教育困難校へ異世界転生して教員を辞めた話3

先日、学会や教科勉強会などでつながった全国の教員仲間たちと久しぶりに飲む機会がありました。いえ、本当は一年以上遅れた私の送別会です。で、そこでまたひとり教員を辞めた人がいまして。とても熱心に学会発表や教材研究、公開授業をされていたので誰もが大変驚いた次第ですが、その人をここでは田口(仮名)先生と呼びましょう。その彼が辞めた流れも不謹慎ながら面白かったので、聞き取った話をまとめて書いてみたいと思います。いつものようにフィクションとしてお読みください。
*ちゃんと本人からは承諾とりましたYO!

教育困難校という闇

話をする前に、彼の情報を簡単にまとめるとこんな感じ。

  • 教員歴11年目(退職時)

  • 専門は国語科

  • 新採用で公立高校に非常勤で2年間働いたのち、同地域の私立高校で正規採用(中部地方)

  • そこは発達障害や不登校経験者が多く集まる学校

  • でも大体において家庭内の原因が圧倒的(家庭内不和、放任、過保護)

彼もまた、教育困難校に異世界転生して教職を辞めてしまったのですが、果たしてその理由とは。

さまよえる学校の権威

田口先生が教職を辞めた直接の原因は、やはりG○○GLEマップの書き込みでした。彼の指導が、というよりは完全に巻き込まれた感じです。それも予想の斜め上な感じで。それって何が原因なんだろうね、と宴席で話題になりましたが、畢竟するに「学校の権威」の低下という結論に達しました。きょう日、子どもも保護者も何か気に入らないことがあれば学校に気軽に文句を言える、都合が悪くなれば子どもの権利を主張できる、したり顔で学校教育に口出しできる、子ども同士の人間関係を引っ掻き回せる、となれば、そりゃ子どもたちに不条理耐性は身につかないし、結果として気力も忍耐力もない大人ができあがりますよね。闇バイトとか匿名・流動型犯罪なんて言葉が流行っていて、なんなら高校生も捕まっていますが間違いなく教育困難校の教育崩壊と関係ありますからね。……崩壊させたの、だーれだ?

発達特性生徒の巣窟

教職に就いておられない、またはその経験のない多くの方にとっては衝撃かもしれませんが、小中学校で何かしらの問題を抱えて高校に入ってくる生徒の集団ほど異質なものはありません。私も経験があるのですが、そのような学校に入学してくる生徒の7割は発達特性+α、2割は家庭の環境に起因する問題、いじめを受けた等といった本当に生徒側になんの落ち度もないパターンは1割程度です。つまり、逆公正世界仮説ではありませんが、なんらかの特性を持っていたり家庭的に問題のある生徒たちの言う「中学校でいじめを受けた」「居場所がない」といった訴えの多くには、彼ら自身にも原因があるのです。

田口先生いわく、ほとんどは「わがまま」「やってもらって当たり前の環境」で高校まで来てしまったパターンだと言い切ります。つまり、発達特性はあるけれど、それを理由に保護者や小中学校の先生が何でも先回りしてやってしまい自分が世界の中心にいると高校生になっても勘違いしているパターン、または本人の特性が理由で親が不仲になってしまい、家庭内で居場所がなくなり他者に依存したりかまってちゃんになるパターン。そんなのが同じ学校、クラスに一堂に会すると、もう大変です。みんな、世界の中心は自分だと思っているわけですから。自分が世界の中心じゃなかったら、すぐに「友達をとられた」「陰口を叩かれている気がする」「あの子にだけ話しかけて自分には……先生に差別された」等々。マジで他者理解の前に自己理解しようぜ、というレベルの話なのです。

誰もが自分の人生の主人公

自分の人生は自分で切り拓いていくものです。至極当然のことですが、それが通用しないのが教育困難校です。彼らは、人生とは自分が見つめる先を周りの大人達が勝手に切り拓いてくれて、更に台車を用意してくれていて、何ならその先まで周囲の誰かが押して連れて行ってくれるのが当たり前だと思い込んでいるから。事実、中学校まではそれで通用したのかもしれません。が、義務教育から外れるとそうはいきません。

だって皆さん、高校時代の部活で、就職活動で、職場で、先輩が、部長が、社長が、手取り足取り何でもやってくれて手柄だけ自分のものにしてくれる、なんて都合の良いことなんて絶対にないでしょ?時には失敗し、怒られながらも我慢し自省して成長の糧にしていく。生活するってそういうことじゃないですか?

