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強くて丈夫。でも開けやすい段ボール箱の話

無駄のない箱作り

今井 前回は段ボール自体を作るお話を聞かせていただきましたが、最近はどんな箱のニーズがあって、どういうふうにその箱を開発されてるんでしょうか。

佐藤 最近ですとECですね、宅配用の箱の設計が多くて、それもこの頃の需要としてはポストインタイプ、つまりポストの中にそのままお届けできるようなサイズのものが流行りはじめてます。

村上 最近、開け方がワンタッチで開けられたりとか、あと昔は発泡スチロールの緩衝材が入っていたのが、あれもだいぶ段ボールに置き換わったものとか、いろいろあるなって思うんですけど、そういうのも含めて作ってるってことですか。

佐藤 そうですね、うちは緩衝材はやってないんですけども、皆さん昔は「大きな箱にすごい小さい荷物が1個だけ入っていた」という経験をされたと思うんですが、この頃はそうではなくて、なるべくそのものの大きさに合わせた箱でいこうということになってますので、箱の大きさもそうですけど、小さくなったのであればなっただけ、開けやすさも工夫しやすい部分があって、そういうところの開発がメインになっています。

村上 それって何種類ぐらい・・・というかすべてのニーズに際限なく答えていたらとんでもないことになりそうなんですけど、そこは際限なく答えているということですか。

佐藤 大きな箱のサイズでいうと、高さだけを変えて箱の容量を減らすみたいなことをしているんですね。それはEC様の倉庫で、中身に合わせた高さに箱を切ってふたをしてるみたいな形ですね。

村上 つまり段ボールの上や下を閉じる部分は共通なんだけど、たとえば高さの部分だけを縦40センチのものを半分の20センチにするとか、そういうことですね。

佐藤 そうですね。高さを低くして、余った部分でふたを作る、というイメージです。

村上 あと段ボールだけじゃなくて、缶ビールとかを包んでる厚紙っていうのかな、それも範疇に入ってるんですか。

佐藤  そうですね。うちは段ボール以外の「紙器」って呼んでるんですが、そういう紙器製品もやってますので、そういう設計もやっています。

村上 一般の目線からすると、たとえばECサイトで物を買う時に、注文しているのは商品そのものじゃないですか。箱は届いた瞬間にはもう役割を終えて、なくなっていく。段ボールって、そういうもののような気がするんです。だから、何を作ってる、何を支えているって実感を意識しながら、皆さん開発されてるのかなってちょっと伺いたいんですけど。

佐藤  たしかにプロダクトという意味では、ずっと使うものではないですよね。なのですが、物を運ぶ時に絶対に必要であるものではあるんです。それを便利にするようなものを提供するんだって考えながら、我々は仕事をしています。

村上 そうすると、使うユーザーっていうのは、一番は流通に関わってる方々が使いやすいということですか。

佐藤 そうですね。元々はビールを運ぶ箱であれば、それを店頭で開けやすいようにしましょうとか、そういう目線での開発だったんです。ところがこのごろはEC サイトから直接お客様に物が届けられるとなった時に、お客様がどうやって開けるのかを考えながら設計するようになりました。時代が経つごとに、実はその開発の目先が変わっていっているのが現状なんです。

村上 そうすると開発の皆さんって、普段どのシーンを切り取っても、モノがある限り段ボールと無関係ではない気がするんです。普段からヒントにあふれている気がするんです。ニーズとかを含め、そういうのが気になったりしちゃうんですか、佐藤さんはいかがですか。

佐藤 変な話なんですが、お買い物に行ったら、製品を見てなくて箱を見てます・笑。 そうなっちゃうんですよね。

村上 これっていいなとか、どういうポイントを見ているんですか。

佐藤 たとえばスーパーで見るんだったら、どんな工夫をして開けやすい箱を設計してるのかとか。ウチではない発想があったりするんですね、やっぱり。普段から見ているいつもの箱と違うものがないかな、みたいな目線で見ています。

