菜種規則
エッセイ集です
短編集です
「ありあまるほど金があったら何をしよう」なんて考えていた。バスの中、ポケットの中の携帯を取り出すことすらめんどうくさくて、私はどうでもいいことを考えることで暇を潰そうと思った。 赤信号。身体全体がエンジンの身震いで細かく不規則に揺れている。なんとなくクラッチを変える瞬間を見たくて運転手を凝視していた。頭では何か欲しいものを、目は手を。考えているような、考えていないようなあのまどろみの時間。猫が欲しいなとかそんなことを思った気がする。 一瞬。身体が浮いたような感覚を覚え、
この記事はbiol2024アドベントカレンダー1日目の記事です https://adventar.org/calendars/10900 一番勉強をしていた子に「なんでそんなに勉強するの?」と直球で聞いたことがある。確か高専2年生の頃だ。彼はクラスの中で「勉強ができるキャラ」としてみんなから見られていて、彼もそれをアイデンティティとしていたように思う。彼は放課後に勉強ができない人たちを集めて自主的に「授業」を開催するようなヤツだった。 流れるような話し方と特徴的な丸字のき
自己否定の鬼である。二十歳を超えたらもうちょっとマシな人間になっていると心の底から思っていた。余裕ができて自信が生まれていると思っていた。精神的に自立できて、自分の機嫌は自分でとれるようになると思っていた。 小学校の頃だ。うちの田舎の小さな学校は下校を一斉に行う。六年生がリーダーとなって一列に、私語なく完璧な下校を遂行しなければならなかった。一番前に先頭で舵を切る六年生、一番後ろにも監視役の六年生。僕は一番後ろの監視役だった。 怖い担任の先生がいて、黒のでかい
この記事はbiolアドカレ2023(https://adventar.org/calendars/9248)、6日目の記事です。 前日の記事はこちら↓ 大学に来てからといえば、本当につまらない毎日である。 朝は起きれないし、授業は全く頭に入らないし、この前の生態学概論はちゃんとDだった。 何か満たされず、死ぬほど寝ても寝不足だ。何を食べてもこれじゃないって思う。いつからこんなに満たされなくなったのだろう。春、そう春には失笑を浮かべながらも期待でいっぱいの私がいたはずな
帰省について書こうと思ったのは、この日のことがあったからだ。前置きしておくが、その日についてネガティブなことをたくさん書く。だから、自分の知り合いは特に読むか読まないかちゃんと判断してほしい。もし、自分がまだ高専にいたらこんな文章は書かないと思うけど、もうそれぞれの場所だから、だから許してほしいというか、書いてしまいたいと思っているから書いてしまう。前置きは終わりだ。 指定された店へと前日泊まらせてもらった友達とバスで向かう。高専時代の男子が一斉に集まる飲み会がその日は
青森に帰ってきてから、一度高専の友達の家へと遊びに行き、その後何日か母方の実家へと行った。それらの日について書きたいことはあるのだが、今はうまく書けそうもないので、その次の日からのことを書こうと思う。 いつまで経っても道は覚えられない。帰ってきてから一度遊びに行った一人暮らしを始めた友人の元へと車を走らせる。運転は好きだが、怖い。走り始めてすぐに、これまで感じたこのない悪寒がした。 直感的に「今日事故って死ぬかもしれない」と思った。なぜか、手が、唇が震える。小刻みに
久しぶりに戻った地元は私を歓迎していないように思えた。 八月。地元である青森へ帰省した。四月に大学進学のために故郷から離れ一人暮らしを始めた自分にとって帰省というものをするのは初めてで、最初はどれだけ感慨深いものなのかなとか想像していたけど、当然といえば当然そんなものはなく地元はただの地元だった。 駅のホームで父親が出迎えてくれて家まで車で帰る。自分に土地勘がなく、さらに深夜ということもあってか、見慣れない道がずっと続いていた。街灯が本当に少なく、そして怖いくらい静
路面が赤い道路を過ぎたら電話をかけるのがお盆に母方の実家へと行くときのいつもの習慣だった。母から携帯電話を借りて番号を打つ。数回コールがなって祖母が決まって電話に出た。 「赤い道路すぎたよ、もうすぐつくからね」 「おばあちゃんだよ、わかったよ、気をつけて来るんだよ」 車線を変更して橋を渡る、そのとき左手に見える海が好きだった。さびれたカラオケを通り過ぎ、中古車が並んだところを過ぎたらもうすぐだった。車を駐車場に止めて、僕がチャイムをならす。ガラガラと玄関の扉を開け
「言葉と目が合う」瞬間がある。そう、それは運命の人と会ったようなそんな感覚で……流石に言いすぎだな。そう、それはTwitterで「エンカ」するような感覚である。 最近は全然新しい言葉と目が合っていない。 一番最後に目が合ったのは「サージカルマスク」さんだろうか。何かの文章で出てきたサージカルマスク。サージカルマスク? 英語に疎い自分は意味を調べた。 広義には医療用のマスク、狭義には外科手術で使われるあの青いマスクのことだった。なるほどなるほど。サージカル、外科、確かにそんな
日々を快適に生きるコツはこの世の全員ゾンビだと思うことだ。昔、お母さんが教えてくれた魔法。僕はうまくやっているよ。 小学一年生、僕は初めてのピアノの演奏会でゲロを吐いた。コンクールとかそんな大それたものじゃなくて、普通のピアノ教室での演奏会。課題曲は「きらきら星」だった。緊張っていうものを僕は生まれて初めてそこで知った。みんな僕だけを見ている。たかしくんもまきちゃんもまきちゃんのお母さんもえみ先生もそして僕のお母さんも。みんなだ。みんな僕を見ている。 名前を呼ばれた。僕の
2022年の筑波大学・生命環境学群・生物学類の編入試験を受け、合格できました。これから生物学類を受験される方の助けに少しでもなれればと思い、体験記を書かせていただきます。受かったらぜひ飯を奢らせてください。 ※ 成績開示が5/1以降に申請できるので、それ以降に結果が出次第それも載せようと思っています(4/23) →受験結果に追記しました、遅くなってごめんなさい(5/18) ※⚠️情報は筆者が受験したR5年度のものであり、主観的な経験を多く含みます。ご了承ください。 自己