『夏葉社日記』を書いて (400字)
『夏葉社日記』を執筆して半年経つが、あれから一度も読み返していない。どうにも照れくさく、いまだにページをめくることができない。編集志望のぼくが、まさか自分で本を書くとは思わなかったのだ。それでも本にしたのは、ぼくを救ってくれた夏葉社をみんなに知ってほしかったからだ。
本書はウェブサイトでの連載をもとに加筆修正をおこなった作品であるが、書籍化するにあたってのいちばんの心配事は、縦書きにたえられるかということだった。一度横書きでつくった文章を、いざ縦に組んでみると納得のいくものからは程遠かった。一つひとつのことばを辞書で引き、その意味を確認する。文意は通っているか、てにをはに誤りはないか、だれかを不用意に傷つけないか、噓はないか。ひとつの項を直し終え、そのたびに全体として成り立つかをチェックした。そんなふうに推敲していると、あっという間に締切が迫ってくる。結局、デザイナーと校正者、そして印刷所に迷惑をかけながら(ときにお叱りを受けながら)、この本を書き上げることになった。
もちろん自信はある。だけどそれは全力を尽くしたという意味であって、この本がいい本である保証にはならない。その点は、みなさんの判断に委ねたい。
2024年8月末
久我山の自宅にて
秋 峰善
(奈良の本屋とほんさんに依頼されて)