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人は”希望”や”楽しみ”にしかお金を払わない

東京ディズニーシーに新しいエリア「ファンタジースプリングス」とホテル「ファンタジースプリングスホテル」がオープンしたと聞き、視察(と言いつつ楽しみに)に行ってきました。

広大なファンタジーエリアを堪能しつつ、経営者として顧客の行動心理を冷静な目で分析しました!

2024年にオープンした「ファンタジースプリングス」は構想10年、総開発費約3,200億円が投じられた大規模プロジェクトです。資金回収には相当な年月が必要であり、またどれだけの人的費用が投下されていたかと考えるとその挑戦には驚きを覚えます。

一方で、物価高騰や人件費の上昇を背景に、入園料やパーク内の飲食代、グッズの価格も相次いで値上がりしていることを実感しました。

それでもなお、どの施設も混雑が絶えず、「高くても人が集まる」ディズニーパークのブランド力には改めて目を見張るばかりです。

では、なんでこんなに「高くても人が集まる」パーク運営ができるのか考えてみました。

注:2023年10月1日から、1デーパスポートの最高価格は10,900円に設定されています。
注:WDWのチケット価格は季節や需要により変動します。上記は平均的な価格を示しています。
注:2023年のCPIは2020年を基準として105.6であり、前年から3.2%上昇しています。
  • 東京ディズニーランド:2000年から2023年にかけて入園料は約2倍に上昇

  • ウォルト・ディズニー・ワールド:同期間で入園料は約3倍に上昇

  • 日本のCPI:同期間で約8.6%の上昇にとどまる。

日本の物価はほぼ横ばいなのに関わらず、東京ディズニーランドは23年で約2倍の入園料になっており、ゲストの支払う金額は多くなっていることがわかります。

では、値上げをして入場者数はどうなったのでしょうか?

2010年から2022年までの東京ディズニーランドの入場者数とゲスト一人当たりの売上高

入場者数は2010年に対して120万人も上がっています。
入園料が2倍に上っているのにかかわらず、です。
そして、入園料が2倍になっているので当然ですがゲスト一人当たりの売上も2倍になっています。

負担が増えるのにもかかわらずゲストは何度もパークを訪れ楽しんでいることになります。

定量的な分析の後は、定性的な分析となります。

アトラクションからストーリーの追体験&”映え”にさらにシフト

今回訪れた「ファンタジースプリングス」では、激しい揺れを楽しむコースター型のアトラクションではなく、物語の世界観に浸れる穏やかなアトラクションが多く導入されていました。ディズニーランドにあるイッツアスモールワールド的な世界観を存分に堪能できるものでした。

遠近法を使った美しい景観に重点を置き、写真”映え”を意識した仕掛けが至るところに見られます。

その影響か、キャラクターのコスプレをして写真撮影を楽しむゲストも多く、パーク全体が一種の「写真撮影スタジオ」のように感じられました。

このように、新エリアの導入を機に、東京ディズニーリゾートは「アトラクション中心のテーマパーク」から「物語の世界観にどっぷりと浸る施設」へとシフトしているように思われます。

アトラクション体験にはプレミアム感を加えることで、利用者がプレミアムパスを購入し、優先的にアトラクションを楽しめる仕組みも整ってきました。

これにより、満足度と収益の双方が追求されています。

どう安くできるか、から、どうユーザーを熱狂させるか、と突き詰める時代に

ディズニーパークの新エリア「ファンタジースプリングス」の導入を通じて、絶え間ないブランド強化によってテーマパークの魅力がさらに高まり、2倍の料金でも喜んで支払うゲストがいることを実感しました。

人は希望やエンターテイメントに対しては支出の上限を設けず、喜んで対価を払っています。時代のトレンドとして、どれだけ安く提供できるか、ではなく、自社商品・サービスのブランドを突き詰めて価値を提供する時代に入っているのではないでしょうか。

ディズニーは特別だよ、と思ったあなた!
生き残るためにトレンドを追いかける努力は忘れちゃいけません。
どの業界業種でも熱狂させるバックストーリーや涙ぐましい開発期間、苦い思いをした経営などいくらでも人を引き付けるブランド要素を持っています。どう加工して自社に生かすかが経営者の腕の見せ所です。
あきらめずに地道に東京ディズニーランドのように長期的視点で取り組んでいきましょう。

ディズニーパークは単なるレジャー施設を超えて、消費者心理に深く影響を与える存在となっていることを改めて認識しました。

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