牛たちと共に未来を描く。ありがとう牧場の放牧物語
北海道足寄(あしょろ)町のありがとう牧場へ行ってきました。
前日まで曇り(雨)の天気予報だったのに、当日はなんと晴れ🌞
お天気にも恵まれ、この大自然のなか放牧される牛たちをみながら、代表の吉川友二さんのお話を伺ってきました。
自然をまもる。きっかけは「怒りと悲しみ」だった。
牛は人が食べられない草を食べ、人が食べられる乳や肉をつくる
「牛を叩いたりしないから人を怖がらないでしょう」
そう語りながら、牧場でくつろぐ牛たちのなかをぐんぐんっと進む吉川さん。
本当に牛たちが怖がりません。私たちが牛たちに観察されている気分になってきます。(どきどき)
長野県上田市で育った吉川さんは、子供の頃の自然の遊び場がどんどん破壊されていく日本の社会に「怒りと悲しみ」を抱かれていたそうです。
そこから「将来は自然保護の仕事か農業がしたい」と考え、北海道の大学に進学され、卒業後は4年間、北海道各地の牧場を訪ね歩いたとか。
酪農場で働いたことで吉川さんが感じたこと。
それは、
「牛に穀物飼料をたくさん与えている。牛の価値は人間が食べられない草を人間の食べられる乳・肉に変えることのはず。そしてなにより牛は草食動物なのに。」
という疑問だったそうです。
自然をまもりたい吉川さんが、環境負荷を与える酪農産業に導かれた意味とは
そんななか、ニュージーランドでは穀物飼料を一切与えずに酪農をしていることを知り、吉川さんはニュージーランドまで行かれたそうです。
ニュージーランドの牧草はまるで堆肥の上に生えているようだったとか。
「放牧によりできる土壌の力によって、穀物なしの酪農が可能となっている。」ということを実感された吉川さん。
放牧にはたくさんのメリットがあるそうです。
穀物飼料を最小限に抑えることができるのでコストがかからない。
牛たちのストレスが減り長生きするので、出産数も増える。そのため次の牛と入れ替える回数も減らすことができる。(一頭あたりの生涯乳量を増やすことができる)
牛たちが病気になりにくく、お世話がほとんどいらない
牧草は牛たちの糞尿がそのまま堆肥となるので、牧草の手入れ作業もかからない
「糞尿をそのまま堆肥にしない場合は、糞尿の処理や、河川に廃棄するなど、生産者側への負担や環境に対して大きな負荷もかけてしまいます。
未来の酪農を変え、環境を良くするために放牧の普及をすることが、酪農産業に導かれた意味だと思っています」と語ってくださいました。
放牧とともに育む地域の未来。牧場を支える一歩
地域オリジナルの放牧風景の魅力
「酪農家は、1998年から2018年までの20年間で1日2戸※が廃業しています」(吉川さん)
※一般社団法人中央酪農会議 資料より
私はこの話を聞き、「〇〇牧場の牛乳」といった日本の牛乳が、将来消えてしまうのではないか・・と不安になりました。
日本では少子化が問題となっていますが、世界的には人口が100億突破すると言われており、食糧不足が深刻な問題にもなっています。
そんななかで、輸入穀物に9割頼っているといわれる日本の畜産。今後も安定的に輸入ができるのだろうか・・といった漠然とした不安も感じました。
「牛たちは自分で自分の食料を生産する牧草地を作り出して永遠に牧草地を持続させてくれる。
そして放牧地は、果樹園や河川敷、スキー場を利用するなど、放牧でつくられる景観が土地固有のものとなる。
未利用地や食料残差物を酪農によって利用し、良質なタンパク質やエネルギーを生み出す力が日本にはある」(吉川さん)
吉川さんの思いを知り、全ての牧場が放牧に切り替えることはできなくても、普及していくことは必要だと感じました。
視察をおえてー消費者として「選ぶ」ことが何よりもの貢献となる
吉川さんは、日本の酪農を変えるためには消費者にまず現状を知ってもらうことが必要だとおっしゃいました。
私もここまで「放牧」にこだわるきっかけとなったのは、スーパーでみかけた「放牧卵」でした。
「放牧卵って書いてあるということは、放牧じゃない卵はどんな環境なのだろう?」
そこから知ったことは畜産動物への福祉(アニマルウェルフェア)でした。
しかし更に深く調べると、動物のためだけではなく人や環境に良い循環ができるんだ、ということを知りました。
毎日ではないですが、「放牧」の商品を購入することが増えました。
生産者さんのストーリーを知り、牧場の景色を思いながらいただくことで、より味を楽しむことができると実感しています。
購入することは何よりも生産者さんの応援に繋がります。
SDGsとか持続可能とか、言葉は色々あるけれど、私たちは購入するだけでそれらに貢献することできるのです。
「牧場から食を知る」
これからも一消費者として、伝えていきたいと思います。
ありがとう牧場の吉川さん、牛さんたち、ご一緒いただいた皆さま、ありがとうございました。