第1話 「再会と邂逅」
春、私はとうとう中学生になった。入学式当日、初めての光景が私を迎えた。
着慣れない制服。小学校よりもやや広い教室。30人を超えるクラスメイト。見知った顔が3分の1、それ以外は知らない顔と名前だらけだった。担任の先生は、30代の国語の教師だった。彼の第一印象は、「親しみやすい」という一言で足りるほどで、少し安心している自分がいた。
この時は、まだ。
入学したばかりなので、席順は出席番号順だった。近くの席には知らない顔は1人だけで、あとは皆同じ小学校出身の子たちだった。小学校ではあまり彼らの中に馴染めなかったので、中学では無理に仲良くしようとしなくてもいいだろう、と思った。
入学式を終え、いよいよ学校生活がスタートした。自己紹介ではそれぞれ、名前と出身小学校のほかに、入部を希望している部活動について話すことになった。私の中学校では、部活動への参加が義務付けられていた。
私は小学生の頃から希望していた吹奏楽部に入りたいと思っていることを話した。ほかにも、吹奏楽部を希望している人は数人いた。その時の私は、このことを大したことではないと思っていた。
中学校の学習スタイルは、小学校と大きく変わる。小学校では先生から出された宿題を提出すればよかったのだが、中学校では自主学習が基本だった。そして、小学校から中学校に上がって大きく変わる点がもう一つ。各教科ごとに指導する先生が異なるというのが、自分にとってはとても面白そうに思えた。
学習オリエンテーションを終え、中学校生活初めての昼休み。小学校と異なり、外で遊ぶ人はほとんどおらず、グループ作りのために、教室でおしゃべりをしている人ばかりだった。
そんな中、私はというと、
何もしなかった。
正確には、何もできなかった。
小学校時代にクラスメイトから悪口を言われ、学校全体から孤立していたため、人との関わり方を忘れてしまっていたのだ。友達を作るための第一声が、浮かばなかった。
結局、私は昼休み中ずっと、1人で黙って自分の席に座っていた。
この感覚を、私はよく覚えていた。小学校の時からずっと味わっていた、重苦しい寂しさだった。同時に、これから先もずっと、このような日々が続くのだろうかという不安が、私の胸を締めつけた。
そんな重苦しい寂しさとの再会と、胸を締めつける不安との邂逅によって、中学校生活初日は終わった。
私は、また1人ぼっちになるのだろうか。