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成す塾生徒の成長記⑦
中3のT君の場合
T君は、成す塾に入塾してくれた生徒の中でも、かなり優秀な生徒でした。(成す塾は基本的に勉強が苦手な生徒向けの学習塾です)
中3の最初のテストで、英数ともに80点近くでした。
それでも、前期の内申は両方とも3でした。
内申は5段階で、様々な要素で決まります。テストだけで、決まるわけでは無いのですが、テストとしては、80点くらいで4になる。90点くらいで5になるというのが、目安です。
「英数を4にする!」という目標を立てて、 T君の挑戦が始まりました。
夏期講習中は、成す塾に通い詰めてくれて、とにかく定期テスト対策に全集中しました。
これは僕の個人的な考えですが、中3の夏は、まずは定期テスト対策をしっかりするべきだと考えています。(早稲田、慶應、日比谷、西、横浜翠嵐など最上位校を目指す生徒は話は別です)
というわけで、夏休みは定期テスト対策をトコトンやりました。基本的な内容をおさえ、学校の先生が出しそうな応用問題を徹底練習しました。T君はとても真面目で、優秀ですが、難しい問題があると、すぐにへこたれてしまうところがありました。克服するために、難しい問題にどんどん挑戦させました。わからなければすぐに解説して、同じ問題を解かせて、また解説して、を何度も繰り返しました。T君があるとき、「3回やって分からない問題は一生分からないって教わりました」と言っていたので、反論しました。
「僕はその考えを、人生かけて否定してみせるよ。どんな問題でも100回やったら絶対できるようになる。できない問題ってのは、できるようになるための努力を途中で放棄した問題だけだよ」
T君は納得いかない顔しながら、渋々、難しい問題に挑戦しては、打ち砕かれるという経験を繰り返していました。
夏休み後のテストは2回あり、夏休み前のテストと合わせて3回で、入試の内申が決まります。
夏休み明けてすぐに、最初のテストがありました。準備万端で臨んだテストは、数学がギリギリ80点を超えましたが、英語は届きませんでした。
また、数学の応用問題は正解できず、取り掛かることもできなかったそうです。
「応用問題、ムズ過ぎ!! 絶対無理!!」と、T君は怒っていました。
それでも、僕は応用問題を解かせ続けました。
「基本ができてるんだから、大丈夫、絶対できる」そう伝え続けました。T君のイライラは日増しに、強くなっていきました。難しい問題も、答えを見たり解説を聞けば理解できるのですが、最初に出てきたときに解くことができません。でも、問題に取り組んでいる様子を見て、確実にレベルアップしているのが僕にはわかりました。
「あとは気持ちだな」
そう思った僕は、少しだけ問題の難易度を下げました。すると、T君は全ての問題を全部解いていきました。
「この問題簡単じゃないですか?」
「え? そう? たまたまじゃない?」僕はとぼけて答えました。ここで、おだてたりすると逆効果な気がしました。根拠はありません。
そして、また問題の難易度を上げました。
以前よりも、ほんの少し、できる問題が増えました。答えまでたどり着けなかった問題も、かなり良いところまで、進められるようになりました。
本人も少しずつ手応えを感じてきている気がしました。素直に表現はしないんですけどね。
そうやって、少しずつの成長を繰り返し、最後のテストをむかえました。結果は、英数共に80点台後半を取りました。嬉しそうな様子でしたが、やっぱり数学の1番最後の問題が難しくて、 全然分からなかったと言っていました。200人以上いる生徒の中、1人しかできなかった問題だったそうで、「先生解いてみてよ」と言われたので解いてみました。たしかに難しかったのですが、そこまでとは感じませんでした。
僕「別に難しくないよ。たしかに、計算は長いけどね」
T君「それは先生だからでしょ!」
僕「ていうかどうやって解いたの?」
T君「これが途中式、でも全然答え違ったよ」
そこで、T君の途中式を見てみると、正しい計算式の、+と−が違っているだけでした。
僕「なんで、これ足してるの?」
T君「ん? あ!! やっちまった!!」
僕「これマイナスで計算してごらん」
するとT君はスラスラと計算を始めて、正解を出していました。
T君「まじか!くっそ〜!」
僕「まぁ、学年1人しかできない問題も、できる実力がついたってことじゃない?」
T君は悔しそうだけど、満足そうな表情を浮かべていました。
英数の内申は両方とも4になりました。
と書いて、終わりたかったのですが、T君の内申は英数共に3のままでした。僕は、内申が上がらなかったという報告を受けたとき、めちゃくちゃ悔しかった。
僕はこの内申制度というものに反対です。明確な基準が無いまま、ほとんどの先生たちは自分達の持論で成績をつけています。テストの難易度も学校によってバラバラで、提出物を見る先生、見ない先生、提出物の評価基準もバラバラです。授業態度の成績への組み込み方も基準はありません。観点別評価の、「主体的に学ぶ態度」に関する考え方も、先生によってバラバラです。
何の基準もない中で、生徒たちが唯一、明確に努力する方向性が示されているもの。それがテストです。そこで、最大限努力をして、基準をクリアしたT君に正当な評価がされなかったことに、僕は心から納得がいかない。絶対間違ってると思う。
まぁ、こんなところで、僕一人が怒ったところで何も変わらないのでこの辺にしておきます。今はまだ目の前の生徒、一人一人に寄り添って、成長した喜びを実感させる。それを愚直に繰り返していきます。 そしていつか…この国の…
まずはT君の努力がちゃんと報われるように、高校入試に向けて一緒に頑張っていきたいと思っています。
応用問題ができる実力があることは、証明しちゃったからね。