ため息ついたら、ラジオ
初めてお祈りメールを受け取った。
内容を確認して、すぐ消した。
ため息をつくのも悔しい。でも抑えられなかった。
全然いきたい会社じゃなかったしいいや、と心の中で思っていても、ちょっと辛い。
時間を返せ。
そして思った。もしこれが志望度が高い会社だったら、ため息どころですんだだろうか。
そう考えると怖い。
怖くて、とりあえずラジオを聴こうと思いradikoを立ち上げた。
いつも聴いている、オールナイトニッポンやジャンク、色々な深夜ラジオを聴いてみた。
だめだ、余計不安だ。
いつもは何にも考えずに笑って聴けるのに、今はどうしても、この人達を成功者だと思ってしまう。
計算されたおふざけや、放送できるように手加減された悪口。これが出来るのはやっぱり優秀な人達なんだわ、と思って、辛くなる。
ほんとにどうしようもない。
暗い気持ちになるので深夜ラジオはやめて、ふとリアルタイムのラジオ番組を流してみた。すると、
「ありがとう、ありがとう」
いきなりそんな言葉が飛び込んできた。
それは懐かしいメロディだった。
小学生の頃よく聴いていた、『ありがとう浜村淳です』のオープニングが流れていたのだ。
まだ放送していたのかと、驚いた。
トランペットのパフパフした音や、明るいコーラスを聴いた瞬間、すこし心が軽くなった。
パーソナリティである浜村淳さんの声は、オープニングでは掠れていて、いかにもお爺さんの声だった。
さすがの浜村さんも、昔のままの声を保つのは難しいのか…と思いながら聴いていると、だんだんと滑らかな声へと変化していく。
すると、普段の自分なら、絶対に興味を持たないような、プロ野球の話題もなぜか聴いてしまった。
私は、笑わせてほしいわけではなく、安心したかったのだ。
浜村淳さんの、あの優しい声が聴きたかったのだ。
『ありがとう浜村淳』は、なんと始まってから40年を超えるらしい。浜村さんも、最近は病気と闘いながら、パーソナリティを続けていると知った。
私が小学生の頃、行きつけの美容院では必ず『ありがとう浜村淳です』が流れていた。
甘い整髪料の香りが染み付いた美容院は、決してオシャレな店ではなかった。しかし、シャンプーの上手なおばちゃんがいつも優しく出迎えてくれた。ラジオを聴きながらカットされていると、心地よくていつも眠くなっていた。
そして完成した少し昭和っぽいショートカットを触りながら、一人で歩いて帰るのが好きだった。
あの頃の私は当然、今の私と同じ。
それを忘れていたことを、ため息が教えてくれたのかもしれない。
天気予報を読み上げるアナウンサーに、「はい」「あー、そうなんですか」と優しく相槌をうつパーソナリティなんて、浜村淳さん以外、私は知らない。
あの頃と殆どなんにも変わっていないこの番組が、わたしにはある。
またため息が出たとしても、わたしには、ラジオがついてる。
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