ルールを知れば面白くなる SDGsのトリセツ(4)
名寄新聞での連載第4回です!熱力学の第1・第2法則が出てきたりして、今回と次回がこの連載の一番の難所かもしれません。
この連載では中学生でも理解と応用ができる内容を目指しています。文意が読み取れない所があったら、ぜひ筆者にご連絡ください。
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また、講義やグループワーク・フィールドワークなどを通じてSDGsや持続可能な社会のルールについて理解を深めることも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
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ルールを知れば面白くなる
SDGsのトリセツ(4)
SDRs研究所 所長 奈須 憲一郎(下川町在住)
物質は消えずに拡散する
持続可能な社会の4つのルールの元になっている考え方を紹介する2回目。循環を考える上で大切な物質やエネルギーに関する基礎的な科学法則二つについて。
一つは「物質やエネルギーは、消失することも、作り出すこともできない」という熱力学の第1法則だ。高校の物理で習った方もいるだろう。エネルギー保存の法則とも呼ばれる。
地球の誕生以来、物質やエネルギーは、その形態こそ変化しても、全体としては変わっていない。だから、あなたの鼻毛を構成する炭素は、1億年前に恐竜が排泄した糞に含まれていたものかもしれない。何か臭う?気のせいだろう。
また、自動車を走らせればガソリンタンクは徐々に空になっていくが、ガソリンの成分が消えて無くなったわけではない。燃焼によって熱エネルギーや排気ガスといった目に見えない形態に変化しただけだ。
もう一つは「物質やエネルギーは拡散する傾向がある」という熱力学の第2法則。エントロピー増大の法則とも呼ばれる。これについてはみなさん日々実感しているだろう。
放っておけば部屋の中は物でどんどん散らかっていくし、どれだけかんばって片付けたところで、ちり・ほこりはどこからともなく湧いてくる。「どこからともなく」と書いたが、このちり・ほこりにも元はある。
「何を当たり前のことを」と思うかもしれないが、この逆のことは起きないというのが大事なポイントだ。ちりやほこりが自然に集まって最新のスマホになったら大ニュースになる。
こうして散り散りになった物質は主に生物圏でずっと循環する。地球の誕生が46億年前。生命誕生は38億年とも言われていて、それ以来の永遠とも思える物質循環の中で少しずつ今の生物が暮らす環境が整い、循環のバランスが取れてきた。
この循環のバランスを崩すような物質、あるいはこの循環になじみのない物質を投入するとどうなるのか。論理的に考えることもできるが、歴史から学ぶこともできる。
*生命誕生については海洋研究開発機構(JAMSTEC)とスプラトゥーン2のコラボプロジェクト『ジャムステ〜ック』サイトの「地球46億年の歴史と生命進化のストーリー」を参照