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被災しなかった人のリテラシー

令和6年1月1日、能登地方で大きな地震があった。
日本は地震の多い国であり、どの地域でも地震に遭う可能性がある。
地震以外にも豪雨や台風による災害は毎年起こっている。

しかしそれでも、長期の避難が必要になるような大規模な災害に遭う人は、日本全体の人口に比べれば多くはない。
災害に遭ったときに備えて避難グッズを準備したり、ハザードマップを確認して避難所を調べたりしよう、という呼びかけは度々なされ、例えば行政や学校で知らされる一方、被災しなかった人がどう行動すべきか、の呼びかけは、前者に比べれば声が小さい。
大きな災害が起こったとき、被災した人より被災しなかった人の方が多いのだから、被災しなかった人がどう振る舞うべきか、被災しなかった人のリテラシーももっと高めていった方がいいと思う。

時間が経つにつれ変わってしまう部分もあるかもしれないけれど、今思いついた「被災しなかった人のリテラシー」は次のとおり。


正確な情報を見極める

大変残念なことに、SNS上ではデマが発生する。注目を浴びたい人や愉快犯など目的は様々なだろうけど、不正確な情報は混乱を招き、気持ちを傷付け、災害支援を邪魔することにもつながりかねない。SNS上の情報は速報性があり、現地の人が直接発信できるという点で優れているけれど、デマも多いという前提で見なくてはならない。何が正確で、何を拡散すべきなのか。

一見、拡散することが善意に見えるような情報もある。
令和6年能登半島地震では、個人宅の住所を書き、被害に遭っているから助けて欲しいというポスト(ツイート)を複数件見かけた。本当に被害に遭っていて助けを求めているのかもしれないし、悪戯かもしれない。
SNSができるなら119番に電話できると思う → しかし電話が混雑していてつながらなかったのかもしれない → ネットからテキストで通報できるサービスもある → そのサービスを知らなかったのかもしれない等々、しかしその見極めは難しい。迷ったら拡散しない方が無難であるように思う。

ひとつ情報が加わるだけで、見方が大きく変わることもよくある。
他人の意見に振り回されず、自分で判断しようと努力せねばならない。


被災地に問い合わせをしない

被害状況はどうなっているのか、物資は足りているのか、がんばれ応援している、など、例えそれが善意に基づくものであっても、災害直後の現地への問い合わせは邪魔である。現地はそれどころではない。あなたの電話を受けたせいで、助けを求める人の電話を受けられないかもしれない。メールでも、目的に合った場所以外からのメールは控えよう。重要なメールが埋もれてしまうかもしれないし、返信にも手間がかかる。専用の問い合わせフォームがあればそこを利用しよう。

問い合わせしたい内容があれば、自治体や関係団体のホームページ、SNSを確認しよう。もし更新されていなければ、更新する余裕がないほど忙しいということである。載っていないからといって電話してはいけない。
自分の1件くらいと思ってはいけない。同じように思う人が多ければ、現地で受ける電話は膨大な量となる。

報道目的の電話も同様である。被害はどれくらいか、避難している人はどれくらいいるかなど、救助を求める人のための電話番号にかけてはいけない。専用の問い合わせチャンネルがあればそれを利用し、あくまで救助や復旧を支援する、という気持ちを忘れてはならない。


来ていいと言われるまで現地に行かない

ボランティア活動について

令和6年能登半島地震では、救急車や消防車のような緊急輸送車両以外は通行禁止にするお知らせが出された。
一般車両が渋滞を起こし、救助や復旧の妨げになるからである。
一般車両の目的は、物資を届けたりがれきを撤去したりする目的で、基本的には善意なのだろうけれど個人では効率が悪いため、却って邪魔になってしまう。「善意を断るなんて何様だ! こっちは助けてやってるんだぞ!」と思う人は絶望的に災害支援に向いていない。それは助けている(つもりの)自分に酔いたいだけである。

渋滞以外にも、人が行けば資源を消費する。食料や飲み物は持参したとしても、トイレはどうか。トイレを使用して水やトイレットペーパー、使用可能機会を消費していないか。簡易トイレを持ち込んでいるから迷惑をかけていない、という人も携帯電話の通信帯域を消費してしまわないか。ゴミは全て持ち帰っているか。微々たる量なら問題ではない、と思う人が大挙して訪れたらどうなるか。
慣れない土地、傷んだ道路を通行することで怪我したり事故に遭ったりして手間を増やす可能性もある。

一般的に、ボランティアの受付はしばらく時間が経ってから、地元の社会福祉協議会等が中心となって募集されるので、ホームページ等でよく調べ、勝手に行かないようにしよう。

例えば令和6年能登地震で公益社団法人石川県県民ボランティアセンターが発した次のメッセージには、以上の二点がよく表れている。

能登方面への支援・災害ボランティアに関するお願い
今回の地震で甚大な被害を受けた能登方面については、多くの地域で災害ボランティアの受け入れ態勢が整っていない状況にあります。

また、能登方面へ向かう道路については、深刻な渋滞が発生しており、こうした中で個別に被災地へと向かおうとすると、支援物資の到着の遅れや、患者の輸送回数の減少など、救助・救援活動に大きな支障をきたす恐れがあります。

