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未来の鍵は過去にある-歴史のリフレイン:高城剛『いままで起きたこと、これから起きること』を読んで
最近、高城剛氏の『いままで起きたこと、これから起きること』を読みました。本書は歴史を80年周期で捉え、現在の社会情勢が過去の出来事と驚くほど似ていることを指摘しています。この周期では、戦争や経済危機、社会不安といった大きな転換点が繰り返されており、現代の混乱も歴史の流れの一部だと考えられます。
本書を読んで改めて感じたのは、社会の変動には一定のメカニズムがあり、同じようなパターンが繰り返されるということです。特に、近年の世界の動きを見ると、過去の周期と驚くほど似た展開が起こっています。ただし、現代にはインターネットとAIという新たな技術革新があり、歴史の流れを加速させ、影響を増幅させている点が特徴的です。今回は、歴史の周期変動のメカニズムを中心に、現在の政治・経済の動向を考えてみたいと思います。
歴史の80年周期と社会の変動メカニズム
本書で紹介されている「80年周期」の考え方は、歴史の大きな流れを理解するうえで非常に興味深いものです。この周期では、繁栄と混乱の時代が交互に訪れ、社会の価値観や経済構造が大きく変化していきます。
特に、近代の歴史を振り返ると、以下のようなメカニズムで社会の変動が起こっていることが分かります。
感染症や大規模危機の発生 → 財政出動
例:1920年代のスペイン風邪、2008年のリーマンショック、2020年のコロナ禍
危機が発生すると、政府は景気を下支えするために大量の財政出動を行う。
財政出動によるインフレの発生
過剰な貨幣供給と供給制約が重なり、物価が急上昇。
例:第一次世界大戦後のインフレ(1920年代)、オイルショック(1970年代)、現在のインフレ
インフレによる格差拡大
物価上昇の影響を受けやすい低所得層の生活が苦しくなる。
資産を持つ富裕層と持たざる者の格差が広がり、不満が高まる。
格差拡大によるポピュリズムの台頭
既存のエリート層への反発が強まり、反体制的な政治勢力が台頭。
例:1930年代のファシズム、2010年代以降のポピュリズム政党の躍進
ポピュリズムによる「自国ファースト」政策の推進
自国の利益を優先し、国際協調が後退。
例:1930年代の保護貿易(スムート・ホーリー関税法)、現在の米中対立やEUの分裂傾向
国際協調の崩壊 → 世界経済の停滞
貿易摩擦や通貨政策の対立が激化し、世界経済が縮小。
例:1930年代の大恐慌、1970年代の低成長時代、現在のサプライチェーン混乱
経済停滞が国家間の対立を招き、紛争が勃発
経済的困難を外部要因のせいにする動きが強まり、軍事衝突が発生。
例:第二次世界大戦、冷戦時代の紛争、現在のウクライナ戦争や台湾問題
インターネットとAIが社会変動を加速・拡大する
インターネットの発達により情報が瞬時に拡散し、政治的な動きが激化。
AIの進化により、経済や労働市場が急速に変化し、さらなる格差拡大を引き起こす。
例:SNSを利用した政治扇動(トランプ政権や香港デモ)、AIによる雇用構造の変化
この流れを見ると、現在の状況はまさに歴史の繰り返しの中にあることが分かります。ただし、過去と決定的に異なるのは、インターネットとAIがこの変化を加速させ、社会の不安定性をさらに高めている点です。
AI時代のリスクと可能性
AI技術の進化は、産業革命に匹敵するインパクトを社会にもたらしています。AIが労働市場に与える影響は大きく、単純労働の自動化だけでなく、ホワイトカラーの仕事まで置き換える可能性があります。
また、SNSとAIの組み合わせにより、政治的分断やフェイクニュースの拡散が加速しており、これがポピュリズムの拡大をさらに助長しています。過去の周期では、情報の流れが比較的遅かったため、社会変動も一定のスピードで進んでいました。しかし、現在はAIの進化によって、変化のスピードがこれまでとは比べものにならないほど加速しているのです。
歴史の流れを理解し、未来を生き抜く
歴史が繰り返されるメカニズムを理解すると、私たちが今後直面するであろう課題が見えてきます。特に、インターネットとAIの発展によって、歴史の流れが加速し、変化の影響が拡大している点を意識することが重要です。
これからの時代は、経済危機や国際紛争、技術革新といった大きな変化が次々と訪れるでしょう。しかし、歴史の流れを理解し、その変化に適応することで、混乱の時代を生き抜くヒントが得られるはずです。
本書を通じて、私たちは過去の経験から学び、未来を冷静に見つめる視点を持つことの大切さを再認識しました。これからの社会の変化に備え、どのように行動すべきかを考えていきたいと思います。
あとがき
そういえば、15年前にも景気変動について書いた私のブログ記事がありました。リーマンショックの時です。
また、この本では人にも周期があると著されています。これも昔聞いたことがあるような。