リバロキサバン(イグザレルト®)は生体弁による僧帽弁置換術後の心房細動に対する選択肢になるだろう。
生体弁置換術後と心房細動を合併する場合の抗凝固療法にDOACもワルファリンに劣らないというエビデンスが徐々に蓄積しており、本論文もそのひとつになりそうです。
【概要】
心房細動+生体弁による僧帽弁置換術後を受けた方を対象に、リバロキサバン20㎎またはワルファリン(PT-INR 2-3)で抗凝固療法を行いました。
主要アウトカムは死亡、主要心血管イベント(脳卒中、一過性脳虚血発作、血栓症、人工弁の血栓症、心不全による入院)と出血イベントを評価しました。
今回の主要アウトカムの評価方法はこれまでの論文でよく見られた、ハザード比の比較ではなく境界内平均生存時間RMST (restricted mean survival time)を用いています。この詳細の説明は非常に長く難しいため割愛しますが、両群のRMSTの差をみることでイベント発現までの期間がどれほど延長するか評価できます。 詳細な説明はこちらのリンクでみることができます。
【結果】
1005人の対象者をリバロキサバン群500人、ワルファリン群505人に割り当てて評価しました。
主な試験参加者のプロフィールは平均年齢59歳、男性40%、CHA2DS2-VAscスコア2.6点、HAS-BLEDスコア1.6点です。
不整脈の内訳は発作性心房細動22%、持続性心房細動11%、永続性心房細動62%、心房粗動4%です。
主要アウトカムが生じるまでの平均期間はリバロキサバンで347.5日、ワルファリン群で340日で、リバロキサバンはワルファリンに対して非劣性を示した。(RMST difference, 7.4 days; 95% confidence interval [CI], −1.4 to 16.3; P<0.001 for noninferiority) これはリバロサキバンが優れているという意味ではなく、ワルファリンと同等の効果が期待できる、という解釈になります。
その他の評価では、心血管死や塞栓症がリバロキサバン群で17人(3.4%)、ワルファリン群で26人(5.1%)、脳卒中はリバロキサバン群で0.6%、ワルファリン群で2.6%でした。(下記table2) これは他の研究でも示されるように出血イベントはDOACの方が少ない印象です。
出血イベントはリバロキサバン群で1.4%、プラセボ群で2.6%でした。 (下記Table3) 副次評価項目の一部は統計学的有意差はあるもののイベント数が非常に少ないために、両群で大きな差がないくらいの受け止め方になるでしょう。
【個人的感想】
以前より生体弁+心房細動の抗凝固療法にDOACもワルファリン同様に用いることができる論文がありましたが、この論文で知見が積み重ねたと言えます。ワルファリンVS DOACの研究はたくさん出ていますが、出血イベントはDOACの方が少ないのは一貫しているようです。
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