そのため、災害ボランティアを希望される場合は必ず、事前に本県特設サイト等で受け入れ状況をご確認ください。また、各市役所・町役場・社会福祉協議会等には、電話でのお問い合わせは控えていただきますようお願いいたします。

https://www.ishikawa-npo.jp/volunteer/1667

観光について

大きな災害に遭った地域は、観光地として敬遠されがちである。首里城や熊本城は今修理中だから直ってから見に行くことにして、今回の旅行は別の場所に行こう、のように思ってしまいがちである。
特に観光地として有名な場所は、観光で稼いでいる面も大きいだろうから、観光客が少ないと経済的に苦しくなる。

目玉となる観光スポットが見られないのは残念ではあるが、それ以外の新たな観光スポットを発見できるかもしれないし、修理中というある意味では貴重な様子を見られるかもしれない。また、普段は混雑している場所も、空いていて快適に観光できるかもしれない。

災害直後は行くべきではないけれど、ある程度時間が経ち現地から観光OKのサインを受け取ったら、旅行の行き先として、候補のひとつに入れてみよう。

義援金を送る

災害に心を痛め、何か自分にもできることはないか、と考えたとき最も有効な手段は義援金を送ることである。
物や食料は送られた方の管理が大変なので求められない限り送ってはならない。「テレビで毛布が足りないと言っていたから毛布を送りたいの」との考えも却って迷惑となる可能性が高い。遠くから送るには時間もかかるし送るための運送力も消費してしまう。お金を送って、もっと近所から調達した方が効率的である。

義援金を送るときは、効率的で、詐欺ではない募金先を選ぼう。

街角で行われている募金活動は、大変残念ながら詐欺の可能性を排除しづらい。
信頼できる団体か確認できないし、信頼できる団体の名前を自称している可能性だってある。いたいけな園児が募金箱を持っているからといって安心はできない。いたいけな園児が自分の意志で募金活動をしないだろうから裏には大人達の意志がある。
義援金を送るつもりはなかったけど街頭で呼びかけていたから送る気持ちになった、という募金活動をする側のメリットはあるけれど、送ろうと決めた人側のメリットは少ない。

もちろん完全に善意で、信頼できる団体が行っている場合もある、というかそう言った団体の方が多いのだろうけれど、敢えて街頭募金に応じるメリットがないのなら、実際に募金箱にお金を入れるより、ネットを利用した方が効率が良い。すぐに届くし詐欺の可能性が低い。額が大きい場合、寄付控除のための書類を得られる団体もある。

最も確実なのは、やはり日本赤十字社である。
また、自治体が直接受け付けている。

そのほか、Yahooやふるさと納税のサイトも普段利用している人であれば、既にクレジットカードを登録していたり、ポイントを利用したりできて便利。
Yahooの寄付は、自分が送った義援金と同じ額を、Yahooも送ってくれる。つまり、現地に届く金額が2倍になる(上限あり)。

赤十字社やYahooを名乗る詐欺もあるようなので、メールやSNSからのリンクではなく、ホームページを確認してから送金しよう。
(ここにリンクを張って寄付先に飛ぶようにすることもできるけど、自分で確かめてから寄付して欲しいのでリンクを張っていない)

ネットが苦手な人は、市役所や区役所に行くと募金箱が置いてあることが多いので利用しよう。詐欺の可能性は低くなる。

有益な情報を提供する

もし自身が何かの専門家で、災害復旧や救助、避難所生活で有益な情報を持っていたら、発信しよう。
また、以前被災した経験がある人は、その時の気持ちや情報も役立つ可能性が高い。「これが有効だと思われているけど実はそこまで嬉しくなくて、こういったものの方が嬉しい」とか、「見逃されがちだけどこの点に気を付けた方がよい」とか。
被災状況によって役に立ったり立たなかったりするけれど、経験してみないとわからないことはたくさんあるだろうから。

上から目線や攻撃的にならないよう注意して、情報発信してみよう。


経済を回そう

ボランティアに行ったり義援金を送ったりする余裕もないし、有益な情報を持っていない、という人は普段通り生活して経済を回そう。
災害が起こったからといって自粛して大人しくしていると経済の回り方が遅くなる。普段通りに生活してお金を使うことが、遠回りではあるけれど被災地のためになる。
普段の生活をしつつ、もし可能なら、被災地の特産品を買ったり、募金付きの商品を選んだり、ふるさと納税の対象にしてみよう。


継続して関心を持ち続ける

災害直後はマスコミの報道も多いしネット上でも簡単に情報を得られるけれど、時間が経つにつれ、その数は減ってしまう。
大きな災害の場合、報道される量が減ったとしても避難所生活が続く人がいる。
自然と耳に入る情報が減ってきたら、自分で情報を取りにいく必要がある。観光に行っていいかどうかも調べないとわからない。

関心があれば調べもするし、再び寄付をする気持ちになるかもしれない。
忘れないでいることも、立派な被災地支援の一環である。

だから今すぐ、スケジュール帳に書き込もう。
一ヶ月後、三ヶ月後、半年後にの日付に「被災地の現状を調べる」と。


まとめ

  • 正確な情報を見極める

  • 被災地に問い合わせをしない

  • 来ていいと言われるまで現地に行かない

  • 義援金を送る

  • 有益な情報を提供する

  • 継続して関心を持ち続ける


被災しなかった人の善意が、上手に活かされますように。

名角こま

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