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『獄中からの手紙』ローザ・ルクセンブルグ
『獄中からの手紙』
ローザ・ルクセンブルグ
秋元寿恵夫訳 (岩波文庫)
革命家が書くものといえば、もっぱら檄文だという思い込みがありました。
ましてやローザ・ルクセンブルグはスパルタクス団の政治理論担当者、ブレーンだったのです。
しかもタイトルは『獄中からの手紙』。
第一次大戦直後のドイツの最左翼革命家らしい、厳しく激しいメッセージを期待してしまったのでした。
ところが、幼馴染のゾフィーにあてた手紙は、どのページを開いても、明るい空気や風のささやきや、木々や草花や鳥たちとの対話といった、目の前にある自然の輝きをそのまま閉じ込めたような、光とみずみずしさに溢れています。
文芸や音楽、旅を愛し、想像の翼を広げている、幸せそうな女の子! まるで赤毛のアンの世界です。
囚われの身にある人が書いたとは思えない……
ローザの明晰な頭脳とゆるぎない信条は、どんな状況にあってもむやみに落ち込むことを許さなかったのでしょう。文通相手のゾフィーを気遣い続ける心の強さもそうです。
ローザは1919年、ドイツ革命の蜂起のさなかベルリンで虐殺されました。47歳でした。
(翻訳も少し古風なところがとても好きです)