木犀の花 『花の記憶 第九回』
長い夏が続き、お隣さんと「まだ半袖が手放せない」とお喋りしていたら、いつの間にか空の色が青く澄んできて、辺りは秋の気配。ご近所さんの軒先には可愛らしい紫檀色(したんいろ)の小菊が迎えられました。
気温が下がり始めた朝、上2人の子の幼稚園の送迎で玄関を開けると、突然の甘く懐かしい香り。
「いい匂い〜。」「くしゃーい。」と言い合ってかけ出すこどもたち。隣で頭からすってんころりんと1歳児。泣きだした子を片腕に納め、手を繋いで歩く幼稚園帽2人の背中越しに金木犀の橙色を見つけ、気持ちま