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遺品整理。母が残していたメッセージ

「お母さんが死んだら、家の中をちゃんと綺麗にするのよ。もしかしたらお宝が見つかるかもしれない」


小さい子がいたずらする時のような笑みを浮かべて、
生前の母がそう言った。

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誰もいない実家に帰るのは、もうこれで3回目。


おかえりの聞こえない玄関。
生活感のないリビング。
だんだんと硬くなっていくドアノブ。



私が知るなかで、

世界で1番暖かい場所だったはずの我が実家は、

世界で1番寒いのではないかと錯覚するくらい、

冷たく冷え切っていた。



母が亡くなってはや、8ヶ月。

遺品整理のために、
実家のある広島にはちょくちょく帰っている。



今回は、泣かずに済んだ。

誰もいない実家に帰っても、涙は出てこなかった。

仏壇の前で手を合わせても、
遺品整理をしていても、
母の物をたくさん捨てても。


不思議と涙は出てこなかった。


これが時間の力か…!

そう気を抜いたのが悪かったのだろうか。



帰りのバスに乗った瞬間、
やっぱりダメで…

いま、鼻水をズルズル
いわせている。

一緒にバス乗っている人
ごめんなさい、、、笑


これは、そのバスの中で、
書いています。


実家に帰るのが憂鬱だった

※写真はイメージです

母が亡くなってから
兄からLINEや電話がよく来るようになった。


「1月に家の整理をします。いつ帰ってこれる?」


そうか…
遺品整理しなきゃだよな、、


両親がいない私たちは、
実家にはもう誰も住んではいない。

ずっとそのままにしておく訳にはいかないので、
少しずつ整理をしていた。


「帰りたくないなぁ」


正直なところ、私は実家に帰るのがすごく憂鬱だった。

なぜなら、思い出すから。



場所のもつ力はすごい。

家に帰ると、実家のにおいがするし、
家具はそのままだし、
なんだか声が聞こえてきそうな気がするし。


変わったのは、もともとあった父の仏壇の隣に、
母の写真が並んでいるくらい。

それを見るのが嫌だった。


誰もいない実家に帰って、
家中の電気を自分1人でつけるのが嫌だった。



まぁ、兄もいるし、おばあちゃん達も来てくれるし…

たったの2日間だけだから、いっか。


そんな思いで広島行きのバスに乗った。

遺品整理

※写真はイメージです

さて、ここからが本題。

家中にある、母の遺品整理。

洋服に、バッグ、靴、アクセサリー、小物、、、、

オシャレ好きで収納上手な母は、

「絶対こんなに持ってても使わんやろ!」

というくらい大量の持ち物がある。


スーツケース1つで旅暮らししている私の
何十倍もの量だ。

家の中のクローゼット2つ分、タンス3つ分、
さらに屋根裏の衣装ケース10個以上。

どれも驚くほど綺麗に整理整頓されているので、
「お店かな?」と思うくらいだ。

※写真はイメージです


ここで一つ一つに想いを馳せながら、
仕分け作業をしていくと、日が暮れてしまう。


娘である私が着ないor
残しておいても使いそうにないものは、
ちゃっちゃと捨てていく。


「私がもらう、残しておく、捨てる」

この意思決定を10秒に1回のペースで行う。



単純作業にみえるけれど、
仕事よりも頭を使うし、疲れる作業。

「あっ、この服、授業参観の時によく着てたな」
「これ、一緒にデパートでお買い物したときに買ったやつだ」


そんなことが1ミリでも頭に浮かぶと、
毎分6回の意思決定スピードが落ちてしまうため、
心を無にして行う。

こうして、服だけでも40リットルのビニール袋が
8個ほど積み上がった。

遺品整理をする時のコツ

ここで私が見つけた遺品整理のコツを紹介する。

別に遺品整理のコツなんて調べる人も、
知りたいと思う人もいないかもしれないが…

いつか来る未来のために、読んでおくと
ちょっとだけ役に立つかもしれない

ので、書いておく。

その1、なるべく大人数でする

親戚などを呼んで大人数で一気にやった方がいい。

1人だと、本当に進まない。
気が重い。

し、後で揉め事になるのを防ぐため。

私の親戚は、陽気な人が多い。
(私が言うのもなんだが)


