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2100年、日本はどこへ向かうのか? 人口減少時代のシナリオ

国立社会保障・人口問題研究所(IPSS)の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」によれば、最も悲観的なシナリオである出生低位(死亡中位)推計では、2050年の総人口は約9,000万人、2100年には約4,000万人と予測されています。2100年以降も人口は減っていくのか具体的な「臨界点」の数字は明確ではありませんが、私は、このあたりで落ち着くのではないかと思っています。現在のカナダあたりの人口ですね。

1903年(明治36年)の約4,000万人から約100年かけた2008年に1億2,800万まで達し「人口ボーナス期」を享受し、その後また約100年かけて2100年には、また約4000万人に戻る「人口オーナス期」を迎えているということになります。

未来予想はなかなか当たらないとか言われていますが、より長期予測の方が当たりますし、その中でも人口予測の精度は高いです。そして、皮肉にも悲観的な予測の方が当たるということもあります。

さて、ということで、この人口予測を基に近未来を予測したいと思います。

2050年:25年後の未来

人口減に伴って問題になるのは、労働力不足です。2008年から人口減に入り、生産年齢人口も減少にはいりましたが、女性や高齢者の労働市場への参画が加速化され、労働人口では、現在まで微増の状況です。それでも、労働時間ということになると縮小傾向でした。2014年には、すき家が販売を開始した 「牛すき鍋定食」 が大ヒットしましたが、 ワンオペでは、処理ができなくなり店舗運営が回らなくなった「すき屋の鍋の乱」がおこりました。というように10年ほど前から労働人口が増えても労働力不足がおこり始めました。

女性や高齢者の労働市場への参加率もピークに達したということ、また団塊の世代の高齢者が、2027年から80歳をむかえるということで、労働力不足にかなり拍車がかかってきます。2050年までに1500万人の労働者が減ると言われています。

期待のAIですが、2030年前までには、AGI(汎用人工知能, Artificial General Intelligence)の世界が誕生し、知的労働ができるようになり事務や管理のホワイトカラーの仕事は不要になると言われています。これで、特に大企業のホワイトカラーのリストラは進むでしょう。しかし、総労働人口に占める割合は1割程度ではないかと思いますので、労働力不足の解消への効果は限定的です。

こうなると低いと言われている日本の特にブルーカラーの労働生産性を少なくとも他国並みに上げることは必須です。日本の労働生産性が低いと言われる一番大きな要因は、中小企業の多さです。労働人口でみた中小企業の全企業の中に占める割合は70%ですが、ドイツは、60%でフランスはや36%くらいです。要は、約6800万人の労働人口の7割の中小企業で働いている労働者の約2割の約1000万人は削減されるべきでそのための中小企業の統廃合が必要です。

そうすると1000万人のひとがリストラされても、労働不足も深刻になるので、労働力の産業間移動などがあり、失業のリスクはほとんどないでしょう。また、それでも労働力不足は解消されませんが、人口減にともない市場規模も縮小し、不足の500万人分の仕事もなくなる可能性があるので、2050年までには、ギリギリ労働の受給バランスは維持されると思います。

現在、政府は賃上げして消費をあげるサイクルをつくろうと声高に言っていますが、このような大規模なリストラ下では社会不安が高まり、労働者が賃上げ分を将来のための貯蓄に回す可能性の方が高いので景気を刺激する好循環にはならないと思いますし、むしろ、賃上げにより、中小企業の経営圧迫し、上記の統廃合を加速することになると思います。

また、2050年までに政府は「南海トラフ巨大地震」と「首都直下地震」が起こる可能性をそれぞれ80%と70%と予測しています。また、日本の年平均気温は、今世紀末までに約1.4~4.5℃上昇すると予測されて、猛暑日の増加やスーパー台風の発生の可能性も指摘されています。というように自然災害の影響も大きくなります。

2035~45年は、団塊の世代が87~97歳で「大介護時代」です。独身の多い就職氷河期世代が親の介護問題に直面するのもこの頃。

IPSSは、2050年までに現在、人が居住している地域の約2割が無居住化すると言っていますし、当然経済は縮小していきます。日本の産業は国内需要向けの事業が多くこの影響をもろに受けますが、海外事業展開している事業もイノベーションが産まれないと家電業界のように全滅していきます。デジタル化の波で衰退した家電業界と同じことがEV化に伴い自動車業界でも起こっています。

2035~40年には、18歳人口が100万人から70万人まで減り、大学進学者数も60万人から3割減となり、大学も統廃合になります。よって、廃業の危機の大学は中国などの留学生誘致に今以上積極的になります。

「リストラ」、「大災害」、「介護」、「過疎」、「格差」という問題が急激に深刻化する時代です。なので、SNSを通じて国民の政治への関心が高まり、ポピュリズムの政治家が増えるでしょうから長期的な施策は取られないでしょう。