ある日、女子生徒が職員室にやってきました。彼女はずっと田口先生を待っています。が、教員は誰一人気づきません。昨今の先生たちは謎の書類作成や本来不要な生徒指導、出入り業者との応対、会議、保護者の電話対応などで基本忙しいのです。タバコ吸って女性教員に「お茶ちょうだい」なんて光景は平成初期までです。このとき、田口先生も他校の先生と電話で教科研修会の打ち合わせをしていたそうです。

翌朝、生徒の母親が職員室に怒鳴り込んできました。曰く、「娘が職員室に来たのに誰も声掛けをしてくれなかった。娘は物静かな性格だから自分から話しかけられない、そんなことも分からないんですか?なんで先生やってるんですか?」とのこと。オメェらみたいなのがいるから生徒の対応できねぇんだよ、とは言えず、とりあえず学校の方針もあって素直に頭を下げた田口先生でした。

「電車って後払いできないんですか……?」

ある日のこと。田口先生にクラスの保護者から電話が架かってきました。

保「実はウチの子、定期を家に忘れたみたいなんで本人にそう伝えてもらっていいですか?」
田口先生「ええ、わかりました。それは構いませんが、本人は運賃分のお金はちゃんと持っていますか?」
保「あぁ、持っていなかったら後で払いに行くんで大丈夫ですよ」
田口先生「え?」
保「え?」

田口先生が懇切丁寧に「電車に乗るには切符を買わないと改札を通れない」ことを説明しますが、一向に伝わりません。「だって公共の乗物だから、事情を話せばタダで乗れるはずでしょ?」。公共のもの=無料って、こと?なんだか聞いている方の頭がおかしくなりそうですが、納税しているから乗る権利があり、子どものためなら社会全体が助けてあげるのが当たり前と壮大な勘違いをしている様子。コイツ公共交通機関に乗ったことないんか?

しまいには、ウチの子が帰宅できなくなってしまうのに、なんで後払いできないんだ!と電話口で怒り出す始末。大前提として、怒鳴る先が違うよね?こんなのが居るからみどりの窓口も省人化という名目で次々と廃止されていくんだなぁと昨今の社会課題に思いを馳せていた田口先生。しかし、次の授業が控えています。対応に苦慮した彼は、運賃分のお金を生徒に貸すことで保護者に納得してもらいました。その生徒に「明日きちんと返す」という約束で渡した340円はもちろん今日(この話を聞いた宴席時点)まで返ってきていません。生徒が生徒なら、保護者も保護者です。こういうのが自由席券しか持っていないのに当たり前のようにグリーン席に座って車掌に注意されたら逆ギレするんでしょうね。家庭教育って本当に二極化しているなと実感できるストーリーです。

昼ドラ化する学園祭会場

田口先生の勤務校では、学園祭は外部のホールを貸し切って行うのが毎年の恒例。この年も、中心駅近くのホールを貸し切って1日学園祭を行いました。学園祭では、お遊戯ダンスやカラオケなど、希望する生徒たちが思い思いに自分たちの得意なパフォーマンスをステージで披露します。客席後方は保護者席になっており、こちらは保護者が自由に出入りできるようになっていました。

さて、昼休憩中の出来事です。Aさんの保護者(母)がBさんに話しかけている姿を目にした田口先生。その時は、近所で面識があったりするのかなぁ、程度に考えていたそうです。その直後です。後方の保護者席にいたB父が、すごい剣幕でA母に食って掛かりました。

ここでの登場人物を整理しましょう。
・Aさん(2年生):Bの実姉。Bと仲は面識がある程度で苗字は別。
・Bさん(1年生):Aの実妹。本人はAが実の姉だと知らされていない。
・Aさんの保護者(母):Aの母。B父のDVによって離婚したと主張。
・Bさんの保護者(父):AとBの父。若い頃にA母と離婚。現在は別の女性(Bの母)と再婚している。再婚後すぐにBさんが誕生。

