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信長のお茶②
(前回からのつづき)
話を本能寺に戻します。明智光秀は歴史の大きなキーマンですが、お茶に関わる者からすれば天下の大悪人でもあります。理由は明白。
“信長が集めた名物茶器を焼き払ったからです!“
それこそ残っていれば国宝級のものばかりですよ。火を放たずに静かに討ち入りしてくれていれば良かったのに。焼けた名物茶器の数は38点にも上るとか。光秀許すまじ。
けれどもここが面白いとも思うのです。大切な名品を倉にしまっておく訳ではなく、安土城に呼ぶわけでもなく、大切な茶器を持ち運んで使っていたというのが何とも嬉しいのです。だって38点って運ぶとしたら結構大変ですよ。自動車とかないのに。
「コレクター・博物館」という人種と「茶人」というものは互いに理解できない人種です。茶人は「この道具を使いたい」という思いがあります。一方コレクターは「そんな痛むような使い方せんといて」と思う訳です。名物茶器を持ち歩いている、という一点においてもやはり信長はお茶が好きなのだなと思うのです。
自分の大好きな茶器を持ち歩いて、護衛もつけず、本能寺に向かう信長の様子を想像するとどこかほほえましく思うのです。「明日からまた戦や」という思いを抱えながら一度心を落ち着かせに来ていたのかと思うと、どこか人間味が出てきて「鳴かぬなら 殺して見せよ ホトトギス」と言われるような残忍なイメージもちょっと変わってきませんか?
「どんな茶会にしようかな」とか「茶席で何話そうかな」とか「あの道具早く見せたいな」とか考えてニヤニヤソワソワしてたかもしれませんね笑。
そんな姿を想像していると「信長かわいい」と思ったりもするのです。
茄子