帰省②
青森に帰ってきてから、一度高専の友達の家へと遊びに行き、その後何日か母方の実家へと行った。それらの日について書きたいことはあるのだが、今はうまく書けそうもないので、その次の日からのことを書こうと思う。
いつまで経っても道は覚えられない。帰ってきてから一度遊びに行った一人暮らしを始めた友人の元へと車を走らせる。運転は好きだが、怖い。走り始めてすぐに、これまで感じたこのない悪寒がした。
直感的に「今日事故って死ぬかもしれない」と思った。なぜか、手が、唇が震える。小刻みに震えるそれがどうにも止まらない。
一度コンビニに車を停め、落ち着こうとしてもダメだった。思いつきで友達に通話をかけ、話しながら走った。
その日は花火大会だったらしく、浴衣を着た綺麗な人たちが歩いていて街はそわそわしていた。半ば渋滞のようになっていて、全然進めない。
外は段々と暗くなる。車線が多い道は苦手だ。ひとつのことにしか集中できない自分は何度も道を間違えた。
道を間違える度に「ごめんごめん」と空に謝りながら走る。いつの間にか震えは止まっていたけれど、今度は逆にハイになっていた。テンションが変な上がり方をして、右ね、左ね、ここをぐるっと回りますよ、と逐一声に出す。
なんとか辿り着いて、空いている玄関の扉を勝手に開ける。友達と同じ研究室の異性の友達がいると聞いていて、その友達が目の前にいた。勝手に笑顔になった。一度遊びに行ったときに会えた後輩もいてよかった。こういう偶然がないと、もしくは自分が誘わないともう高専時代の異性とは会わないんだろうなと思った。
少し休んで、お好み焼きを食べに行った。たわいのない話、あのときのように話すことができた。この四ヶ月間のいろいろを聞いて、その密度の高さに驚く。何もないことも、何かありすぎることもどっちもよくない。しかし中途半端はもっとよくない。自分も含め、あのときの一緒にいたときの空気はやっぱり特別なものだったんだろうなと、ほんの少し、ほんの少しだけだけ変わった空気が漂っているのを感じていた。
お好み焼きをひっくり返すのを失敗したという話を友達がして、それをリベンジさせる。動画も撮った。うまくいっていた。意識的に写真も動画も撮らないでいることがいいことだと、それが真正面に青春を過ごす方法だと思っていたけれど、これからは寧ろ撮らなければいけないという思いが強くなっている。高専の友達といるときは特に。残さなきゃって感じる。お酒が弱い僕たちの横で、どんどんとグラスが空になっていくのを見ていた。
お腹いっぱいになって、戻って、シャワーを浴びて、みんなで寝た。部屋にありったけのマットレスとかヨガマットとか、毛布を敷いて、さながら修学旅行の夜のようにした。
少し追加でお酒を飲んで、何か話した。
寝るなって言っているやつが結局自分より先に寝るんだよなと思っていたら、本当にその通りになっていて、なんだかなと思った。
微笑ましくもあり、寂しくもあり、特別な時間であることを噛み締めながら、三時頃眠りについた。
朝になり、眠気と頭痛で頭が冴えない中、後輩が買ってくれたという鰻を白ご飯と一緒にみんなで食べた。朝の光が優しくて、おいしくて、なんだかとてもいい時間だった。
異性の友達と後輩はそれぞれの次の場所へと行きバイバイした。またねって言ったのかバイバイって言ったのかは覚えていないけど、またねって気持ちで見送った。