B父「何勝手に話しかけてるんだテメェッ!」
A母「何よ触らないでよキャーこの人が暴力をふるっています誰か助けてぇぇぇっっ!!」
ザワつく会場。状況が飲み込めず狼狽える教員たち。最終的に、A母とB父は控室に案内され、校長同席の下そちらで話をしてもらいましたが、3人とも一向に出てきません。その控室、ステージ発表する生徒の着替え部屋なんだけどなぁ。。。

こうして控室が使えなくなった学園祭は途中で尻すぼみのようなかたちで終わりました。A母とB父は互いに捨て台詞を吐いて会場から出ていったそうです、学校への謝罪の一言もなく(校長談)。なお、翌日からAは学校に来なくなりました。

高校生だから大人?

ひどい保護者というのもいくつかにカテゴライズできるもので、大別すると以下のようになります。

  • 家庭教育と学校教育履き違えペアレント

  • 個性尊重!私の子どもが絶対正義ペアレント

  • 学校に何でも押し付けペアレント

  • 学校はストレスのはけ口!モンスターペアレント

  • スケルトンペアレント

1はその通り、家庭教育と同じノリで学校教育に口を出してくる保護者。とにかく細かいことに口を出してきます。席替えの場所、掃除のメンバー、遠足の班構成、しまいには家庭でのお作法(笑)を学校に押し付けてきます。我が家では夕食時にクラシックを流しているんです。なので学校でも昼食時に同じような対応をしてください、など。知らんがな(白目)。

2あたりからもう手に負えません。高校生同士のケンカにも平気で参入してきます。最近はSNSとかLINEのようなチャットでやり取りが進むからたちが悪い。本人が打ち込んでいるのか保護者が代わりに投稿しているのか判らないのです。で、こういう保護者に限って攻撃的です。もう相手の人格攻撃にとどまらず、「この母子家庭が!」だとか「日本語解らないんでちゅか~?▲▲(伏せ字)に住んでるから頭悪いんでちゅよね~😇」みたいな感じ。本当にひどいです。で、メッセージを受け取った方が欠席がちになって初めて発覚する、というケース。私の前職時にもありました。こうなるともう、保護者間での争いであって、学校関係ないですよね、正直。でも対応を誤ると両保護者の矛先が学校に向くことだってあります。この場合は、たとえ自分の子どもの瑕疵を指摘されても、子どもの個性の尊重を盾に逆ギレ口撃してくることが多いです。怖い。

3はもう多すぎて事例を挙げたらきりがありません。が、一つだけ挙げるとするなら。箸の使い方だとか服装だとかスマホの使い方って学校で指導する必要あります?家庭教育じゃね?この手の保護者に限って「全て学校にお任せします」「子どもの自主性を尊重します」なんてこと平気で口にします。

4も最近増えてきました。学校は子どもの言う事を聞く装置です。例えば、修学旅行先。「どうして東京なんですか?先月家族で行ったんで大阪にしてください」とか実施直前になって平気で文句を言いに来ます。こういう保護者を扇動増やしているのが「自由な教育」を標榜している政治活動家と自称:教育評論家の皆様です。「子どもの権利を尊重しよう」とか言いながら耳あたりの良い言葉に飛びついてはいますが、結局のところ親としての責務を放棄しているだけなんですよね。そりゃ子どもの教育って労力使いますよ、でもそれを簡単に放棄し他者に転嫁するのは違う気がします。で、そういうことを御高説ぶる保護者に限ってシュタイナーとかモンテッソーリのこと知らないんですよね。こういう保護者を見ていると、少なくとも教育現場に限っては今の高齢者層が言う「最近の若者は~」は当たってると思うわけです。

