告白のインパクト

今まで恋愛のようなものはこの歳にしてはたくさん経験してきた方だと思う。

そのなかで、一番心に残る告白は。

中学1年生。

相手はひとつ上の先輩だった。

先輩とはいっても、わたしたちは家が近所で昔からよく知った間柄だった。

彼は近所でも少し目立っていてよく知られていた。

髪の毛が少し長くて後ろでくくっていたりだとか、機械が趣味だったりだとか。
いつもちょっと斜に構えていたりだとか。

個性的で目立つ、覚えやすい感じだったのだ。

わたしと彼はお互いを知っていたけれど特別親しい訳でもなかった。

わたしは学校から帰るとき、よく幼なじみの女の子と帰っていた。ある時、いつものようにその子と二人で歩いていると、先を歩いていた彼と鉢合わせた。

彼は近所の小学生に木の棒でつつかれながらわいわいとからかわれて遊びのターゲットにされてしまっているようだった。

それを見てわたしたちがくすくすと笑うと彼はちょっと気まずそうに「何見てんだよ、助けろよ。」と凄んでいた。

ぜんぜん怖くなかった。

それからその後、なぜか帰り道、彼とよく鉢合わせた。

小学生につつかれていなくても、話してみると意外と話しやすくてわたしたちは少しずつ仲良くなった。

その年頃というのはとにかく恋の話が好きで、そんな話をよくしていた。

彼はちょっと斜に構えつつも、わたしたちの話に乗っていろいろと男子目線な切り口で恋愛の話をするので面白かったけれど、好きな人のことは秘密だといって教えてくれなかった。

その日、わたしはたまたま帰りが一人だった。

天気がよくてぼーっとしながら鼻歌を歌ったりしてだらだらと歩いていたら、突然肩を叩かれた。

後から歩いてきた彼だった。

「なにしてんの、一人で楽しそうに。」

なんだか恥ずかしくなってうるさいうるさいと彼の手を振り払ったけれど、彼はずっとにやにやしていた。

それから二人で歩き出して、とりとめのない話をして、なんの流れだったか忘れたけれど、好きな人の話になった。

結局好きな人はだれなの?今日はわたししかいないんだから教えてくれてもいいじゃん。

いつものようにそんなことを言って彼をつつく。

「俺の好きな人はさ。」

彼はなぜかぴたりと立ち止まってこちらを見つめた。真剣な眼差しにどきっと胸が跳ねる。

誰もいない、高い橋の上だった。遥か下を流れる川の水の音がやけに響く。

え、なんだこれ。なにこの空気。

謎の緊張感が走る。まるでこれは、アレじゃないか。告白されるみたいな。

「俺はお前が、」

彼は目線をちょっと下に反らして。
溜めて、溜めて。

「俺はお前が二番目に好きだ。」

?????

え?なんて?二番目?っていいましたよね?
に、にばんめ?

え、な、なんで顔赤らめて……

は?待って、これ、なに。
いったいどうしろっていうの。

フリーズしたわたしはやっとのことで、棒読みで、ソ,ソウナンダァ…と絞り出した。

いやだって他に何て言えば?

そうして目を点にしたまま、わたしは歩きだし、そのあとどうやって家まで帰ったかよく覚えていない。

いや、わからん!未だにどう返すのが正解だったのかわからん!

あの衝撃たるや。
あれを越えるインパクトを残した告白は未だにない。

あの日の憎たらしいほどの綺麗な空はわたしの思い出に焼き付いている。








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