一本の線から描く幻想空間
武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコース「クリエイティブリーダシップ特論2021」第6回:堺 大輔さん
2021年5月18日 by コク カイ
「クリエイティブリーダーシップ特論2021」とは武蔵野美術大学大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコース(通称「ムサビCL学科」)が行われている、クリエイティブとビジネスを活用して実際に活躍されているゲスト講師を招いて、参加者全員で議論を行う形の講義です。受講生たちは毎回の内容をレポート形式でnoteで連載しています。
今回のゲストはチームラボ株式会社取締役、ブランドデータバンク株式会社取締役の堺大輔さんです。
チームラボは、いうまでもなく、あの世界中で反響を集めたデジタルアート空間で名を知られているアーティスト集団です。実はその組織は、プログラマ、エンジニア、数学者、建築家、絵師、ウェブデザイナー、グラフィックデザイナー、CGアニメーター、編集者など、様々な分野の専門家から構成されています。現在チームラボはインタラクティブかつ没入感のあるデジタルアート作品で各国から注目を集めています。
もちろん上記のデジタルアート事業だけではなく、デジタルソリューション事業もチームラボの一本の柱となっています。UIとUXの面においてしっかりとしたデザイン力の他に、700人の社員の中で半数以上がエンジニアという強い技術力も持っています。その技術的サポートをバックグランドにして、多くの大企業が彼らのカスタマーになっています。
そのような膨大なクリエイターの集団は、どうやって協働しながら一つのプロジェクトを推進するのかについて、私はとても興味を持って話を伺いました。
まず環境整備の面において、チームラボは創造力が溢れる作業空間を作ることに心掛けていました。例えば小川町進興ビルにあるチームラボのオフィスは、一見「子供の遊び場」のような空間になっています。台面がクッションのテーブルや遊べる砂が乗せられたテーブル、どこまでも自由にらくがきできる超大判な紙など、ずらりと並んであります。
そのような空間の中で、チームラボのメンバーたちが頭を柔軟化し、アイデアの良し悪しや自身の専門など関係なく、とにかく気軽にたくさんアウトプットします。「ちゃんとしないといけない」というような考え方を捨てられる空間にしたいと、堺さんが強調しました。
次は創作の面において、チームラボのメンバーはいつも共同作業で作品を作ってきました。よくクリエイティブなアイデアを生み出すには、創作者自身の個性や美意識に頼らなければならないとされていますが、それがチームラボのやり方ではありません。大人数で協働して作品を作るには、全員の認識を揃わなければなりません。それができなければ、チームとして効率的動けません。
もちろん共同作業の中で素早く合意を得るのも最初からできることではなく、さまざまなプロジェクトの中で培ってきたものです。ただそれ以前に、全員がどうすれば顧客に一番いい体験を提供できるのかということを常に念頭に置かなければいけません。そこを目指していけば、全員はブレることなくプロジェクトを進んでいくことができます。
私たちの一般認識の中では、このようなエンジニアが多数の会社は堅苦しい社風や保守的だと思われがちかもしれません。しかしチームラボではそのようなことが全くなく、むしろエンジニアが多数だからこそ、プロジェクトの中で技術的に難しいところやアイデアの実現可能性など対して、しっかりとした根拠を持って評価することができます。チームラボも彼らの声があるからこそ、このようなクオリティーの高いパフォーマンスを実現してきたのでしょう。
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