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ほとんどの人ができていない、問いのデザイン

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコース「クリエイティブリーダシップ特論2021」第8 回:安斎 勇樹さん
2021年6月1日 by コク カイ

「クリエイティブリーダーシップ特論2021」とは武蔵野美術大学大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコース(通称「ムサビCL学科」)が行われている、クリエイティブとビジネスを活用して実際に活躍されているゲスト講師を招いて、参加者全員で議論を行う形の講義です。受講生たちは毎回の内容をレポート形式でnoteで連載しています。(前半期はこれで終わります。後半期は9月からなので、お楽しみください!)

今回のゲストは株式会社MIMIGURIの代表、安斎勇樹さんです。

安斎さんは組織の創造性の土壌を耕すワークショップデザイン・ファシリテーション論について研究してきました。著書に『ワークショップデザイン論:創ることで学ぶ』、『問いのデザイン』などがあります。

今の時代ではクリエイティビティやイノベーションなどのような言葉がよく耳にします。そういった新しいものや新しいを生み出す力、いわゆる創造力が学校から社会、個人から組織などさまざまな場面で求められます。ただしそれのような創造力は誰しもいざとなる時に発揮できる能力ではありません、その理由について、安斎さんは人々が自分の主観的意識から逃れないからだと考えました。

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彼はこの図を使って説明しました。これはエルンストマッハが描いた図です、図には椅子に座っている男性とその左目から見た室内の風景が描かれています。これは私たちが日常でも見えるごく普通なワンシーンですが、何か異様を感じませんか?そう、日常生活の中で本当は私たちは自分の眉毛、鼻などがこんなに見えていないはずです。しかしそれは、鼻や眉毛がそこにないわけではなく、今まで我々はそれらを見過ごしてきただけです。

実は視野だけではなく、人間が物事に対する見方も同じです。なぜそうなっているかというと、一言で言えばそこはあまり重要じゃないからです。「なんだ、それ当たり前じゃん」と思う人もいるかもしれませんが、これを知ってから気づくべき残念な事実は「我々は決まった見方しか世界を見ることができない」ということです。では、我々はどうやってそこから脱出して、新しい視角で物事を捉えるべきでしょうか

それに対して安斎さんが出した答えは「ワークショップ」です。ワークショップは基本的に課題があらかじめ与えられていて、そこから参加者アイディエーションしたり、議論したり、提案したりするプロセスになっています。ワークショップに参加することで、参加者同士はお互いに新しい刺激を与えて創造力を高めるのだけではなく、リーダー、発表者やサポーターなどの中から、自分に相応しい役割を選んで果たすこともできて、自分のポテンシャルと引き出すきっかけにもなるかもしれません

では、いいワークショップとよくないワークショップの違いは何か、と深く探っていくと、安斎さんは「問いのデザイン」というところまで辿り着きました。

例えば企業のクリエイト職や商品開発の担当にとって、よく課題として「半年後にパッケージを変えないといけない」「来年のヒット商品を生まないといけない」「サービスを改善しないといけない」などが挙げられます。しかしそこから本当にいいデザインやいいサービスが生まれるかというと、かなりの疑問です。

それは開発者、クリエイターの能力が足りないとか、意欲が足りないとかではなく、問い(課題)の作り方が悪かったからだと安斎さんが考えました。実は問いにも様々な視点やサイズ感(下記の図を参照)があって、それを意識せずに問いを出してしまうと、結果が思うようにならないのは当然です。そのため、適切な問いを作って、個人のクリエイティビティを呼び起こして、ポテンシャルを引き出すことこそ、組織の創造力を解放するコツです。

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「問いのサイズ感」引用元: https://note.com/yuki_anzai/n/n44463c84d6d3

私から見れば、問いはいわば懐中電灯のようなものです。真っ暗な環境の中で、先に何があるかを確認したい時は、やはり懐中電灯でそこに向けなければなりません。問いのデザインも同じ役割を果たしていると思います。この複雑性、不確実性が高い現代社会の中で、望ましい答えを導き出したい場合は、適切な問いを作って投げなければなりません。それは今の時代では、企業や研究機構だけではなく、一般人にとってもかなり重要な能力だと考えます。

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