5もまぁまぁいます。高校生ならもう大人なんだから自分で解決しな?と子どもにそれらしいことを言いながら、まったく教育に関与しない保護者。一昔前までは、それでも母親くらいは影が見えたのですが、最近は両親ともにガイダンスにも顔を見せない、保護者会にも来ない、子どものトラブル時にも学校任せで一切関与しないという家も増えました。もちろん子どもが他者と共存できて、人間関係でトラブルを起こしても自分で解決できるだけの能力を持っているならいいんです。でも、教育困難校はそうじゃない。だいたいにおいて、あちこちでトラブルを起こす要注意人物だったりするわけです。で、親も対応に苦慮して突き放したような対応をしているわけですね。で、こういう親に限って学校に理解があるような言い方をするものです。「学校に迷惑をかけるな」とか「先生方も忙しいんだ。自分たちで考えろ」と。でも突き詰めると、結局は3や4と同様に親としての責務を放棄しているだけなんですよね。ちなみに七尾が一番キライなタイプの保護者です。

(高校生にもなって)世界の中心で文句を叫ぶ

夏休みともなると、3年生は就職活動や受験勉強に大忙し、と思いきや、勤務校ではそんな同年代の姿もどこ吹く風。補習も、就職面接練習も、平気で休みます。そんななかでも飛び抜けてヤバかったのがCさん。

彼は、近場にある東証プライム上場企業の工場勤務を希望していました。これは相当しっかり筆記試験対策や面接練習をしなければ!と熱意に燃える田口先生をはじめとする若手教員らの姿勢とは裏腹に、彼は補習も面接練習も無断で休み続けます。しびれを切らして田口先生が家に電話すると、祖母らしき人物が出てきて、「体調不良だから」と一方的に切られます。これでは埒が明かない。田口先生は、別の面接練習で登校していたクラスメイトに「Cに、学校に来るよう伝えてくれるか?」とお願いします。すると、彼の口からとんでもない一言が出てきたのです。

クラスメイト「あ、あいつ夏休み前に他校の彼女ができて、ずっと遊んでますよ。今日はプール行ってるはずです」
田口先生「あっ、ふーん…」

そんなこんなで夏休み明け。本人に無断欠席を問いただすと、予想外の答えが返ってきました。
田口先生「おい、夏休みの補習どうしたんだ?全然来なかったし連絡もなかったじゃないか」
C「あ、すいません。ずっと体調不良で。。。」
田口先生「連絡くらいできるだろ。◯◯先生も◎◎先生もプリント準備したり、お前のために休みなのに学校来てくれて待っていたんだぞ」
C「まぁ、ちょっと。実は夏休み入ってすぐに××(友人名)らと肝試しに行ったんですよ。そしたらなんか、肩のあたりが重たかったり頭が痛かったりして……ゴニョゴニョ」
田口先生は、頭は「悪い」の間違いだろと思いつつ何を言っても無駄だと判断し、これ以上は質さなかったそうです。彼女と連日、プールや海水浴場に行った挙げ句にイ×スタライブでその様子を配信していたこと、ついでに近くの有名私立高校の生徒になりすまして付き合ってること、他のクラスメイトから聞いて知ってるからな。

さて、当の就職試験ですが、当然ながら彼は不採用となりました。そりゃ、志望動機が「たくさん、お金が、かせげると、ネットで、みたから、です」と筆圧強めの汚い字で書いてあれば落とさない方がおかしい。というか読点を多用せずに漢字を使え、漢字を。面接だって「バッチリでしたよ~✌」と宣ってましたが、こっちは面接官の「欠席が多いけれど、どうしたのかな?」という質問に「気分が乗らなくて」と社会人の心証を逆撫でするような受け答えしていたの知っているからな。本当、なんでこんなやつウチの学校に入れたのか。

