「自衛隊は便利屋ではない」についての杉田水脈・松川るい議員らの混同について

佐藤正久議員の主張から始まったこの話に杉田水脈・松川るい議員が便乗しているのですが、佐藤議員と彼女らとでは批判のロジックが異なり、後者は完全に間違ってると思うので書きます(佐藤議員も「少なくとも」一部早合点があったという指摘は上記記事で行ってる。ここで書いてることで不明な点があれば大体この記事に載せているはず)。

「自衛隊は便利屋ではない」の3つの次元の批判

1:災害派遣の実体要件充足性の問題
2:派遣要請が正規ルートだったか・要請の際に条件を具体化していたかのの手続の問題
3:派遣先での自衛官に割り当てられる作業に、一部、本来自衛官が行わなくても済むような自衛官のリソースの無駄遣いになるようなものが含まれている=処遇改善の問題

「自衛隊は便利屋ではない」の主張の中身をよくよく見てみると、これらを切り分ける必要があると思いました。

佐藤議員は2・3を言っているということは言えますが、1は「そう言っていると思われても仕方がない」という程度ではないかと私は思っています。

ところが、便乗してる杉田水脈・松川るい議員らは、明確に1と3を混同していました。

杉田水脈・松川るい議員らの便乗:災害派遣要請の3要件に言及

自衛隊は便利屋ではない 2020-12-11 08:37:14

 自由民主党国防議員連盟勉強会で、新型コロナウイルス対応における自衛隊の災害派遣について説明を受け、議論しました。
「自衛隊が派遣される前に(自治体等で)収束させる努力をする。それをしないでなんでもかんでも自衛隊に依頼する。」そんな実態が明らかになり、唖然としました。
 また、依頼のルートも様々で、本来であれば知事から、平時より情報交換をしている現地の部隊を通して派遣依頼があるべきところ、知事が直接大臣に電話して、それだけで正式な依頼が出てなかったりする事例もあるらしいです。
 自衛隊の看護官や看護師は余っているわけではありません。自衛隊病院でもコロナ患者の受け入れを行なっており、手一杯の状態でも、派遣依頼が有れば対応しなければならない…。
 今一度、緊急性、公共性、非代替性を総合的に勘案して、事態やむを得ないと認められる場合のみの部隊派遣だということを認識していただきたい。ということを、勉強会で再確認しました。
・緊急性 状況から見て差し迫った必要性があること
・公共性 公共の秩序を維持するという観点において妥当性があること
・非代替性 自衛隊の部隊等が派遣される以外に他に手段がないこと

松川議員はこのあと「派遣自体は正当」の趣旨の弁解ツイートを連投しましたが、だったら「3要件」を持ち出すなよと。

災害派遣の3要件:緊急性、公共性、非代替性の使い方

災害派遣の3要件は、自衛隊を派遣するか否かの判断で使います。

派遣された自衛隊の部隊や個々の自衛官が作業する際にいちいち参照するものではありません。

たとえば「自衛隊員が派遣先で弁当を運ばされて…」という話。

派遣要請時には本来業務を伝えるだけで、この際に「弁当を運ばせるために人員ください」なんて言うわけがない。

実際に派遣された後に、現場の流動的な状況から、自衛官が本来やるべきか疑問な作業をやらされてる疑惑がここでの問題提起のはず。

もっとも、「3要件は派遣後の作業の中身に全く関係ない」かというと違うかもしれません。「自衛隊でなければできない事を中心にやるという素朴な意味での作業の取捨選択がある。その判断にあたって派遣された趣旨に立ち返る場合は3要件を参照するかもしれない。

しかし、ダイレクトには「その自治体に派遣された趣旨」との関係を考えるはずです。たとえば今回はICU勤務経験のある看護士が派遣されましたが、一般病棟には人員を割かないというような決まりがあるかもしれない。

ただ、現場の流動的な状況からは請われて或いは自発的に柔軟に対応できるべきでしょう。

自衛官が本来の派遣の趣旨から外れた作業をする可能性と妥当性

現場のレベルでは

1:自衛隊(官)でなくとも出来るが自治体のみだと負荷がかかり過ぎるもの
2:自衛隊でなくとも出来るが自治体のみだとマンパワーが足りない
3:自衛隊でなくとも出来るが(派遣期間内の)一時的に自治体側が作業できないものが⇒派遣時には予想外の作業

こういう性質のものがあり得るのですが、たとえば

派遣の趣旨である作業を進めたが今日はそれ以上進められず明日以降再開することとなった。が、今日はまだ4時間しか稼働しておらず、部隊が現地に留まるだけという無駄な時間が発生している」みたいな状況。

もっと小さな個人単位の話で言えば、休憩終わったばかりだけど30分くらい何もやることが無くてただブラブラしているだけになっている時間が発生してしまった、みたいな状況。

要するにマンパワーを管理している者の視点の比喩表現で言えば「人が遊んでる状態」が発生した場合。

このときに多少、本来業務外の作業(自衛隊がやるものとして不適切なものは除く)を行って現地の負担軽減をした場合、これを3要件該当性判断に当てはめたらすべてアウトになりますが、それによって責められる謂れは無いのでは?

また、外からみたら本来業務外の作業だと思われても、本来業務の遂行中の一連の流れの中での作業だった、というような場合もあり得るわけで。

自治体側がそういう状況にならないように配慮すべきという点はごもっともで、そういう趣旨の主張なら理解できるのですが、イラク派遣部隊出身の佐藤議員はともかく、杉田・松川議員らはそういう点に無配慮だったと思います。

以上

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Nathan(ねーさん)
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