私が捨てると判断したゴミ袋の中から服を取り出し、

「これ、いる人ーー?」

「これ、近所の〇〇さんが欲しいって言いそうよ!」
「これなら私もまだ着れる!」
「これ、ばあちゃんがデイサービス行く時のマフラーにええがね」


私が2階でせっせと仕分け作業をしている間に、
1階リビングでは、まるで初売りの福袋で気に入らなかった服を
交換し合う女子のような交換合戦が繰り広げられていた。


その2、捨て難いものは、ありがとうと言って抱き締めてから捨てる

これは、断捨離が上手な友達から教えてもらった。


捨てたいけど、捨てるのが辛い時は、

「ありがとうって言って抱き締めてから捨てるといいよ」


この方法は、遺品整理だけでなく、
自分のモノを捨てる時にも効果的。

思い出がいっぱいあって汚いんだけど、
捨てなきゃならないときは、
写真を撮っておくのも良いと思う。

その3、タンスの引き出し一段で十分

母の寝室のクローゼットを整理していると、
13年前に亡くなった父の遺品が見つかった。

残っていたのは、タンスの引き出し一段のみ。


仕事で着ていた作業服
家紋の入ったネクタイ
柔道をやっていた時の黒帯
オシャレなスカーフ
クリーニングされた服が数着。


母が残した父の最後の遺品。

これらだけは、
どうやっても捨てられなかったのだろう。


母はどんな気持ちで、
父の遺品整理をしたのだろうか。

父が亡くなった時、まだ小学生だった私は、
母が遺品整理していた姿をあまり知らない。

ここまで少なくするのに、
何年かかったのだろうか。

男の人はもともと持ち物が少ないから、
それほどだったのかもしれないが…

綺麗に整ったタンスの引き出しからは、
色々なことが連想された。


私は、そのタンスの引き出しには、
何一つ手をつけられなかった。

しかし、いつかは、この実家を手放すときが来る。


「これくらいは、お母さんのモノも残して、
一緒に持っていってね」

そんなメッセージに私は聞こえた。


帰り、兄と2人きりの車内

※写真はイメージです

帰りは駅まで兄に送ってもらった。

冒頭でも言ったように、母が亡くなってから、
兄とは頻繁に連絡をとるようになった。

フリーランスの私を心配してくれ、
キャリア面談のような電話がかかってくる時もある。


兄「母さん、父さんが死んだ時、1人でどうやったんだろうな」

私「うん、ほんとすごい…」

兄「まぁ、みんなが経験すること、俺らは人より早かっただけなんよ。ちょっと早すぎるけど」

私「うん…」

兄「菜摘は、子育てする時とか聞きたいこと沢山あったよなぁ」

(うう、、、やめてくれぇ、、、)


そういえば、最近、
こんなふうにnoteに家族のことを書くのを
やめようかなぁと考えていた。

あんまりポジティブな話でもないし、
あえて書く必要はないのかなって思っていた自分がいて。

だけれども、
スマホのメモには溜まっていく一方だった。


私はせっかく「書く」仕事をしていて、
伝えたれる手段を持っている。


なので、やはり

みんなよりも少し早くに経験したことを、
書いて残しておこうと思う。

もちろん、気まぐれではあるが。



広島から東京へのバスは長いけど、
気持ちの切り替えをするには、
ちょうどいい長さだ。

きっと、こういうのを繰り返して、
故人との思い出や思い入れも、
少しずつ薄れていくのであろう。

だからこそ、ここに残しておこうと思う。

今感じていることは、今この一瞬でしか書けない。


書くことこそが、私の財産だ。


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さて、生前の母の言葉

「お母さんが死んだら、家の中をちゃんと綺麗にするのよ。もしかしたらお宝が見つかるかもしれない」

今回お宝は見つかったのだろうか・・・?


(没頭の伏線回収をここでしておく。)


結論、母の言っていたお宝は
今回も見つけることができなかった。

いや、母の思うお宝を、
私が見逃しているだけかもしれないが・・・


私「え!お宝ってなに????」

母「100万円かもしれんね(ニヤ)」


もちろん100万円なんて出てこなかった・・・笑

※私が想像していたイメージ

母は、もしかすると、父の遺品整理の時に100万円のお宝を発見したのかもしれない。(完全の私の妄想です)

それが嬉しくて、自分の遺品整理も「宝探し」と思って楽しんで欲しいというメッセージだったのかも。


ということで、鼻水もおちついたので、寝ます。

最後まで読んでくださり、
ありがとうございました。


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