さて、大変だったのがその後。豈図らんや、不採用通知が届いたその日の放課後、なんと両親そろって学校にやってきたのです。

C父「先生、Cが▲▲(企業名)から落とされて大変落ち込んでいます」
田口先生「(そりゃ落ちるだろと思いつつ)そうですか。。。本人も頑張ったようですが、ここは気持ちを入れ替えて別の企業に再挑戦しましょう。我々も全力でサポートします」
C母「そういうことじゃないんです!!!」
C父「どうやったら▲▲に入れるかを教えてもらいたいんです。なんなら私たちが代わりに受験しても良いと思っています」
田口先生「………???」
C母「先生の方から、▲▲の担当者に、もう一度チャンスをもらえるようお願いしてもらってください」
C父「ものづくりの仕事ですから、ここはやる気を見せることが大事だと思うんです」
田口先生「………???????????」
C母「やってくれるでしょっ?そのために私たちは学費を払って先生たちの生活を支えてあげてるんですよ?」
田口先生「………????????????????」
C父「かわいい生徒のために、ここはひとつお願いしますよ先生!」田口先生「………??????????????????????」

もはや会話にもなっていないのですが、C父母は真剣です。田口先生、たまりかねて懇切丁寧に説明しますが、一向に伝わりません。しまいには、Cの特性であるASDを使って障害者枠でなんとか!となぜか田口先生に懇願する始末。お前ら、夏前の保護者面談でこちらがその枠を勧めた際に障害者枠雇用は給与が低いから嫌って言ってなかったっけ?

本人はこの一件以降、自室に引きこもってしまい「▲▲はクソ」だとか「学校が悪い」、「社会が優しくない」とブツブツ文句を言っているそうです。社会で大きな事件を起こして他者様に迷惑かけておいて「注目してもらいたかった」とか「家庭が悪かった」と供述するアホがたまにいるでしょ。どうです、Cの姿をみて、少しはつながりませんか?

さてここで、ASDについて少し触れておきます。程度の差やばらつきがありますが、Cには以下のような特性があります。

  • 他者との付き合い方や距離感に難があり友人関係の構築が難しい

  • 自分が正しいと思い込んだら絶対に曲げない

  • 自分の意見や思いが否定されると(主にネット上で)攻撃的になる

  • 言語や文章読解に発達の遅れはない

  • 自分が不利になると平気で他者のせいにするか嘘をつく

そのうえ、精神的に幼いので自分がちやほやされないと拗ねるだけでなく、自分と同じコミュニティ内で活躍している人や中心的な人物に対して一方的な被害者感情を持って攻撃的になります。いわゆるトラブルメーカーですね。ちなみに例の彼女とは夏休み明け集会直前に別れていました。交際期間17日、短っ!ちなみに理由は自販機で買ったジュースを奢る奢らないで揉めたからだそうです。……うん、全く意味がわからん。

幽霊に憑かれている?

さて、そんなある日。学校のマップの口コミにこんな投稿がされました。

「この学校は最悪です。先生方は誰も私の話を聞いてくれません。特に田□とかいう教師は、自分の進路の邪魔をしただけでなく、彼女と別れるよう迫られました。ヤツはクズです。こんなのが沢山いるこの学校に入っては行けません」

はい、案件。というわけで、田口先生はさっそく校長に相談すると、すぐに知人の弁護士を紹介してくれました。え、なにその対応、七尾の働いていた公立校とえらい違いなんだけれど。ポイントは2点です。

  • カキコミの削除

  • 開示請求(こちらはカキコミの削除が認められなかった場合)

結論から申し上げると、削除は認められませんでした。曰く、「田□」と伏せ字になっているから、それが田口氏を指すとは思えない、とのことG◯◯GLE社側の弁護士ってアホなんですかね。

こんなん、どう考えても悪口でしょ?なのに、田口先生への反証の文面に基づけば、これも悪口じゃないってことになるわけです。伏せ字にするなら「◯」だろ、普通。それを「□」にしてる時点で悪意しかないと思うんですよね。同じことやられたらどう思うか考えてみな、とは田口先生の弁。おそらく、そのような教育者的視点が全く通用しないのが法曹界なのかもしれません。いや、そんなアホとこれまで接したことのないくらい、キレイな世界で生きてこられた方なのかもしれませんね。実に羨ましい人生です

ちなみに、上の太字の田口先生の感想、僕も完全に同意見です。なんなら僕は彼ら弁護士の反証文面見て「あぁ、もういいや」って教育の世界から足を洗った口ですからね。もしかして僕の時の弁護士と同一人物?と思って田口先生に名前を聞いたらドンピシャでした。あいつら、もし最高裁の裁判官になろうものなら国民審査で絶対に×つけてやるからな……っ。

