
【栄養学・心のこと】不安は人類の進化で獲得した天からの贈り物?

冬になると不安になったり、憂鬱になったりする方はいらっしゃいませんか? 冬は日照時間が短いので、日光を浴びると分泌する不安をやわらげる物質である、セロトニンが減るからかもしれません。
不安になるのっていやだなーと思うかもしれませんが、実は私たちが生存するために、不安はなくてはならないものです。
人類は不安とともに進化してきました。進化の過程で不安を獲得してきたのには、あるメリットがあったからなのです。それは、不安を利用することによって危険を回避して安全なところへ自分を導くように、生存のために役に立つものとして進化させたのです。
不安とは、まだ起こっていないけれど起こるかもしれない出来事や状況に、心配、緊張感や恐怖を感じること。老後の不安、健康の不安、経済的な不安、人間関係の不安、など私たちはこうした不安から逃れられません。私たちはこの不安を嫌な感情だと思わずに、ポジティブなツールとして、どのように利用していけばよいのでしょうか?
私たちが不安を感じるとき、それをやわらげる役割をする神経伝達物質にセロトニンがあります。
私たちの祖先はおよそ700万年前には、比較的安全な森の中で木の実などを食べて暮らしていました。ところが気候変動により森からサバンナに生活の場を変えざるを得なくなって、セロトニンなど不安を抑える物質の遺伝子に変異が起こったそうです。
それは不安を抑える物質の能力が落ちて、ヒトはより強く不安を感じるようになったというのです。
もちろんそれは、危険を回避して安全に暮らせるようにするためです。
不安によるブレーキと、不安を抑える物質によるアクセルとのバランスをとることが必要なのでしょう。
今回はそんな不安について紐解いていきましょう。
概要
➢ 不安を強く感じる人、感じにくい人への進化
➢ 現代人も不安はあるのでしょうか?
➢ BDNFが増えるとうつ症状は改善する?
➢ 食事の質が高いほどうつ病のリスクが低い!
➢ 不安や抑うつを解消するためにできること!
➢ まとめ
不安を強く感じる人、感じにくい人への進化
冒頭で人類がサバンナで暮らすようになって、不安を抑える物質の遺伝子に変異が起こったとお伝えしましたが、6万年ほど前にまた新たな変異が起こったそうです。
それは、一部の人たちが不安を抑える物質をより多く受け取る能力を得たというのです。
この変異は、6万年ほど前にアフリカを出発した人類の祖先が未知の場所に広がっていった時(グレートジャーニー)、率先して前進していくために不安を抑えることが有利であったためだと考えられています。
アフリカでは1~2割、日本を含むアジアでは3~4割、アメリカ大陸では5割を超える人たちが、セロトニン、ドーパミン、ギャバなどの不安を抑える物質をより多く受け取る能力を獲得したといわれています。
不安を強く感じる人と感じにくい人がバランスをとって、安全に暮らすように不安を利用していったのではないでしょうか。
現代人も不安はあるのでしょうか?
文明が発展して、外敵や食べ物の不安も大幅に減ったのに、人びとはなぜ今もなお不安を抱えているのでしょうか?
日本人の調査で日常生活に悩みや不安がある人は、全ての世代で8割近い人が不安を感じていることが分かりました。
長期的な将来を心配したり、様々な状況から自ら不安の要素を作り出してしまい、睡眠不足が蓄積されて心身が機能しなくことが長期に続くと抑うつ状態につながることがあります。
様々な種類の精神疾患、特にうつ病、不安、不眠症に悩まされている人はますます増えているそうです。うつ病の人の80%は、強い不安を抱えているというデータがあります。
日本人では、2013年に7.9%、2020年には17.3%に急増し、実に6人に1人の人がうつ病か、うつ状態だと言われています。
このように不安が過多になってしまう背景には、私たちの食事の変化などライフスタイルに要因はあるのでしょうか?
不安、うつ、不眠症などのメカニズムを科学者たちは今のところ、完全に説明できていないそうですが、近年うつ病と脳の活性化に大きな役割を持つたんぱく質の一種であるBDNF(脳誘導神経向性因子)が、うつ病と関係する可能性があることが分かってきたそうです。
ここから先は

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?