。
実際にチェックしてみると、やはり21隻のガット船は、台風8号接近に備えて避難した8月22日以来、ずーっと同じ位置にいることがわかった。
これまでFacebookなどでは何度か列挙しているが、初めてのnoteだから、ここで21隻すべての船名と船籍港を紹介しておこう。ちなみに、21隻のうち沖縄の船は3隻のみで、すなわち18隻が県外から稼ぎに来ている。
↑ここが羽地内海。船舶位置情報アプリ「FindShip」より。
↑本日9月1日現在、羽地内海に停泊しているのが、北から順に「神峰(広島・大崎上島)」「第百三十六伊勢丸(千葉・館山)」「寿鷲丸(広島・呉)」「marumasa1号(沖縄・金武)」「第八そうほう丸(大阪)」「marumasa3号(沖縄・金武)」「marumasa2号(沖縄・金武)」「松龍丸(北九州)」「第八藤進(長崎)」「第二十八旭丸(福井・敦賀)」の10隻。
↑鹿児島県瀬戸内町古仁屋付近の内海(奄美大島と加計呂麻島の間)に避難しているのは、「清明(広島・大崎上島)」「栄雄丸(徳島・松茂)」「第八高砂丸(大阪)」「美鍛丸(香川・丸亀)」「第八丸喜丸(長崎)」「聖嶺(広島・大崎上島)」「聖祐(広島・大崎上島)」「聖嘉(広島・大崎上島)」「かいおう丸(大阪)」「進朋(広島・呉市豊町)」「國喜18(高知・須崎)」の11隻。船舶位置情報アプリ「MarineTraffic」より。
わたしが毎日のように罪深き土砂運搬船団の動きと位置を詳しくチェックするようになったのは、「今年は沖縄を離れる時間が多くなりそうだ」という予測ができた5月頃からだった。沖縄を離れているときでも、間違いだらけの、ひたすら莫大な税金無駄遣いを続けるだけの、辺野古新基地建設ゴリ押し工事&関連作業の許し難さを、なんとか少しでも可視化し続けたい。そう思って始めたのが、土砂運搬船1隻ずつの動きを細かく追うことだった。最初は不慣れだった船舶位置情報アプリの扱いも、今ではどうにか使えるようになってきた。ほぼ毎日動きを追いつつFacebookに報告文を書きながら、最後に必ずこんな文章を添えるようになった。
…… …… ……
毎日でも繰り返し書こう。
船団の乗組員一人ひとりには、何の恨みもないが、あなたたちは、歴史によって断罪されることが明白な、愚かな罪深い仕事をさせられている。
生活のためだから仕方ない、という言い分は、結局あなたたちの魂を傷め続ける。
立ち止まり、引き返す勇気が必要だ。
その勇気が求められているのは、もちろんあなたたちだけではない。
一番悪いのは安倍官邸や防衛省・外務省だが、国土交通省も、さらには農水省や環境省までが、この愚かな事業に加担させられているというほかない惨状だ。
現場で働かされている作業員、ダンプカーやミキサー車の運転手、重機のオペレーター、海上・陸上の民間警備員、防衛局に雇われた格好で自らの漁船を警戒船として現場に出している漁師、海上保安官、機動隊員を含む警察官…、すべての関係者の「罪」は重い。
そして、次のこともまた、毎日でも強調しなければならない。
様々な観点からみて間違いだらけの、ただただ莫大な税金無駄遣いを続けるだけの、このデタラメな公共事業=辺野古新基地建設は、全国の納税者の良識と怒りで、一刻も早く止めなくちゃ駄目だ。必ず止めよう!
…… …… ……
殊に大浦湾の深場に超軟弱地盤が発覚してからというもの、新基地建設そのものの頓挫が確実視されているにもかかわらず、埋めやすい辺野古側の浅瀬だけでも埋め立ててしまえ、と言わんばかりに、利権配分完遂そのものが目的化してしまった悲惨な公共工事である。ゴリ押し工事が続いていること自体が異常なのである。
そして、いま、その辺野古新基地建設ゴリ押し工事は止まっている。
もちろん台風のおかげだ。民意の力によってではないから、悔しい。
台風は、農漁業はじめ、人びとの仕事や生活に甚大な被害をもたらす。しかし一方では、海水を撹拌して水温を調節し、サンゴの白化を防いだり、海からミネラルを巻き上げ陸地に散布して、土壌を豊かにするなどの恩恵も与えてくれる。島々の人の暮らしに及ぼす被害は少ないほうが良いに決まっているが、単なる悪者ではないことも確かだ。
語弊を恐れずに言えば、わたしなどは、辺野古新基地や宮古島・石垣島の自衛隊新基地建設の強行工事をストップさせるためにだけ、年に何度でも台風に来てほしい、といつも願っているぐらいだ。
だがそれにしても、民意によって、道理と正義によって、この愚かな新基地建設がストップしているわけではないことが、本当に悔しい。
そんな台風の季節に、突然、安倍晋三氏が総理大臣を辞任すると発表した。ついに辞めるのか、万歳だ、なんて、とんでもない。あるいは、またも病気で辞めるとはお気の毒に、なんぞと同情ばかりしている場合でもない。記者会見での本人による病状の説明自体が嘘だらけだったという疑いが早くも生じているのだ。
これまた、悔しい。
↑この3枚の写真は、8月29日のTBS「報道特集」から。わたしたちは、気を弛めるわけにはいかない。
わたしたちが選挙によって叩きのめし、懲らしめ、彼を政権の座から追放したわけではないから、非常に悔しいのだ。
その「悔しさ」を忘るまい。悔しさをしっかりと抱きしめて出発しよう。そうでなければ、これからも続きかねない「アベ政治」的なるものを、本気で打ち負かすことはできない。
相手側の理不尽さを、権力の私物化を、嘘を、誤魔化しを、蛮行を、嘆くだけではなく、わたしたちは己の中の醜さ、弱さと対峙する勇気をも持ちたい。
奇しくも今日9月1日の沖縄は、旧盆のナカヌヒー(中日)。昨日台風9号とともにウヤファーフジ(ご先祖さま)の魂をウンケー(お迎え)し、明日去り行く台風の風に乗っていただくかのように、ウークイ(お送り)する。コロナ禍でご先祖も子孫も少し寂しい旧盆だ。県内各所の自慢のエイサーも、ほとんど中止だ。東京では、関東大震災の朝鮮人犠牲者の追悼集会も規模縮小を余儀なくされた。
いまわたしたちが大切にすべきものは何か。
物書きの端くれとして、この時代に何を書かねばならんのか。読者の皆さんとともに、模索していきたい。「微力ではあっても無力ではない」「沖縄からは日本が見える、世界が見える」。それを座右の銘として。忌憚なきご意見と少しのご支援を頂戴できれば幸いである。