というわけで次のフェーズ。さっそく開示請求です。ちなみに、開示請求についても聞いている僕視点では面白い流れがあったのですが、ここでは長くなるので割愛。簡潔に申し上げると、カキコミであることないこと書くならVPN使うか「公共のwi-fiスポット使う」とログ保持のタイムリミット狙えるからオススメだぞ!あとG◯◯GLEのような外資系企業は国内の事業者と違って事実と異なっていても割と全力で守ってくれるから、そっちに書こうな!

この開示請求の係争中にどうやら国内プロバイダから本人に情報開示の同意書が届いたようで、ある日を境に、Jonsonと名乗る人物から「理事長か校長に会いたい」と学校のウェブサイトから問い合わせが連日やってくるようになりました。うちの理事長、外部からの招聘人材でほとんど校内に居ないし校長は公立の天下りなのに、なんで学校に問い合わせあるん?とざわつく校内。しかも問い合わせ項目がなぜか「留学について」なのが、この謎に一層の拍車をかけます。その知らない人というのが実はCだと発覚したのが一週間後のことでした。Cへ。ジョンソンの正しい綴りは「Johnson」だからな?

さて、田口先生は校長同席のもとでCを保護者と共に呼び出し事情を聞くことにします。その時にCが持参した謝罪用紙に書かれていたのが以下の文章でした。

「私は、少し、前から悪霊に、つかれるようになって、それで気づいたら、自分の意思と、異なる行為が、目立つように、なりました。今回の書き込みも、幽霊のやったことで、自分の、意識でないです。その点を、絶対に、わかってください。それでも、自分のアカウントで書き込みを、したことは、事実なので、とりあえず、謝罪は、します。でも、カキコミについては、アカウントのパスワードは、忘れたので、消せません。この度は誠にお詫び申し上げます」

Cの弁明書

先ほどお伝えしましたが、Cはアスペルガー症候群。思い込みが激しく攻撃的。被害者感情が強くて他責的、感情が高ぶると見境なしにネット弁慶ネット上で他者を攻撃しまくります。そして平気で嘘をつきます。今回はどうやら幽霊で押し通すことにしたようです。C父母もこれを割と信じている様で、「ウチの子に限ってそんなことはしません!本当に優しい子なんです!」と大声で擁護する有り様。家庭教育がここまで崩壊していては、学校が支援できることはもうありません。末期です。

ちなみに、現場に同席した田口先生の弁護士は、世の中にこんな家庭があるのかと絶句していたそうです。ええ、教育困難校に限って言えば、ごまんとありますよ、こんな家庭。

「高校生だから」で済ませることの代償

後日判明したことですが、Cは不採用通知を出した▲▲の口コミにもあることないこと書き込んでいました。で、最終的には企業側の顧問弁護士から開示請求を受けて遠方の事務所に呼び出しを食らっていたのです。だからあいつ卒業式直前で無断欠席が続いていたのか。ちなみに▲▲の担当者は、相手が高校生だし反省しているからと念書のみの温情措置で済ませたそうです。あーあ。

ことが発覚した理由はクラスの生徒が「先生、Cがこんなのアップロードしていて」と見せてきたスマホの画面。そこには、▲▲の建物をバックに「今から、ちょっくら、謝ってくるわ✌」と書かれた文章。▲▲さん、はっきり言ってCは反省していないし、この手のやつに、その温情はまったく伝わっていませんからね。むしろ「反省するふりしたら、この程度で済むんだ」と里に下りてくる熊よろしく学習して、余計手に負えなくなります。次に別のところでやらかしても「▲▲は一筆書くだけで済ませてくれたのに」とか平気で言いますよ。この手のやつには最低限、開示請求でかかった弁護士費用くらいはきっちり請求すべきです。小学生ならいざ知らず、もう18歳ですからね。中学生でも逮捕される(下記)んだから徹底的にやって、この手の流れに歯止めをかける、先鞭をつけるべきでした。

【参考】
“SNSで教員を中傷” 名誉毀損の疑いで15歳中学生を逮捕

そんなCもなんとか卒業して、地元のスーパーに就職が決まりました。最後までブツブツ文句を言っていましたが、働かざるもの食うべからずですからね。それにしてもCみたいなのを普通の採用枠で採るって、昨今の事業所の人手不足はすさまじいですね。色々と考えさせられます。

なお卒業してすぐ、彼は小学生への強制わいせつで捕まりました。犯行現場は職場のトイレだったそうです。ほらね?

