Facebookに現れた「ちょっとアレな日本語教室」の宣伝を真面目に分析してみた
早い…もう5月になってしまう。子供の頃には「あーなんか面白いことないかなぁ。」と、いつも暇を持て余して気がするんですけど、おじさんになってから時が経つのが早すぎて早すぎて…。今日はそんな限りある時間を思いっきり使いながら、自分の学習へ反映させたいと思います。
さて、今日はFacebookで流れてきた、胡散臭い日本語教室?について、日本語教育能力検定試験合格を目指すなかで学習した知識などをもとに、真面目に分析してみたいと思います。
2カ月で自信を持って日本語を話す!
まず、この倖田來未のコピーみたいなおねーさんが話しているビデオを見ないで記事を読んでる方も多いと思うので、彼女が何を言ってたのか解説しながら書いていきます。
"Are you an American living in Japan?"
「あなたは日本に住んでいるアメリカ人?」という呼びかけから始まるこの動画。なんでアメリカ人限定なんだ?と疑問に思ったんですけどね。日本語学習をしたいと思っている外国人にも、この点は疑問だったらしく、面白コメントが多数投稿されてました。
「彼女の地図」
「うぉー、めちゃくちゃこのレッスンに興味あるけどイースター島にすんでるからだめだわー」
「私も日本語をはなしたいんだけど…悲しいかな、私はアメリカ人ではないんだ。だから、来世はアメリカ人に生まれ変わって、2ヶ月君から日本語を習うから、どこにも行かないでね。」
みんなコメントが秀逸で笑わせてもらいました。
この、「外国人=アメリカ人」みたいな終戦直後を生きた人みたいな思考、これは「異文化理解と心理」の中で扱われる「ステレオタイプ」の一つでしょうか。
外国人=アメリカ人、みたいな感覚でお話をされているのは狙ってんでしょうか?
なお、コメント欄で一番輝いていたのは
"グリーンカードハンター"
です。
「4~5歳の子供が文法書も無く流暢に話せるじゃないですか!」
「2カ月で流暢な日本語を!」と言っているのに、4~5歳児を例に挙げてるのがまず痛いんだけどね。
もし子供が母語を習得する過程を適用したメソッドを開発されたのであれば、これはまさに、「ナチュラルメソッド」!
これは街で見かける語学学校ベルリッツは、このナチュラルメソッドから外国語教授法を確立し、ベルリッツ・メソッドとして学習本に記載されている。
さて、ここで「臨界期仮説」にも触れなければなりません。この仮説はレネバーグが発表した理論で、第二言語を習得するにあたって、ある年齢(思春期ごろ)を過ぎると、ネイティブスピーカー並みの言語能力を習得するのは難しいという仮説です。
「仮説」なので、この理論には様々な意見があるようです。
ただ、第二言語の習得において音声認知に関しては幼いころの方が有利であるのに対し、年齢がある程度、いわゆる大人になってからは統語的(文型とか)な点に関しては習得が早いとも言われていた気がする。
これは、「共有基底言語能力モデル(Common Underlying Proficiency)」を考えると、ありうる話です。
この難しそうなタイトルのCUPは、バイリンガルが二言語を習得したり使用する場合に、別々に機能しているように見えたとしても、実は共有している部分があるという説なんですね。
海に見える2つの氷山が別々の個体かと思いきや、海底では繋がっているという例えで説明が出来るので、氷山説とも言われます。
色々な外国語教授のビデオなんかを見ると、文法書に頼りっきりもだめだけど、赤ちゃんが覚えるように第二言語を習得するにはとてつもない時間がかかると仰ってる方が多いようです。
僕の好きな、スペイン語のJuan先生のビデオでは、「なんでああいいう外国語ビジネスって、3カ月でマスター!ってのが多いんだろね。どこからその数字がくるんだろw」なんて言ってましたが、今回紹介した広告はなんと2か月。
この学校のいくつかのビデオを見る限り、生徒をほめる時に「good! good!」と媒介語(英語話者に英語で説明する、などのときの英語)の使用が見られたり、「教科書に頼らない」と言いながらも「無料のeBookを送るよ!」とホームページで書いてあったりするので色々と謎です。
考えうるこの学校が行うレッスン内容
あくまでもコンサル的な、というか私たちのメソッドで2か月で流暢にとプッシュしている事から、この学校のレッスンはハイムズの唱えた「コミュニカティブ・コンピテンス」、コミュニケーション能力、さらにスペイン語で言えば Competencia comunicativa の養成に重きを置いたものかもしれません。
そこからカナルの唱えた、伝達能力を構成する4つの能力、「文法能力・社会言語能力・ストラテジー能力・談話能力」の中の、文法能力をダイナミックに切り捨てたコーチングかもしれません。
ただし、コース満了2カ月で日本語を自信をもって話す事が出来なければ、自信を無くした学習者は、クラッシェンのモニター仮説の中の1つ、情意フィルター仮説で説明された、「自信の低さや不安などがフィルターを作り、この『情意フィルター』が高くなった場合、言語習得が進まない」ことになってしまう可能性も考えられます。
おわりに
この広告を見た時、エポケーしてしまったのは事実です。
以上、胡散臭いものを真面目ぶって考察したお話でした。
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