逍遥日記#18 近況:蒸し魚籠
雷雨、快晴、曇天、いずれにせよ高温多湿。
湿気で部屋の空気がずいぶん膨らんでしまったように感じる。換気をしようと窓を開けてもぬるい空気が出ていってぬるい空気が名刺交換みたいに入ってくるだけ。
借りてきた本がやや厚くなっていた。
最近は雨がよく降った。
雨だとバイトもほとんどの場合休みになるから、部屋でぼんやり過ごす日も多かった。
じりじり痛む日焼けした皮膚に、湿気が気の利いたガーゼのように張り付く。
六月の後半はニーマガ用の文章を書いていた。
結局完成しなかったけど。
物語調のものを4000字くらい書いたところでその中にある衒いというか説教クサさというか、他人の目を意識した時に鎌首を擡げる類の自己欺瞞に我慢できなくなって「お前どんな立場からモノ言ってんだよこのはんちく!」みたいな気持ちになって全部やめた。
自意識が過剰に膨れたのもあると思うけど、弁解の余地もない力不足だった。
蒸し暑さも相まってやけにフラストレーションが溜まっている。
散歩しても気分は晴れず、読書してもどこか粗探しのような、斜に構えた嫌な読み方をしてしまう。
精彩を欠いている。
どうしたものかと悩んでいたが、ギターを練習している間だけは少しだけ気分が落ち着くことに気付いた。
今はOasisの『Wonderwall』のイントロばかり弾いている。
ぬるい水槽みたいな部屋で楽器に没入するのは何かしらの修行のようでもある。
七月いっぱいくらいで一旦とうもろこしとスイカとその他諸々の農作業は終わるから九月下旬の玉ねぎ定植までバイトは不要になるらしい。
暑いのは本当に苦手なのでどこか涼しいところに避難したい。
インターネットの検索履歴は「北海道 農業 短期バイト」とか「釧路 住み込み」とか「避暑地 農業バイト」みたいな言葉ばかり並んでいる。
半ニートを名乗っているくせに労働込みで旅の予定を立てようとする振り切れなさが、なんとも小賢しい。