誰のための入試?

時は遡ってCさんが彼自身のために用意された補習や面接練習をブッチして彼女との17日間の儚い青春に明け暮れている頃、同じクラスのDは一生懸命に勉強していました。

この手の高校では、夏休みが終わると3年生の中には大学進学を希望し始める者が出始めます。それは得てして、

「おれ慶應大生になります!いやいや推薦ですよ。え、一般?そんなの無理ですよw」

勉強キライだけれも学歴ブランドは欲しいやつ

「京都大学に進学しようと思います。え、無理?いやいや、浪人しても頑張ります!やる気が大事ですよ!」

気合とやる気があれば学力がなくても高偏差値帯の大学に入学できると思っているやつ

といったコンテクストに分類されます。Dは前者の方でした。勉強をしている姿勢は見せるのですが、それは教科書にマーカーで線をひいて勉強した気になっているというアレ。教員がもっと着実な勉強法や参考書を勧めますが、彼女はそれらのアドバイスに耳を貸す気は一向にありません。当然、そんな方法で成績の伸びるはずもなく。夏も終わりに近づきつつあるなか、ついに本人から、ある申し出がありました。それは、慶應義塾大学のAO入試を受けるというもの。え、お前なにか他者に説明できるだけの実績や問題意識なんか持ってたっけ??

じゃあとりあえず志望動機書だとか学習計画表だとか任意書類だとか、そういう諸々を書いて持ってきな、とDに告げた田口先生。ところが本人から出たのは耳を疑う言葉でした。

D「いや、それは先生が書いてください。だって学費払ってるでしょ?

自分だったら怒りますね、こんなやつ。でもさすが田口先生は違います。怒りを抑えてだとは思いますが、大学がAO入試で欲しているのは、こういう書類を自分の力で用意できる人物だと説明します。そのうえで、今の問題意識を尋ねると

D「今の教育がおかしいと思います。今みたいに先生が生徒に親身になってくれないし、本気で私たちのことを考えるのならこの学校が慶應の指定校推薦くらい取ってくるべきでしょ!」

とのこと。頭湧いてんのか?田口先生はすべてを脇に置いて、まずは自分の言葉で書いておいでと促したそうです。さて、その後どうなったかというと……。

学校はサービス提供者でしょ?

はい、地域は変われど教育困難校であればここまでがテンプレ。保護者の登場です。曰く、学費を払っている以上、学校が進学先まで保証すべきだし、学校説明会でも校長が進学先を保証してくれるって言っていた!

ん?うちの校長、そんなアホなこと言ってたっけ?と思った田口先生はさっそく説明会のログを探します。こういう時、元公立の先生って絶対に記録を残しているからありがたいですよね。ありましたありました。校長先生のあいさつ文のWordデータが。そこに書いてあったのは「出口の質保証」という言葉。出口保証って在学中の教育の質の話であって進学先を絶対に確保するって意味じゃないからな?

保護者がこれでは、生徒自身に話が通じるわけがありません。最終的にDは親が書いた書類を提出して、当然ながら書類選考で不合格となりました。

この次もだいたいテンプレです。保護者が職員室にやってくるや否や、学校推薦型選抜で地元の国立大学に出願させてくれと懇願に来るのです。ちなみに学校推薦型選抜とは、一昔前の公募制推薦(含む指定校)のことです。Dは成績こそ教育困難校のなかではそこそこをキープしていましたが、いかんせん欠席が多いのが難点です。校内の出願基準は満たしていません。というかテストの点が思っていた以上に低かったり苦手な授業があると簡単に学校を休むやつ、学問に対して謙虚じゃないんだから大学側としてもいらないですよね。