村上 あと送る時って、多分ひとつのトラック中で積み重なったりとか、量産品だと倉庫の中で積まれたりとか、出しやすさとか色々そっちの部分もあるのかなって思うんですけど、そのあたりってどんな感じなんですか。

佐藤 その部分はあくまでも強度ですね。箱でどれだけ強度を持たせられるかというところがポイントになってきます。あの、矛盾しているようなことをやってるんですけども、箱を開けやすいようにするってことは、強度は落とさなくちゃいけない。

村上 壊れやすくしているわけですからね。

佐藤 そうです。落とさなきゃいけないというか、落ちちゃうんですよ、結果的に。だけどもそれをどうにか持つような強度設計をするという、相反することを両立させるところが面白いところなんです。

紙器

段ボールができるまで

今井 ECサイトでの買い物は商品自体もすごく楽しみなんですけど、その前に箱を開ける瞬間ってやっぱり無条件にワクワクしたり楽しみですよね。ところでその段ボール箱は、1枚の紙からどういう工程を経て、箱に出来上がっていくんでしょうか。

佐藤 まずダンボールを作るには3枚の紙で一つのシートを作るところから始まります。シート作りと、その後の箱作りという、大きく分けて二つの工程があると思ってください。シートの作り方としては、まず箱の内側になる紙と、真ん中のなみなみの部分、これは中芯と呼んでいますが、なみなみ自体は歯車と歯車の間を紙が通ることでなみなみができると思っていただいて、なみなみになったところに箱の内側になる紙が接着されるようなイメージです。まずなみなみと箱の内側の紙をくっつける形です。

村上 これは普通の「のり」でつけるのですか。

佐藤 コーンスターチですね。ですからトウモロコシですね。

村上 天然由来の素材なんですね。

佐藤 その状態を片ダンって呼んでるんです、片側ダンボールですね。その片ダンと、外側になる表ライナーって呼んでいますけど、それを貼り合わせていきます。貼り合わせた段階で硬いシートになるのですが、そのシートを作る工程は、全長で120メートルぐらいの機械で作ってるんです。3枚の紙になるぐらいまでだいたい90メートルぐらいの長さを使います。3枚の紙が入口からずっとつながっているんですが、90メートルくらいいったところで、まず紙の幅方向に切れ目を入れます。そのあとに流れ方向に切断して、そうするとある幅の、ある長さのシートになる。それを積み重ねていって、まずシート作りは終了です。

村上 パルプの原紙でまず幅が決まるんですよね。

佐藤 そうです。うちの工場ではだいたい2〜2.2メートルくらいです。

村上 今まで最大でどのくらいのシートを作っていますか?

佐藤 4メートルくらいですかね。実際には4メートルとなると結構な製品なので、普通の工場ではそこまではできないですね。

村上  最終的に何のためにそれだけ大きなものを切り出すのですか。

佐藤 例えばアルミサッシの枠だとか、ああいった長尺物を入れる時にはどうしてもシートが長くなっちゃいます。あとトタン屋根とか。

村上 紙器製品もやっているということですが、ここまでは段ボールでやった方がいい、ここからは現実的に紙器で作った方がいい、といった境目が重なってる部分みたいなのがあるのかな思いますが、その辺はどうですか。

佐藤  元々、紙器っていうのは内装箱で、それ自体で強度を持たなくていい箱というのが主流だったんですね。なんですけども現状はどんだけ小さく包めるのっていう世界になってくると、強度を持たせなくちゃいけないんですけど、それよりはちょっと目をつぶりながらポストインができるような箱を作るみたいなところまで段ボールが降りてきてると思った方がいいかもしれないです。

(文 ネイティブ編集長・今井尚、写真提供 日本トーカンパッケージ)


次回のおしらせ

あらゆる商品をつつんで、運び、届けるのに使われる段ボール箱。その開発をしている日本トーカンパッケージの包装開発センター長、佐藤康博さんに登場いただきます。使い終われば捨てられてしまう脇役ながら、なくてはならない大切な存在ですが、どんな思いで箱を作っているのでしょうか。お楽しみに。 

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