2100年:75年後の未来

2050年以降は、労働力調整などもできなくなり、純粋に人口減=労働力減=経済低下のスパイラルに入っていきます。我々の孫が社会人になるころから、日本はかなりのスピードで縮小していくことを経験するようになります。

経済の縮小<労働力不足の場合は、失業がおこらなくなるのでいいのですが、日本でイノベーションが起きず経済自体が急速に縮んでしまうと、人口減にもかからわず失業が発生する最悪な状況になります。

この頃から、スマートシティ化と過疎地域を利用したスマート農業などが本格化するでしょう。本来、先を見越して事前に取り組む課題ですが、農協や全農などの反対によりできなかった改革が、さすがにだれもいなくなったらできるようになると思います。大規模な過疎地域を利用したスマート農業で食料自給率が上がると思います。

また、観光産業はもとより、日本の「おもてなし」サービスなどを盛り込んだ小売りや飲食店の海外進出も数少ない成長産業の一つになるでしょう。クールジャパンのサービスも売り込めば、インバウンドにも連動していいムーブベントになるかもしれず、小国でも世界に存在感を示すことができるかもしれません。

2050年以降、本格的な人口減少が進む中でも、移民政策が一つ考えらえますが、社会的要因として、急速な経済縮小による格差の拡大と社会不安の高まりがあります。低所得層の不満が強まる中で、移民が増えるとその矛先が彼らに向かい、対立が激化する。欧米の例を見ても、移民が一定規模を超えると治安悪化や社会対立が不可避となり、もともと多様性に慣れていない日本社会では、その影響がより深刻になると考えられます。このような状況下で、大規模な移民受け入れは国民の支持を得られないと思います。

それより、ロボットに労働をどこまで代替させることができるかでしょうね。

また、ひとついいことは、2050年以降、定年がなくなり、いつまでも働ける社会になることで、社会的役割を持ち続けることができ、生きがいを感じられるとともに、経済的不安が軽減され、老後の生活が安定し、心身の健康が維持されることで活力のあるシニア世代が増え、結果として「長く働くこと=幸せ」と考える社会になり、老後の不安が減るより良い世の中になるということです。2025年で30%だった65歳以上の高齢者の比率は、2070年には、40%くらになっています。

人口が4000万人で落ち着くとすると2080~2090年頃には、先々の日本の姿が見え始め、落下から低空飛行状態になってくるものと思われ、ある意味、将来の不安が減る時期であろうかと思います。孫が60~70歳台ですね。世の中の中心はひ孫時代です。

もしかして、人間の知能をはるかに超えるAIいわゆるASI(人工超知能, Artificial Super Intelligence)の世界になれば、新エネルギーが開発され、完全自動化社会がくるかもしれません。宇宙技術の貢献もあるでしょう。

この頃の日本は亜熱帯気候になっていると予想されています。気候も楽しめるかもしれませんね。

結論:「江戸時代2.0」こそが日本のポスト資本主義の未来である

日本の未来を考えたとき、避けられない現実は「経済成長の停滞」「人口減少」「世界の中で相対的に貧しくなること」です。しかし、これは必ずしも悲観的な未来ではないと思います。

むしろ、日本は「江戸時代2.0」とも言える新しい社会モデルへと移行しつつあるのではないでしょうか。これは、成長を前提としない社会の中で、安定と持続可能性を重視しながら機能する、日本独自のポスト資本主義の形であると思います。

江戸時代は、約260年間、ほぼ経済成長せずに社会の安定を維持しました。極端な格差がなく、サムライ(公務員・大企業正社員)と町人(商人・起業家)が共存するバランスの取れた社会でした。そして、地方分権による循環型経済、文化の発展、質素ながらも満足度の高い生活が営まれていました。この「成長しないが安定した社会」は、まさにポスト資本主義の姿と重なります。

現在の日本は、すでに「成長よりも安定」「経済よりも文化」「個人の幸福を重視するライフスタイル」へと自然にシフトしています。さらに、インバウンド観光の拡大により、世界はすでに「江戸時代2.0」とも言える日本のあり方に魅力を感じ、「未来的な社会」として評価しています。この社会モデルは、日本独自のものではなく、「資本主義の限界」を迎えた世界全体が求める方向性とも一致しています。

つまり、日本の未来は「江戸時代2.0」として形成され、それがポスト資本主義の具体的なモデルとなり得る。 かつて日本が経験した江戸時代の社会構造と、現代のテクノロジーを融合させることで、新たな「持続可能な成熟社会」が実現されるかもしれない。これは、世界が資本主義の次のステージを模索する中で、日本が示せる新しい社会の形であると思います。

「成長しなくても、豊かに生きられる社会」——日本は、その未来を世界に先駆けて実践する国となるでしょう。










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