鑑賞記録 2023/06/10 NTLライフ・オブ・パイ

オリヴィエ賞の受賞とその時のパフォーマンスから見たかった作品
原作も映画も観てはなくて、あらすじと信頼できない語り手の作品も言うことだけ知ってみたけどすごく面白かった。

舞台効果がまず凄かった。
一番見たかった動物のパペットは、動物園で見てきた本物さながらの動きをする
複数人で動かしてる動物もいるのに1匹の動物として動いているし、人が見えてるのに気にならない
動物のデザインが木を切り抜いたみたいなデフォルメをされているからこそ、パペットだという意識を持ちながら観るところはあった気がする。
話を最後まで観て、どういうことなのかがわかってくると余計にパペットであることやデザインが効果的なのかもと思った。

あと、本当に視覚効果、照明と舞台美術がすごい
プロジェクションマッピングの海で、
パイが海に落ちるところを表現してる部分とか、この作品を表現するのに凄かったし、
これはNTLだからこそだけど、上からの映像とかがより一層視覚効果を素敵に見せていた
文字の出し方とかもめっちゃくちゃオシャレ
舞台美術は、これは何も知らないで劇場に入ったら観劇でしかないんだろうな、と思った。
まず船の形をした舞台で、ほぉ、てなった。
ここでもう感激してるのに遭難したら船が競り上がってくる。船が競り上がってくる時なんかもう感動しかない。美しかった。
床下が空くところなんかは、最近のイギリスの作品のトレンドなのかな?というのはあるけど、
一部だけ顔出したり潜れたりは、え!?てなった驚きがある。ちょっとずれたら怪我になるのに、どうやって稽古してたのかも気になるし、あの上誰か歩いてたっけ?とも思った。
こういうのは常設劇場でロングランでできるからこそだよな、日本では難しいよな、コスト的にも……。
この視覚的なところに加えて、音楽もめっちゃ素敵だった……?

ストーリーもめちゃくちゃ面白かった。
本当に哲学とユーモアと感動と教訓というかそういうバランスが絶妙なんだな、と思う。
パイが何よりユーモラスで、魅力的。表情豊かで身軽ですごいな……。
パイがオカモトさんと神について話すところとか、あぁ、てなった。神のとは、信仰とは、というところを描くのにインドの少年は文化的背景としてあってるよな、と思うしパイが信仰で悩んでた描写をすると、オカモトさんの考えを受け入れる彼に説得力が増す。
最後に点と線が繋がって、そういうことか!とわかるとあ、だからあそこがそうなっていて、とかもわかるからうわぁ、もう一回観たいとなるし、そこに至るまでの各セリフももう一度確認したくなる。
パイがオカモトさんに聞き方が悪いとか、事実とは何かと語りかけて、
2つのお話が終わって、オカモトさんにどちらが好きか、と聞いた時世界をどう見るか、事実をどう捉えるかということを考えた。
報告書の終わりを見た時によかった、と思うわけで、そういう話なのだろうな。

あと、やっぱり舞台だから面白いところもあって、
映画とかだと別の役者さんがやるけど、観たいなところをこの役の人がここではこれをやって、とかそういうのも効果的だったと思う。
虎と人が被り出したところもすごいんだよな。
あ、あの人があの服を着て話してる、というところからあ…!あ、あ、そういうことか!だからあの時この人がこんなに出てきて、うわぁ、てなるし
というかあそこの虎のパペットすごい
人間の動きと虎の動きとできる虎のパペット作るとかすごすぎてわけわからん。

なんだかんだで一番印象に残ったのは、
幕間で、演出家の方が
この作品を見た人に何を感じて欲しいか?の質問に
楽しい夜だったと感じて欲しい
と回答したのが印象的だった。
観終わって言語化できない多幸感がある作品で、笑ったし、泣いたし、楽しかったのだけど、
こんなにメッセージ性の強いかつ芸術的な作品で、エンターテイメントとして楽しんで欲しいということと、
どう受け止めるかはあなたが決めたらいいというような意味合いが込められてると思って、
だからこそこの作品として合ってるコメントで、
こういう方が関わって作ったからこその素晴らしい作品なのだな、と思った。
もう一回観たいのでリバイバルして欲しい……


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