見出し画像

性交同意年齢の政策を10代の子供と議論することの是非と児童の権利に関する条約12条

このツイートが気に入らない人が多いようです。

特に性交同意年齢を今の13歳から上げるべきだと主張してる人に。

社会学者の牟田和恵教授。

しかし、山下弁護士の頭にあるのは子供の権利条約12条でしょう。

児童の権利に関する条約(子供の権利条約)12条

第3条
1 児童に関するすべての措置をとるに当たっては、公的若しくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。
第12条
1 締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。
2 このため、児童は、特に、自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の手続において、国内法の手続規則に合致する方法により直接に又は代理人若しくは適当な団体を通じて聴取される機会を与えられる

ここでは「司法上及び行政上の手続において」とあるので、「立法上の手続は?」と考えることができますが、一定の解釈が示されています。

子どもの権利委員会 一般的意見12号(2009年)

子どもの権利委員会 一般的意見12号(2009年)
日本語訳:平野裕二
70.第3条の目的は、子どもに関わるすべての行動において、その行動が公的もしくは私的な社会福祉機関、裁判所、行政機関または立法機関によってなされたかどうかに関わらず、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保することである。このことは、子どものためにとられるすべての行動において、その子どもの最善の利益が尊重されなければならないことを意味する。子どもの最善の利益は、締約国に対し、子どもの最善の利益が考慮されることを確保するための措置を行動プロセスに導入するよう義務づける手続的権利とそれほど変わらない。条約は、締約国に対し、これらの行動の担当者が第12条で定められているとおりに子どもの意見を聴くことを確保するよう、義務づけている。このような措置は義務的なものである。
ー中略ー
72.第3条ではもっぱら個別事案が対象とされているが、子どもに関わるあらゆる行動において集団としての子どもの最善の利益が考慮されるよう要求していることも明らかである。したがって締約国には、子どもたちの最善の利益を明らかにする際に子ども一人ひとりの個別的状況を考慮するのみならず、集団としての子どもたちの利益も考慮する義務がある。さらに、締約国は、官民諸機関、公的機関および立法機関の行動も検討しなければならない。この義務が「立法機関」に対しても拡大されていることは、子どもたちに影響を与えるすべての法令または規則は「最善の利益」基準を指針としなければならないことを明確に示すものである。
73.いずれかの定義による集団としての子どもたちの最善の利益が、個別の利益を衡量する場合と同じやり方で確立されなければならないことには疑問の余地がない。多数の子どもたちの最善の利益が問題となっているときは、諸機関、公的機関または政府機関の長は、子どもたちに直接または間接に影響する行動(立法上の決定を含む)を計画する際、具体的に定義されていないそのような集団の子どもたちのうち関係する子どもたちから意見を聴き、かつその意見を正当に重視する機会も設けるべきである。

子どもの権利委員会 一般的意見12号では、このように立法論に関しても、具体的な児童に限られず、将来的に影響を受け得る集団としての児童をも考慮して、関係する子供たちから意見を聴取する機会を設けるべきとしています。

子供に政策論の意見を聞く必然性はあるのか?

ここまで知った上であれば、山下弁護士のツイートは、その主張に根拠があるということが理解できるはずです。

もっとも、私は果たして子供に政策論の意見を聞く必然性はあるのか?とは思っています。

選挙権(投票する権利)は18歳から。

つまりは政策に関する自律的判断は18歳から、と一応は法定されているのが建前の現状で、それ未満の年齢の者に政策論を論じさせる必然性は無いのではないか。

子供が関係するからといって子供に意見を聞いても、子供のためにならない(と、大人が思うような)主張が返ってくる場合はあり得るし、前提となる事実や議論を踏まえてない場合がほとんどだろう。

それも手続的正当性のために儀式・セレモニーとして踏まえるべきだということだろうか。

この立場だと山下弁護士の「10代」の意味するところが18,19歳なら是認できることになりますが、おそらくそうではなく、子どもの権利条約にある「自己の意見を形成する能力のある児童」を指しているのでしょう。

ここでは「性行為に関する自律的判断」ではなく、「性的な事柄に関する政策論についての自律的判断の尊重」の話なんだろうと思います。

具体的な状況で相手が居る場合と政策論では別軸で考えることが可能で、後者の年齢が低くても、前者に関して「性交同意年齢は16歳・18歳」などとする主張をしていても、それと背理することは無いでしょう。

しかし、「自己の意見を形成する能力のある児童」であるという判定はどうやるのだろうか?という疑問があります。

牟田教授のツイートは児童の権利に関する条約や委員会の解釈の内容は知らなかったかのでしょうか?知った上で、委員会とは異なる解釈だったのでしょうか?

「異なる解釈」であれば一応は私とは同じ分類になりますが、果たしてここで書いているような事を認識した上で言っているのかは分かりません。

そういった次元であーだこーだ言うよりも、条約を踏まえて本当に子どもの意見を聞く必要はあるのか?を議論してほしいところです。

以上:役に立ったと思った方はハート形のスキをクリック・サポート・フォローしていただけると嬉しいです。

いいなと思ったら応援しよう!

Nathan(ねーさん)
サポート頂いた分は主に資料収集に使用致します。