なのに保護者が開口一番宣ったのは「出席日数を書き換えてくれ」。これを悪びれることなく当然の権利を行使するかのように要求します。この派生型として、成績を改変してくれと職員室に怒鳴り込む親も毎年のようにいます。そうやってホイホイ言うこと聞いて、簡単に改ざんできるんだったらシステムとして破綻しますからね。我が子のこととなると、そこまで考えられないのが今の保護者の怖いところです。

こうなると、一昔前の「人様の迷惑になることをするな」「先生に怒られるお前が悪い」と昔ながらの家庭教育制度は良かったように思います。少なくとも、学校教育とうまく接続していたと思いますね。七尾もよく怒られたものです。「昔は良かった、今どきの若い者は……」この慣用句、少なくとも学校現場には当てはまるような気がいたします。

Dはどうなったかって?結局、東京都内にある「⚫️⚫️大学」と称するカルチャースクールに"進学"しました。卒業式では「なんで式プログラムの進路一覧の「大学」欄に入ってないんだ!」と怒ってましたね。だからそこ、無認可校じゃん(・ω・`)

お客様化する生徒たち

個別最適化というキーワードが叫ばれて久しい今日の教育業界。生徒一人ひとりの能力を伸ばすために、ある種個別に支援をしていく。言葉から連想される内容は美しいですし耳あたりも良いですが、さて、「平等」意識が身体の芯まで染み付いた日本人に、これは果たして受け入れられるのでしょうか。

「なぜウチの子ではなく△△家の子ばかり目をかけるんですか!」
「勉強ができる子だけじゃなく、もっとウチの息子の勉強も放課後に個別で見てあげてくださいよ!」

こうなるの、目に見えてません?個別最適化の前に、平等と自由は両立しないことをまずは全日本国民が認識すべきです。だって入試は自由である代わりに競争ですよね。それを理解していない生徒、保護者のなんと多いことか……。いやいや、そんなことはない。ちゃんと理解している高校生や保護者はそもそもこんなアホな些末なことでネット弁慶になってカキコミをしないし、学校に怒鳴り込んでくることもない。

ちなみに、この手の受験児生はもれなく全員、年の瀬を迎える頃には周りとの実力差を理解し始め、徐々に学校を休みがちになります。

曰く、「受験のプレッシャーで」「体調不良で」、はたまた「学校の授業が低レベルだから受験に対応できない」等々。このように、なにか自分の受験がうまくいかない、もしくは落ちた時の理由を探し始め、登校しなくなるのです。これまで勉強してこなかった自分の責任なのにね……(・ω・`)

そして、卒業式前後には「学校がなにもしてくれなかった!」と文句を言いに来るか低俗な掲示板や口コミサイトなんかにカキコミをして、「自分は悪くない!悪いのは学校!親!周りの大人!社会!」と狭い世界で気炎を上げて、その小さな小さなプライドを保つのです。

こうやって教育現場は今日も疲弊していくのでした。

華麗なる(再)異世界転生

そんな折、田口先生は登録していた転職サイトのエージェントからオファーを受けます。関西圏の物流企業でした。実は彼、大学生の頃に上海へ留学していた経験があり、英語と中国語が堪能です。台湾企業の進出で半導体景気に沸きつつある九州。今後は日台双方で活躍できる人材の育成が急務です。彼のような語学に明るく、研究熱心でさまざまなコミュニティにも積極的に参加する。かつ教育界に身をおいていて不条理耐性を持っている人材は、その業界への進出を目論む企業にとっても喉から手が出るほど欲する人材だったに違いありません。教育困難校でアホばかり相手にして疲弊していた田口先生は、その話に飛びつきました。こうして転職した田口先生あらため田口さん。働き始めてまだ半年とちょっとですが、毎日が楽しいといいます。それはなぜか。社内でも社外でも話が通じて社会通念が共有できているからだそうです。分かる~。

こうしてまた、現場から教員がひとり去っていきました。そうやって教育困難校、更には日本の教育制度そのものが音も立てず静かに瓦解していくのでした。めでたしめでたし。

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