学術会議委員に任命されなかった岡田正則教授、学識の無さをこれでもかと披歴していくスタイル
日本学術会議委員に推薦されながら任命されなかった行政法学の岡田正則教授のメールをツイートしてる人が居ました。
この内容、学識が無いことを暴露するものでしかありません。
内容は要するに
「菅総理は105名の名前が書かれた推薦リストを目視していないのだから、推薦が到達したことにはならず、よって、「推薦に基づ」かずに判断をしてる違法な行為である上、「99人に削除した」のでそれは改竄であり虚偽公文書作成罪である」というものです。
突っ込みどころが多いのですが、権限上はまったく問題ないことであることにつき以下で論じてます。
で、岡田正則教授の学識が問われるのは「到達」についての理解。
普通、法学上の議論における「到達」は、「意思表示」や「契約」についての概念が参照されます。
意思表示は表白→発信→到達(受信)→相手方の了知のうち、「到達」によって効力が生じるということになっています(民法97条1項)
到達とは、社会通念上、意思表示が相手方の勢力範囲に置かれること、すなわち、相手方が了知できる状態に置かれることを言う。相手方が意思表示を知りうる状態にさえなれば、現に相手方がそれを知らなくても到達があったと言えます。必ずしも相手方本人が受け取る必要はなく、相手方の親族や同居人であってもよい(最判昭36.4.20)。
「相手方が意思表示を知り得る状態になる」というのは、たとえば、便箋を相手方宅の郵便受けに入れるなどです(その事実が証明できる限りにおいて)。
しかも、郵便物の受取りを拒否しても到達があったとされ(大判昭11.2.14)、受取人が不在であっても、不在配達通知書から郵便物の内容が推知できるときには、遅くとも留置期間が満了した時点で到達したものとされます(最判平10.6.11)。
支払い督促が来ることを予期して、一切郵便受けとその中身を見ない、という行動をしても、無駄ですよと。
改正後の現行民法97条2項では「相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。」というふうに明文化されました。
契約の成立については申込みに対する「承諾の通知」があったときに成立します(民法522条)。契約の申込みに対する承諾があったとされるのも、表白→発信→到達(受信)→相手方の了知のうち、「到達」の段階です。
※改正前は契約の承諾の意思表示について発信主義がとられていた(旧民法526条1項「隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する。」が削除された)が、意思表示の規定(総則部分にある)が貫徹することとなった。
さて、岡田正則教授の言う「到達」は、どうも菅義偉という内閣総理大臣職の人間が、その眼でもって推薦名簿を目視しなければならないという理解ですので、上述の民法上の「到達」概念とはまったく異なることが分かります。
で、他の法律上で「到達」の理解が岡田教授のような理解を一般的に採っているという例は寡聞にして知りません。そんなものがあったら教えてください(反語)。
盲目の人だったらどうするんでしょうか?
実際は杉田副長官が首相の決裁前に推薦リストから外す6人を選別。報告を受けた首相も名前を確認したという運びであり、口頭で説明を受けてるということ。105人のリストも決裁文書に添付されていたという報道があります。
推薦リストは内閣府に届いている(物理的な意味で)のが明らかで、これで「到達が無い」という評価をするのは学識が無いということ以外を意味しません。
学術会議はどうしてこういう者を推薦したんでしょうか?その正当性が問われるべき話です。
法律上は「優れた研究又は業績がある科学者のうちから」委員を選考することとされていますが、そういった成果物がある者「のうちから」選ぶのであって、選考・推薦の基準は成果物だけに限りません。成果物は大前提。
それは任命しろと求める京都弁護士会の声明でも『「総合的、俯瞰的活動を確保する観点」は、同会議が「推薦」する際の観点であって』とあるので、学術会議の選考委員会の方でも成果物だけで委員を選考・推薦しているわけではないのは明らか。
参考:「日本学術会議の会員任命拒否を撤回し、同会議の推薦どおりに任命するよう求める会長声明」(2020年10月12日)
したがって、同じく任命されなかった松宮教授の主張は、お仲間からも全否定されたことになります。合掌。
以上
サポート頂いた分は主に資料収集に使用致します。