妊娠14週、「尿もれ」だと思ったのは破水だった
604gと552g、小さく生まれた息子たちの記録(双子が生まれるまで①)です。
破水とは、出産が近い妊婦さんだけに関係することだと思っていた。思い込んでいた。
妊娠14週と4日、何の前触れもなく破水した。
2月中旬ある日の19時50分ごろ、家で仕事をしていたら急に「おしっこ」が漏れた(本当にそう思っていた)。よりによって担当している企画のリモート収録中。あと10分で終わるから、とすぐトイレには行かず、パンツの中に数枚ティッシュを突っ込んだ。
でも、足りない。
第2波も来た。さらに10枚くらい追加し、椅子の上で正座をして骨盤底筋を締められるだけ締めた。それなのに止まらない。筋力が落ちた? さすがにこれはおしっこじゃない?
仕事がどう終わったかは覚えていない。「尿もれ」から20分後、トイレに行ってパンツを下げると、詰め込んだティッシュは茶褐色に染まっていた。
「14週でも破水ってするのかな? 血っぽいのが出た」
半ベソをかきながら、1歳の息子とじゃれ合っている夫に伝えた。夫は困惑していた。おそらく、私以上に破水とはなんぞや、という感じだっただろう。
破水したかもしれないと病院に電話すると、すぐ来るようにと指示された。タクシーの中で「破水」について検索したが、妊娠後期や出産直前の情報がほとんど。「14週 破水」と検索して初めて、週数が浅くても破水する人がいることを知った。
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振り返ってみると、破水はそのときが初めてではなかった。遡ること19時間。深夜1時30分過ぎ、寝ていたらおねしょのような感覚があって目が覚めた。
ちょっとトイレに行きたい気もするけどまぁ大丈夫だろう、と眠りについたもんだから、その時は「トイレに行かなかったことが祟った」くらいのテンションでしかなかった。
よくよく考えてみると、おりものシートでは受け止めきれない量で太ももの付け根まで湿っていた。色はついていなかったし、アンモニア臭もしなかった。ズボンも濡れていたから、夫にバレないようにそそくさと着替えた。完全に漏らしたと思い込んでいて、妊娠中の異常を疑うよりも恥ずかしさでいっぱいだった。
多分、これも破水だったのだと思う。
このとき病院に電話をしていたら、状況は変わっていただろうか。
大事なことだから2回言う。破水は出産間近の妊婦さんだけに起こることではない。いつ、誰にでも、起こる可能性があるそうだ。
なんでこんな重要なことを知らなかったんだろう。
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2回目の(と思われる)破水から50分後、病院に着いて少し待つと看護師さんが迎えに来た。車椅子で。いやいや、歩けますけど……そう思いながらも腰掛けた。破水ってこんなに丁重に扱われるのか。その時点ではまだ破水かどうかわからなかったけど。
向かった先はMFICU(Maternal Fetal Intensive Care Unit)。初めて聞く名前だった。妊婦と胎児の集中治療室らしい。そこにある診察室で、当直の女性医師が診てくれた。最初は下から。普段の診察より時間をかけていた気がする。その時点では「赤ちゃんは元気です」と言われてほっとした。
でも、「破水の傾向がある」と伝えられお腹から超音波検査(エコー)をすると、左側の赤ちゃんにいつもあるはずの空間がなかった。エコー写真では赤ちゃんが浮かんでいて黒く映るはずの場所。画面に見える赤ちゃんは、膜と膜にぴったり挟まれているようだった。
「突然のことでごめんなさいね」
そう一拍置いて、先生は破水していることを告げた。そして、左の子が生きて生まれてくることはない、と続けた。
確かに突然すぎる。そんなことを言われて涙が出ないはずがない。私はこの子たちを産めないんだ……。5日前に診てもらったときには異常なかったのに……。受け入れられるはずがなかった。
医師からは「今病院にいてもできることはない。入院してもいいけど、おうちで安静にしている方がご家族に会えていいんじゃないか」という趣旨の提案をされた。
医師曰く、左の赤ちゃんの心臓が止まって、右の子に影響がないか経過を見てからの判断になるとのことだったが、今後については次の健診日に担当医が診察してから決まるということで、その日は終わった。
なんで破水しちゃったんだろう。
考えても仕方ないのに、その問いばかり出てきた。
家に帰ってから、「エンジェルサウンズ」(胎児超音波心音計)で二人の心音を聞いた。二人とも、元気にドキドキさせている。心臓が止まるのを待つしかないなんて、嘘じゃないかと思った。
こんな状態では何も考えられなくて、上司に伝えて翌日は会社を休むことにした。
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翌朝9時過ぎ、布団に包まっていたらスマホが鳴った。普段なら知らない番号は無視するのに、嫌な予感がして取った。
電話の相手は男性で、医師だった。
破水すると子宮内感染のリスクが高まって母体に影響する恐れがあるので、すぐに入院したほうがいいらしい。
電話を切った後、ベッドの上で声を上げて泣いた。34歳のいい大人が。入院宣告は、絶望以外の何でもなかった。
曖昧なまま先送りにされていた答えが出たようで、感情が爆発したのかもしれない。入院期間は状況次第だけど、2週間くらいらしい。その間に結論が出るのだろうか。
尋常でない声を聞きつけた夫は、何も言わずタオルを渡してくれた。
突然の破水、入院、出産、成長……小さな息子たちとの日々を不定期で書いていきます。
不安で先が見えなかったとき、ブログやSNSにつづられたみなさんの体験談がとても支えになり、参考になりました。一つ一つケースは違うけれど、私の経験も誰かのお役に立てるとうれしいです。
(と言いつつ、自分の心の整理のためも書いています)