間質性肺疾患に伴う肺高血圧に対するtreprostinilの効果について
noteに書くには超絶マニアな領域になってきました。
マニアな内容かもしれないけど、確実に進歩してきている分野のひとつだと思います。
TreprostinilはプロスタサイクリンI2誘導体で肺と全身の血管拡張作用と血小板凝集抑制作用を持ちます。すでに第1群の肺高血圧症(肺動脈性肺高血圧症)に対するTreprostinil吸入は12週間後の耐運動能の改善が示されました。先行研究では第3群の肺高血圧症(ここに間質性肺疾患に伴う肺高血圧が分類される)でもTreprostinil吸入により血行動態と機能改善が示唆されているために今回の研究が行われました。
研究形式
多施設、ランダム化、二重盲検、プラセボ比較
16週間追跡
Patinets 対象者
間質性肺疾患+肺高血圧症
Intervention 介入群(Treprostinil群)
Treprostinilを1日4回吸入します。
専用の超音波ネブライザーを用いて吸入します。1吸入で6μgのTreprostinilを吸入することができて、試験開始時は1回3吸入を1日4回行います。(1日量72μgで開始。)
これを3日ごと増量して、最初の目標は1回9吸入まで増加していきますが、忍容性がある場合は最大1回12吸入まで増加しました。(1日量288μg)
Treprostinilは商品名TYVASO®(タベィソゥ?)で薬剤と超音波ネブライザーの使用方法などは誰でも確認することができます。
https://www.tyvaso.com/dtc/
気管支喘息に用いる吸入器と比べると結構デカイ。
Comparison 対照群
プラセボの吸入
Outcome 評価項目
主要評価項目
試験開始時(ベースライン)と16週時点で6分間の歩行距離
副次評価項目
NT-proBNPの値
Result 結果
326人が参加して、Treprostinil群163人、プラセボ群163人に割り当てられた。参加者背景の概要は、65-80歳が56%、男性が53%、白人73%(アジア人3.7%)原疾患は特発性間質性肺炎(IIP)45%、気腫合併肺線維症(CPFE)25%、膠原病22%が上位3つです。
酸素療法は72%、抗線維化(pirfenidone, nintedanib)は23%で行われています。
主要アウトカムであるベースラインから16週時点における6分間歩行距離の調整済み平均値の差でTreprostinil群で+31.12mであった。(95% 信頼区間, 16.85 to 45.39; P<0.001)
要はTreprostinil群で16週間後の6分間歩行距離がプラセボ群よりも30mくらい長かった。(Supplemetary appendixに試験開始時点の6分間歩行距離が確認することができ、全体では259mでした。16週間後にTreprostinil群で約280m、プラセボ群で約250mになったことになります。)
副次評価項目である、NT-proBNPはTreprostinil群で15%減少したが、プラセボ群では46%増加した。
Treprostinil群で頻度が多かった有害事象は、咳、頭痛、呼吸困難、めまい、嘔気、倦怠感、下痢であった。
【結論】
間質性肺疾患に伴う肺高血圧においてTreprostinilは6分間歩行距離で評価する運動機能が改善することを示した。
【個人的感想】
16週間の追跡と短い評価ですが、歩行距離を明らかに伸ばしたことは結構重要なことではないかと感じました。
Supplemetary appendixでは、呼吸機能など他の評価項目も両群で比較していますが、短期間のためか歩行距離以外の項目のほとんどが差を認めていません。少し気になったのは、歩行距離が伸びているにも関わらず、両群のOQLは改善していなかったということです。
20-30m長く歩くことができるだけでは、まだ実感として感じないのかもしれませんし、評価期間が短いことが原因かもしれません。